高齢の親の財産管理が必要。「家族信託」「成年後見制度」どちらを利用すべき?
ファイナンシャルフィールド / 2021年9月24日 13時0分
![高齢の親の財産管理が必要。「家族信託」「成年後見制度」どちらを利用すべき?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_116791_0-small.jpg)
高齢となった親の財産管理が必要になったとき、選択肢となる制度に「家族信託」と「成年後見制度」があります。 両者は似ているようで、その目的や財産の管理方法、権限など異なる点があるため、どちらを選ぶべきなのか、制度の特徴について確認しながら考えていきます。
家族信託と成年後見制度の概要
家族信託と成年後見制度、どちらにもなじみがないという人も多いのではないでしょうか。両者は財産管理についての制度ですが、内容は複雑であるため、まずは簡単に概要から確認していきましょう。
成年後見制度
成年後見制度は、加齢や病気、精神上の障害などにより、法的な保護が必要だといえる程度に判断能力が低下した、あるいは判断能力が不十分な状態にある人を対象として、本人の財産や権利を守り、生活をサポートするための仕組みです。
成年後見制度には大別して「法定後見」と「任意後見」があります。
判断能力が低下してから利用する法定後見は、家庭裁判所によって選任された後見人(法定後見人)が本人に代わって財産管理などを行います。任意後見は、判断能力があるうちに制度の対象者となる本人が後見人(任意後見人)を選び、契約を結んでおくものになります。
法定後見と任意後見とでは、誰が後見人を選任するか、後見人ができる手続きや契約の範囲などに異なる部分はありますが、どちらも本人の判断能力の度合いに応じてサポートを行うという制度であることには違いありません。
このように成年後見制度は、後見人の選任に関して家庭裁判所が関与するなど、厳格な運用が期待されるものになります。
家族信託
家族信託とは財産について、子や孫など信頼できる親族を受託者とし、受託者となった方に処分や運用を含めた財産の管理を任せることです。
例えば、本人の預貯金や所有しているアパートなど不動産の管理を受託者が代行します。
成年後見制度と異なり、本人の判断能力がしっかりしている時期に受託者と信託契約を結び、契約で定めた時期から効果を発揮します。
また、家族信託は家庭裁判所が関与することはなく、信託の内容や受託者の権限も契約で定めることができるので自由度や柔軟性が高い制度になります。
親の財産管理には家族信託と成年後見制度、どっちを利用すべき?
親の財産管理において家族信託と成年後見制度のどちらを使うべきかは、個別の事情によって異なります。悩んだ結果、どちらを選べばいいか分からないという場合は、次のようなパターンでの使い分けを考えてみてください。
財産管理を柔軟に行いたい
財産管理を柔軟に行いたいというのであれば、家族信託を利用すべきででしょう。
家族信託では基本的に裁判所の関与もありませんし、サポートする内容や方法は契約によって自由に定めることができるからです。また、信託であれば家族間で完結させることもできるので、心理的な抵抗感も少ないことも利点としてあります。
身上監護まで含めて厳格に管理したい
財産の管理だけでなく、入退院の手続きなど、身の回りに関連する監護も含め、裁判所や第三者を交えて厳格に管理・サポートしたいというのであれば、成年後見制度を利用するのがよいでしょう。
家族信託と成年後見制度は場合によって使い分けを
家族信託と成年後見制度は、老化などにより判断能力が低下した親の財産管理において有効な制度であることは間違いありません。しかし、どちらにも長所や短所があるため、選択を誤ると財産を守ることができないこともあります。
どちらを利用するか悩んだときは、財産管理を専門とする弁護士や行政書士、税理士などに相談するなど、十分に検討した上で選択するようにしてください。
執筆者:柘植輝
行政書士
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