従業員数人の会社に勤務する場合でも厚生年金に加入することはできる?
ファイナンシャルフィールド / 2021年9月14日 23時30分
![従業員数人の会社に勤務する場合でも厚生年金に加入することはできる?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_116050_0-small.jpg)
厚生年金の適用については、求職活動における会社選びのポイントとされる方もいれば、入社後数年経過しているにもかかわらず加入の有無を知らない方もおり、認識はさまざまです。老後の年金だけでなく、万一の場合の遺族年金や障害年金の受け取りに影響する厚生年金保険の加入について、いま一度確認しておきましょう。
会社員などは「基本的に」第2号被保険者として厚生年金に加入
公的年金制度は、老齢・障害・死亡などにより収入を得ることが困難な場合に、生活資金として年金を受け取ることのできる制度であり、社会全体で支え合う制度です。日本国内に住む20歳から60歳未満のすべての人に加入義務のある国民年金は、働き方などにより第1号被保険者(自営業者や学生など)、第2号被保険者(会社員や公務員など)、第3号被保険者(会社員に扶養されている妻)の3種類に区分されています。保険料を納付した期間にもよりますが、65歳になると、老齢基礎年金として年金を受け取ることができます。
【図表1】
このうち、会社員などの第2号被保険者は、図表1のとおり、厚生年金に加入します。すべての人が加入する国民年金を1階とすると、厚生年金は2階部分にあたります。将来は、国民年金(基礎年金)に上乗せされて年金を受給することができます。保険料は、国民年金とあわせて、労使折半(会社と本人が半分ずつ)で負担します。会社員だった人の年金額が多いのは、この厚生年金があるためです。
ただし、ここで注目すべきは「会社員など」といわれる人たちが勤務する会社です。厚生年金は、事業所単位で適用されるため、お勤め先が「適用事業所」であることがポイントとなります。
勤務する会社は、「適用事業所」に該当する?
■お勤め先が、株式会社や有限会社など「法人」である場合
強制適用事業所となり、従業員数にかかわらず、厚生年金加入の義務があります。法人とは、株式会社のほか、有限会社、合同会社、社団・財団法人、独立行政法人などが含まれます。
■お勤め先が、「個人」の事業所であり、従業員が常時5人以上いる場合
強制適用事業所となり、厚生年金加入の義務があります。ただし、農林漁業、飲食店や理美容などのサービス業は非適用業種であり、加入の義務はありません。
■お勤め先が、「個人」の事業所であり、従業員が常時5人いない場合
任意適用事業所として、従業員の半数以上が厚生年金保険の適用事業所となることに同意し、事業主が申請のうえ、厚生労働大臣の認可を受けた場合は、「適用事業所」となります。
社会保険加入の現状と「適用事業所」範囲の見直し
しかしながら、現実には、個人経営から法人化したにもかかわらず、また、個人事業でも、常時雇用する従業員が増えているにもかかわらず、届け出せずに放置するケースや、適用を逃れている「ブラック企業」も相当数存在するようです。労使折半で保険料を負担しなければならない厚生年金加入は、事業主にとって大きな負担です。
国税庁が把握する法人情報と日本年金機構が保有する厚生年金適用事業所情報とでは、事業所のデータ数に大きな差があることが指摘されてきました。厚生労働省では、適用の促進に向けて、立ち入り調査や加入指導などを実施しており、加入数は増加傾向です(※1・2)。
また、これまで非適用業種とされていた弁護士や税理士などの「士業」事業所が2022年10月より適用事業所対象となるなど、適用事業所の範囲についても見直しが進んでいます(※3)。
任意適用事業所の場合は?
一方で、個人事業で常時雇用する従業員が5人未満や飲食店などの「任意適用事業所」の場合は、注意が必要です。例えば、常時雇用される従業員3人のうち2人が厚生年金保険への加入を希望しても、事業主が申請しないと判断すれば、厚生年金の加入は見送られます。
また、事業主が申請のうえ適用事業所となった場合には、事業所単位で適用されるため、加入を希望していなかった従業員も厚生年金加入することになります。
社会保険は、社会全体で支える制度
企業に勤める会社員にとって、生活を維持するための報酬や業務内容とともに、将来の年金受給に影響する公的年金制度についても安心できる体制が整っていることが「よい会社選び」のポイントでもあります。
同時に、従業員を雇用する事業主にとっても、安心して働いてもらえる環境づくりは、事業の継続・発展に欠かせないものといえます。労使折半のため双方で負担はあるものの、少子高齢化で危惧される年金財源としても大きな貢献となり、社会全体としても将来の安心につながります。
今回は、お勤め先の適用要件についてお伝えしましたが、パートやアルバイト、副業など、適用事業所に勤める従業員の「働き方」についても意識し、今だけでなく将来をふまえて考えていきたいですね。
出典
(※1)厚生労働省年金局「厚生年金保険の適用促進対策について」(平成28年12月21日)
(※2)日本年金機構「厚生年金保険・健康保険などの適用促進に向けた取組」
(※3)厚生労働省年金局「被用者保険の適用事業所の範囲の見直し」(2019年11月13日)
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士
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