iDeCoに注意、iDeCoのデメリットに注目
ファイナンシャルフィールド / 2021年10月18日 14時0分
老後2000万円問題が話題になって以降、資産形成に関心を持たれてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を始めようと考える方も増えているのではないでしょうか。 NISAもiDeCoも税制優遇制度として、メリットが強調されているようにも思いますが、今回はiDeCoの注意点について注目してみました。
iDeCoとは
iDeCo(イデコ)とは、「individual-type Defined Contribution pension plan」(個人型確定拠出年金制度)の表記の一部から取った愛称で、2002年1月から加入の受け付けが始まりました。
毎月の拠出額(掛け金)は5000円から設定でき、加入している年金制度によって拠出額の上限が変わります。掛け金は全額が所得控除の対象で、運用期間中の運用益は非課税となります(現在、積立金に対する特別法人税は停止されています)。
iDeCoの年金資産は、60歳以降に一時金として一括、もしくは年金として受け取ることが可能です。一部を一時金で、残りを年金受取とすることもでき、受取方法の選択肢は広くなっています。また、一時金で受け取る際には退職所得控除の対象、年金での受け取りの場合は公的年金等控除の対象となります。
iDeCoの特徴として、この「掛け金」「運用益」「受取時」の3つの税制上の優遇措置を見たり聞いたりすることが多くあると思います。毎月の掛け金が所得控除になることや、運用期間中の運用益が非課税というのはメリットだと感じますが、受取時の税制優遇という点には注意が必要となります。
退職所得は合算される
iDeCoの受け取り方には一括受取と年金受取がありますが、前述したとおり、一時金として一括で受け取る場合は退職所得控除の対象となります。
個人事業主や専業主婦の方であれば、退職金はないので問題ありませんが、会社員や公務員の方には一部例外を除いて退職金があります。
退職所得は、退職所得控除として800万円(40万円×20年)+70万円×(勤続年数-20年)、勤続年数が20年以下の場合は、40万円×勤続年数を退職金から控除し、さらに控除した額を2分の1にしたものに課税されるため、iDeCoを一括受取とした場合にはメリットがあります。
ただし退職所得は、会社などからの退職金とiDeCoの両方を同じ年に受け取る場合、別々で計算されるのではなく、合算して計算されます。仮に勤続年数が30年で退職金が1500万円、iDeCoの加入年数が20年で一括受取が500万円の場合、退職金総額が2000万円となります。
退職所得控除として、800万円+70万円×10年=1500万円が退職金から控除されますので全額が非課税で受け取れますが、iDeCoの受け取り分は課税対象となります。
iDeCoを翌年受け取ればよいと思われる方もいるでしょうが、確定拠出年金の一時金では前年以前の14年以内に別の退職金を受け取った場合、加入期間に応じた退職所得控除が使えなくなってしまいます。
また、65歳定年という企業も多くなってくると思われることから、退職金を受け取る前に確定拠出年金を受け取るケースも考えられます。
退職金を受け取った場合には、前年以前4年以内に他の退職金があれば、他の退職金を計算したときに使った勤続年数は除かれることになり、上記の例で考えると、iDeCoを受け取ったときに20年分の加入期間を利用して計算されます。
iDeCoを受け取った翌年に退職金を受けとるときには、iDeCoの受取時に20年の加入期間を使ってしまったので、残りの期間10年を勤続年数として使います。
ただし、この例のように退職所得控除の方が多い場合には超過している部分について、みなし勤続年数を計算し、2回目の退職所得控除の勤続年数に含むことが可能となります。
今回の場合はiDeCoの受取額が500万円なので、(800万円-500万円)÷40万円=7.5年となり、iDeCoの退職所得控除の加入期間は7年で計算され、退職金受取時の勤続年数は30年間からみなし勤続年数の7年を引いた23年で計算されます。
結果として、1500万円-(800万円+70万円×3年)=490万円となり、490万円の2分の1に課税されることになります。退職所得控除を最大で活用をしようと考えると、退職金を受け取る5年前にiDeCoを一括で受け取る必要があります。
年金受取も公的年金と合算される
一方、iDeCoを年金受取とした場合、受取時には公的年金等の雑所得として計算されます。
一般的な雑所得の場合は、収入の金額から経費を引いたものを所得金額として所得税の計算に使われますが、公的年金等の雑所得の場合は、年金として受け取った額から年齢と収入に応じた控除額を控除したものが所得金額とされます。
65歳から公的年金を受け取る方が60歳からiDeCoを年金で受け取る場合、他に公的年金等の雑所得がなく、iDeCoの受取額が年間60万円以下の場合、年収が1000万円以下であれば税金は必要ありません。
また、65歳から公的年金と合わせて受け取る場合には、公的年金とiDeCoの受取額を合わせて所得を計算するため、年収が1000万円以下で、公的年金とiDeCoの年金の受取総額が330万円未満の場合でも110万円の控除しかなく、税額が多くなる可能性もあります。
例:
公的年金が年間200万円、iDeCoが年間60万円の場合、200万円+60万円-110万円=150万円が所得税の課税対象として、他に所得があれば他の所得と合算して所得税が計算されます。
一括受取と年金受取の併用
前述しましたがiDeCoの受取方法は、一時金と年金を併用することも可能です。
退職所得控除を利用するときに、勤続年数によって控除枠がまだ残っている場合には、同じ年でも退職金と合わせてiDeCoの一部を一時金で受け取り、残りを年金で受け取ることもできます。
また、年金の受取期間も5年から最大20年で、金融機関ごとの受取方法から選ぶことができますので、他の公的年金や収入があれば受取方法についても考えておく必要があるのかもしれません。
まとめ
今回は、iDeCoの注意点について考えてみました。
自営業や専業主婦の方など退職金制度がない場合は問題ありませんが、2022年10月からは企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の同時加入の要件が緩和されることで、退職金や老齢厚生年金とiDeCoの給付を同時に受け取ることも考えられ、iDeCoの受取時のメリットがなくなる可能性がある方も増えると思われます。
退職金や公的年金の受取額を早めに確認しながら、iDeCoの受取方法も考えておきましょう。
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー
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