早く亡くなるリスクと長生きするリスクから考える年金のこと
ファイナンシャルフィールド / 2021年9月22日 22時10分
日本の平均寿命は年々延びています。厚生労働省の「令和2年簡易生命表」によると、男性の平均寿命は81.64年、女性の平均寿命は87.74年となり、前年を上回りました。65歳時点の平均余命では、男性は20.05年、女性は24.91年となっており、平均でも男性は85歳、女性は90歳まで生きる可能性が高いと考えられます。 長い人生を生きる上で、公的年金は老後の収入の支えとなります。今回は公的年金の特徴と、特に長生きするリスクに対しての考え方を紹介します。
公的年金は社会保険の1つ
公的年金は国が管理や運営を行っている社会保険の1つで、人の死、病気やけがなど、さまざまなリスクに備えて皆であらかじめ保険料を出し合い、実際にリスクが生じた人に必要なお金やサービスを提供する仕組みになっています。
公的年金には、国民年金と厚生年金保険の2種類があります。国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する年金であり、厚生年金保険は、会社員や公務員が加入する年金です。
老齢年金・遺族年金・障害年金の3つの機能
公的年金として給付される年金には、「老齢年金」「遺族年金」「障害年金」の3つがあります。
1つ目の老齢年金は、原則として65歳から受け取ることができ、保険料を納めた期間や加入者であった期間(受給資格期間)が10年以上必要です。国民年金に加入していた人は老齢基礎年金を受給でき、厚生年金に加入していた人は老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金を受給できます。
2つ目の遺族年金は、公的年金に加入している人、または加入していた人が亡くなったときに、その人に生計を維持されていた遺族が受け取る年金です。国民年金に加入していた場合は遺族基礎年金、厚生年金保険に加入していた場合は遺族厚生年金を受給できます。
3つ目の障害年金は、病気やけがによって生活や仕事が制限される状況になったとき、一定の要件を満たすことで受け取れる年金です。国民年金に加入していた人は障害基礎年金、厚生年金保険に加入していた人は障害厚生年金の受給対象となります。
各年金の受給には、保険料納付状況をはじめ、遺族の家族構成、年収、障害の状態などの要件が細かく決められており、要件によって受給の可否や金額が決まる仕組みとなっています。
公的年金には、現役時代などに早く亡くなるリスク、病気やけがなどに対しての備えに「遺族年金」と「障害年金」が、長生きするリスクへの備えとして「老齢年金」があると考えてよいでしょう。
老齢年金の特徴は終身年金
老齢年金の特徴は終身年金であり、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方とも亡くなるまで受け取ることができます。年金額については、物価の状況などを考慮して毎年見直しがされます。
自分が何歳まで生きるのかは分かりませんが、医療の進歩などで寿命が延びている現状では、早く亡くなることよりも長生きする可能性の方が高いでしょう。
老後の備えとして、民間の個人年金保険では受給期間が決まっている場合が多く、受給期間が終了すると収入は期待できなくなります。また、貯蓄で備える場合にしても、老後が長くなるほど毎年使える貯蓄は減っていきます。
亡くなるまで受け取ることができる公的年金は、長生きリスクに対してメリットが大きいといえます。
老齢年金の受給開始時期は選択できる
老齢年金の受給開始は原則65歳からとなっていますが、60歳から70歳の間で選ぶこともできます。60歳以上65歳未満で受給を始めることを「繰り上げ受給」といい、66歳以上70歳以下で受給を始めることを「繰り下げ受給」といいます。
繰り上げ受給をすると、1ヶ月につき0.5%ずつ年金が減額され、減額された年金を終身で受け取ることになります。一方、繰り下げ受給をすると1ヶ月につき0.7%ずつ年金が増額され、最大で42%増額された年金を一生にわたって受け取れます。
また、2022年4月からは、繰り上げ受給の1ヶ月当たりの減額率が0.4%になり、繰り下げ受給の開始年齢についても最長75歳まで選択できるようになります。
何かの事情があって、受給額が減っても早く年金を受け取りたい場合には「繰り上げ受給」を選ぶことができます。逆に、十分な老後資金や年金以外の収入がある場合などは、増額された年金を終身で受け取れる「繰り下げ受給」という選択肢もあります。
なお、繰り上げ受給や繰り下げ受給は、一度申請をすると後から変更ができませんので、メリットとデメリットについてしっかりと理解した上で検討することが必要です。
まとめ
公的年金は、保険という仕組みを使って国民全員でリスクに備える制度です。長生きによって老後の生活資金が不足するリスクに対して、終身年金という点で公的年金にはメリットがあるといえるでしょう。
出典
厚生労働省 令和2年簡易生命表の概況(1 主な年齢の平均余命)
日本年金機構 老齢基礎年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)
日本年金機構 老齢厚生年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
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