学生納付特例制度は必ず受けられるわけではない!? 却下された場合どうなる?
ファイナンシャルフィールド / 2021年9月7日 11時0分
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、国民年金の加入義務が発生します。しかし、20歳の時点ではまだ学生の方も多くいます。 保険料の納付が厳しいとき、学生が利用できる学生納付特例制度について見ていきます。
そもそも国民年金とは
ここで公的年金制度についておさらいしておきます。
国民年金は公的年金制度の1つで基礎年金とも呼ばれています。20歳以上60歳未満の全ての人に加入義務があります。そして国民年金の他にもう1つの公的年金制度として、会社員や公務員の人が加入する厚生年金があります。
日本の公的年金制度は2階建て構造と呼ばれていて、全員が加入する1階部分の国民年金と2階部分となる厚生年金で構成されています。そのため、会社員や公務員の人は国民年金と厚生年金の2つの制度に加入していることになります。
公的年金制度は現役世代が納めた保険料や税金、積立金が年金の給付に充てられていることから、「世代間の支え合い」が運営の基本となっています。
厚生労働省がまとめた「平成28年版厚生労働白書」によれば、1950年時点では65歳以上の高齢者を10人の現役世代で支えていたものが、2015年時点では2.1人となり、さらに2050年では1.2人が支える見込みであると推計されています。
このことが若い世代にとっては、将来の年金制度に対する不安の要素の1つとなっているようです。
しかし、公的年金制度は高齢になってからもらう年金のためだけではありません。65歳以降に老後の生活の支えとなる「老齢基礎年金」を終身にわたり受け取れる他にも、「障害年金」と「遺族年金」の2つの年金があります。
障害年金は病気やけがで障害が残ったときに、障害の程度に応じて障害基礎年金が給付されます。遺族年金は家族支える働き手に万が一のことがあったときに、残された子のいる配偶者または子が遺族基礎年金を受け取ることができます。
このように、若い世代であっても万が一のときの備えとなる制度です。
保険料の納付が厳しい学生が対象の学生納付特例制度
2019年10月以降、20歳になった人には日本年金機構から「国民年金加入のお知らせ」が届くようになりました。これは「国民年金第1号被保険者の資格取得」の通知となりますが、すでに厚生年金に加入している人などは除きます。
この通知を受け取った20歳の誕生月分より保険料の納付が必要になります(ただし、誕生日が1日の場合は誕生月の前月分から)。
2021年度(令和3年度)の国民年金の保険料は、月当たり1万6610円となっています。20歳から保険料の納付義務があるとはいえ、20歳になった年齢ではまだ学生の方も多く、保険料の納付が厳しい人もいるかと思います。
保険料の納付が厳しい学生が利用できる制度が「学生納付特例制度」です。この制度を利用することにより、前年所得が基準以下の学生であれば、保険料の納付が猶予されます。前年所得の基準の計算式は以下のとおりです。
128万円※+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除額等
※2021年4月以降の申請の場合
この制度を利用するメリットは、納付が猶予されている期間も将来受け取る年金の受給資格期間に算入されることや、一定の要件を満たせば障害基礎年金や遺族基礎年金が受け取れることです。また、申請時点の2年1ヶ月前の月分までさかのぼって申請ができます。
注意が必要なのは、保険料の納付は猶予されますが、猶予されている間に納めなかった保険料は将来受け取る年金額には反映されない(保険料を納めた場合と比べて少なくなる)ということです。
保険料を納めなかったことで将来受け取る年金額が少なくなることを、あとで補うために追納制度があります。猶予を受けてから10年以内であれば追納制度により、あとからでも保険料を納めることができます。
学生納付特例制度には審査がある
学生納付特例制度は、申請をすれば必ず納付が猶予されるとは限りません。申請後に所得情報などを基にした審査があり、日本年金機構から審査結果として「承認通知書」もしくは「却下通知書」が届きます。
申請が承認された場合は原則として申請日にかかわらず、4月から翌年3月まで(申請日が1月から3月までの場合、前年4月から3月まで)の期間、保険料の納付が猶予されます。すでに保険料を納めた月分は、学生納付特例の期間には含まれません。
申請が却下された場合はもちろん保険料を納付しなければならないので、学生納付特例制度の利用を検討する人は必ず覚えておきましょう。
出典
厚生労働省 平成28年版厚生労働白書(第1章 我が国の高齢者を取り巻く状況)
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)
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