年金を60~64歳で受け取る「繰り上げ受給」。1ヶ月早めると何%少なくなる?
ファイナンシャルフィールド / 2021年10月10日 23時30分
年金は65歳からの受給が原則ですが、本人が希望すれば60歳から受け取れます。本記事では、年金の「繰り上げ受給」とは何か、利用する際の注意点などを詳しく解説します。年金の仕組みを正しく理解して、自分に合った方法で受給の選択ができるようにしましょう。
年金の「繰り上げ受給」とは
年金は原則として65歳から受け取れますが、「老齢厚生年金・老齢基礎年金支給繰上げ請求書」を年金事務所に提出し、手続きをすれば65歳よりも前に繰り上げて受給が可能です。
しかし、繰り上げ受給を選択すると、1ヶ月早くもらうごとに0.5%減額されます。減額率は令和4年4月から0.4%になりますが、早く受け取るともらえる年金額が下がることを知っておきましょう。
「繰り上げ受給」すると1ヶ月あたり0.5%カットされる
「繰り上げ受給」をすれば、原則65歳から受け取れる年金を、60~65歳前までの間に請求できます。しかし、受給する時期を1ヶ月早めるごとに0.5%ずつ減額され、その額が一生続くこととなります。60歳0ヶ月で繰り上げ受給した場合が最大の減額率となるため、何%になるのか計算してみましょう。
・0.5%×12ヶ月×5年=30%
例えば、65歳で受け取る年金額が150万円なら、60歳で繰り上げ受給すると105万円です。
令和4年4月1日以降に60歳になる人は、減額率が改正されて0.5%から0.4%に引き下げられます。同様に60歳0ヶ月で計算すると、下記のとおりに変わります。
・0.4%×12ヶ月×5年=24%
先ほどと同じ150万円で計算すると、60歳で受給できる年金額は114万円と大きく変わります。
「繰り上げ受給」の注意点
65歳で受給できる年金を繰り上げ受給すれば、早く年金がもらえますが、注意点があります。この見出しでは、繰り上げ受給の注意点を4つ解説しますので、1つずつチェックしていきましょう。
「繰り上げ受給」をすると一生減額される
一度繰り上げ受給の請求をすれば、その減額率は一生変わりません。60歳0ヶ月で繰り上げ受給をすれば、一生涯30%の減額率です。60歳で年金をもらうのと、65歳で年金をもらうのでは、累計受給額が変わってくるため、待てるのであれば繰り上げ受給は安易にしないほうがおすすめです。
寡婦年金の権利がなくなる
寡婦年金は、自営業者などの第1号被保険者が老齢年金をもらう前に亡くなった場合、条件を満たせば妻が60~64歳の間もらえる年金のことです。寡婦年金の金額は、夫が本来受給できるはずの年金額の4分の3となっています。
しかし、妻が繰り上げ受給をすると、寡婦年金がもらえなくなります。すでにもらっている場合も、繰り上げ受給をすれば権利が消滅するため注意が必要です。
障害基礎年金が受けられない可能性がある
公的年金の1つである障害基礎年金は、けがや病気で障害が残ったときにもらえる年金です。60~65歳の間に、病気やけがなどで障害の状態になり、障害基礎年金が受け取れる要件を満たしたとしても、繰り上げ受給している人は請求できません。
繰り上げ受給は請求したときの年齢に応じて0.5%減額されますが、障害基礎年金は減額率がありません。障害の状態によっては、繰り上げ受給よりも多くの金額が受け取れるかもしれないため気を付けてください。
遺族年金は65歳まで一緒にもらえない
65歳より前に妻に遺族年金の受給権が発生した場合は、老齢基礎年金か遺族年金のどちらかを選択します。繰り上げ受給していれば、老齢基礎年金は減額されているので遺族年金を選んだほうが有利です。
65歳が過ぎれば、遺族年金と老齢基礎年金の両方が受け取れますが、繰り上げ受給しているので老齢基礎年金の減額率は適用されたまま。繰り上げ受給したことが、大きなデメリットになるでしょう。
繰り上げ受給はよく考えて決めること
65歳で受け取る年金を早められる繰り上げ受給は、生活費をプラスにできる点ではメリットだと言えます。一般的に考えれば、退職後は収入が減るため、預貯金が十分でなければ年金を早く受給したいと考えるかもしれません。
しかし、繰り上げ受給は注意点が多くあるため、本当に請求するかどうかはよく考えて判断してください。不安なことや迷うことがあれば、お近くの年金事務所に相談してみることをおすすめします。
出典
日本年金機構「65歳前に老齢年金の受給を繰上げたいとき」
日本年金機構「繰上げ請求の注意点」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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