年金受給資格に満たない加入者が死亡した場合、遺族年金はどうなる?
ファイナンシャルフィールド / 2021年9月6日 11時0分
![年金受給資格に満たない加入者が死亡した場合、遺族年金はどうなる?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_115378_0-small.jpg)
遺族年金は、国民年金や厚生年金保険の加入者が亡くなったとき、遺族に対して給付される年金です。亡くなった方の年金の加入状況によって遺族基礎年金、遺族厚生年金が給付されます。 遺族基礎年金、遺族厚生年金にはそれぞれ受給要件があり、これを満たさなければ遺族年金を受け取ることはできません。このとき、遺族の救済措置は無いのでしょうか。
遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金がある
まず、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)の受給要件を確認します。
遺族基礎年金の受給要件
遺族基礎年金の受給要件は、以下の3つの要件で構成されています。
(1)加入者要件(死亡した人に関する要件)
(2)受給対象者(年金を受け取る人に関する要件)
(3)保険料納付要件(保険料納付に関する要件)
加入者要件は、以下のいずれかを満たす必要があります。
●死亡時、国民年金の被保険者であった
●死亡時、国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満で、日本国内に住所があった
●死亡時、老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上あった
受給対象者は、死亡した人によって生計を維持されていた以下の人に限られます。
●子のある配偶者
●子
保険料納付要件は、以下のとおりです。
●死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、保険料納付済期間(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あること
(令和8年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の滞納がなければ受給可)
遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金の受給要件は、以下の3つの要件で構成されています。
(1)加入者要件
(2)受給対象者
(3)保険料納付要件
加入者要件は、以下のいずれかを満たす必要があります。
●死亡時、厚生年金保険の被保険者であった
●死亡時、厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内であった
●死亡時、1級または2級の障害厚生(共済)年金を受け取っていた
●死亡時、老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上あった
受給対象者は、死亡した人によって生計を維持されていた以下の人に限られます。
●妻
●子、孫
●55歳以上の夫、父母、祖父母
保険料納付要件は、以下のとおりです。
●死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、保険料納付済期間(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あること
(令和8年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の滞納がなければ受給可)
国民年金には独自給付がある
遺族年金を受けられないときでも、国民年金の独自給付により年金を受けられる場合があります。国民年金の独自給付には「寡婦年金」と「死亡一時金」があります。
厚生年金保険には、このような給付はありません。
寡婦年金の受給要件
寡婦年金の受給要件は、以下の2つの要件で構成されています。
(1)加入者要件
(2)受給対象者
加入者要件は、以下の要件を満たす「夫」です。
●死亡日の前日において、国民年金第1号被保険者 (任意加入被保険者を含む) の保険料納付済期間と保険料免除期間が合わせて10年以上ある
●死亡日までに、老齢基礎年金または障害基礎年金を受け取ったことがない
受給対象者は、以下の要件を満たす「妻」です。
●夫によって生計を維持されていた
●夫との婚姻関係(事実婚を含む)が10年以上あった
●繰り上げ受給の老齢基礎年金を受け取っていない
また、以下の点には注意が必要です。
●妻が他の年金を受け取っている場合は、いずれかを選択しなければならない
●寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取ることができる場合は、どちらか一方を選択しなければならない
死亡一時金の受給要件
死亡一時金の受給要件は、以下の2つの要件で構成されています。
(1)加入者要件
(2)受給対象者
加入者要件は、以下のとおりです。
●死亡日の前日において、第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある
●死亡日までに、老齢基礎年金・障害基礎年金を受け取ったことがない
受給対象者は、死亡した人によって生計を維持されていた以下の人に限られます。なお、優先順位は第1順位が最も高く、第6順位が最も低くなっています。
●配偶者(第1順位)
●子(第2順位)
●父母(第3順位)
●孫(第4順位)
●祖父母(第5順位)
●兄弟姉妹(第6順位)
また、以下の点には注意が必要です。
●遺族が、遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されない
●寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取ることができる場合は、どちらか一方を選択しなければならない
●死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年
まとめ
年金受給資格に満たない加入者が死亡した場合、遺族年金は受給できません。しかし、国民年金には独自給付(寡婦年金、死亡一時金)があり、これらを受給することができる可能性があります。
年金受給資格がないからといって請求を諦めるのではなく、寡婦年金、死亡一時金が受給できるかどうか確認してみるとよいでしょう。
出典
日本年金機構 「遺族年金ガイド」
日本年金機構 「遺族に支払われる年金」
日本年金機構 「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
日本年金機構 「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
日本年金機構 「寡婦年金」
日本年金機構 「死亡一時金」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
昭和35年8月生まれの男性です。年金受給前に死亡したら女房に遺族年金が入らないと聞きましたが本当でしょうか?
オールアバウト / 2024年7月30日 20時30分
-
今払っている「年金保険料」って、自分は老後“もらえない”こともあるんですよね? 毎月給料から「4万円」引かれているので、払わずに自分の貯金にしたいのですが…
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月27日 5時0分
-
夫の遺族年金は「月5万円」。ただし妻が40歳以上だと、さらに「5万円」追加される?“中高齢寡婦加算”について解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月17日 4時30分
-
廃止のデマが流れた「遺族年金」。夫の死後「年60万円」を受け取っていますが、今後も安泰でしょうか? 将来的に“年金額が減る”可能性もあるのですか…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月10日 2時20分
-
年金を「月15万円」受け取っていた夫が死亡。妻が受け取れる「未支給年金」とは?“遺族年金の受給額”もあわせて解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月5日 4時30分
ランキング
-
1「キャンプブーム」は終わった アウトドア業界はどの市場に“種”をまけばいいのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月31日 7時30分
-
2「身代金」「初動対応」、"KADOKAWA事件"の教訓 凄腕ホワイトハッカーが語る日本企業への警告
東洋経済オンライン / 2024年7月31日 8時0分
-
3【速報】日銀が追加利上げを決定 政策金利0.25%程度に 長期国債買い入れは26年1~3月に月間3兆円程度に
日テレNEWS NNN / 2024年7月31日 13時12分
-
4日銀、追加利上げ決定=政策金利0.25%に―国債購入、月3兆円に段階縮小
時事通信 / 2024年7月31日 13時44分
-
5トヨタ自動車、国交省「是正命令」受け謝罪 型式指定不正の原因は「現場と経営の両面」体制見直しへ
ORICON NEWS / 2024年7月31日 17時47分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)