1年遅らせると8.4%アップ! 年金はいつから受給するのがお得なの?
ファイナンシャルフィールド / 2021年9月26日 23時30分
「長年真面目に保険料を納めてきたからには、年金はできるだけ多く受給したい」と考える方は多いでしょう。実は、同じだけ保険料を納めても、もらえる年金額は一律ではありません。受給を開始する年齢によって増減する仕組みとなっています。 ここでは、年金の繰り上げ受給・繰り下げ受給の制度についてまとめるとともに、いつから年金を受給すると得になるのかを考えます。年金の受給をいつスタートするか悩んでいる方は、ぜひご自身の状況に当てはめて考えてみてください。
年金の繰り上げ受給の仕組み
老齢を理由に受給できる公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の基本的な受給開始年齢は65歳です。しかし希望すれば、60~65歳になるまでの期間に受給開始時期を繰り上げられます。
年金を繰り上げ受給すると、受給を開始する時期に応じて、本来もらえる年金の金額から一定の割合が減額されます。減額率の計算式は次のとおりです。
減額率=繰り上げ請求月から65歳の誕生日の前日が属する月の前月までの月数×0.5%(令和4年4月以降は0.4%に改定)
※特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分を受給している人が、老齢基礎年金の一部繰り上げ受給を受ける場合は計算が異なります。
この計算式に従って計算すると、60歳0ヶ月で繰り上げ請求した場合の減額率は30%(令和4年4月以降は24%)、64歳11ヶ月では0.5%(同0.4%)となります。年金の繰り上げ受給を申請すると、65歳以降も生涯にわたって年金額は減額されたままとなることに注意しましょう。
年金の繰り下げ受給の仕組み
老齢基礎年金・老齢厚生年金は、受給開始年齢を66歳以後に繰り下げることもできます。受給開始時期の上限は70歳です(令和4年4月以降75歳に引き上げ)。年金を繰り下げ受給すると、受給開始時期に応じて、年金額が一定割合増額されます。増額率の計算式は次のとおりです。
増額率=65歳の誕生日の前日が属する月から繰り下げ請求月の前月までの月数×0.7%
この計算式に従って計算すると、66歳0ヶ月から受給を開始する場合の増額率は8.4%、70歳0ヶ月では42%、制度改定後の上限年齢である75歳0ヶ月では84%となります。繰り下げ受給による増額率は、生涯変わりません。
年金は何歳から受給するとお得?
65歳に受給開始した場合の年金額を100とすると、繰り上げ受給・繰り下げ受給を利用した場合の年金額は70~142%の幅で増減します(上限年齢70歳の場合)。受給開始が60歳0ヶ月と70歳0ヶ月の場合では年金額に倍以上の開きがあるわけです。
受給開始年齢を遅らせるほど年金額が大きくなるため、長期的に見るとできるだけ繰り下げ受給をしたほうが、累計で受給できる年金は多くなる傾向にあります。
例えば、60歳0ヶ月から繰り上げ受給を開始した場合、単純に計算すると77歳前には、65歳から受給開始した場合の累計額に追い抜かれます。一方、70歳0ヶ月から繰り下げ受給を開始した場合は、82歳前には65歳から受給開始した場合の累計額を追い抜く計算です。
しかし、忘れてはならないのは、誰しもが80代、90代まで生きられるわけではないということです。厚生労働省によると2020年の日本人の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳となり、ともに過去最高を記録していますが、もしも早くに亡くなってしまった場合は、繰り下げ受給を選択したことで、累計の受給額が少なくなることも考えられます。
また、家計に余裕があるわけではないのに無理をして繰り下げ受給を選択すれば、生活の質を著しく下げることになりかねません。
年金の受給開始年齢を検討する際には、生涯の累計受給額だけで考えず、次のような要素も考慮しましょう。
・収入や貯蓄の状況
・何歳まで働ける見込みなのか
・健康状態
など
これらを総合的に判断して無理のない範囲で受給開始年齢を後ろ倒しにするのが、お得に年金を受給する賢い考え方だといえるでしょう。
繰り上げ・繰り下げ受給の仕組みを知って受給開始年齢を判断しましょう
年金の繰り上げ受給や繰り下げ受給を利用すると、受給開始年齢に応じて年金額は増減します。年金をいつから受給するかを検討するときには、年金の減額率、増額率を考慮することが必要です。
また、年金以外の資金にどれだけ余裕があるかもポイントです。リタイア後の働き方や貯蓄の状況、ご自身やご家族の心身の状態などを総合的に判断して、最終的な受給開始年齢を決めましょう。
出典
日本年金機構「老齢基礎年金の繰上げ受給」
日本年金機構「老齢厚生年金の繰上げ受給」
厚生労働省年金局「被用者保険の適用拡大について」
厚生労働省「令和2年簡易生命表の概況」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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