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「生前贈与」が今後は難しくなる? 暦年贈与は大きく変更に?

ファイナンシャルフィールド / 2021年10月21日 22時40分

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暦年贈与は毎年110万円を超えなければ、誰にでも非課税で財産を移すことができる制度です。相続税対策の一環として多くの方が利用していますが、今後は、現在よりも厳しい基準で制度化される見込みです。   今後の事情を考慮すると、生前贈与を検討されている方は、なるべく早く行動する必要があります。

年間110万円までの移転は非課税

相続税は、誰かが亡くなり相続が発生、遺産額が控除額を超える場合に、相続人に対し課税されます。控除額も多いですが、遺産が多くなると相続税も巨額になります。
 
一方で贈与税は、数年にわたり誰にでも110万円までなら非課税で贈ることができます。贈与税額は、年間110万円を超えた額に限られます。そのため、生前贈与の手段として、子どもや孫に対し、何年かかけてコツコツと行う「暦年贈与」が一般的になされています。
 
国としても、この暦年贈与以外にも、金融資産を多く保有する高齢者から若者への所得移転を推奨する特例を設けてきました。例えば、教育資金や住宅資金の贈与が、非課税で行える制度も推進してきました。
 
しかし、こうした非課税特例に対しては、富裕層に対する優遇策との批判もあり、暦年贈与を含め今後の見直しが現実化しています。
 
一般的な贈与方法は、年間110万円まで非課税でできる暦年贈与です。そのため、贈与時に証拠として「贈与契約書」を作成する、時には贈与額を増額し贈与税支払いの証拠を残す、といった工夫を実行している方もいらっしゃるでしょう。
 
非課税額が110万円のため、財産額の多い方は、長期間かけて行う必要があり、それだけ早めの準備が必要になります。
 

思わぬ課税がなされる事態に注意

ところが現在の制度でも、税務署からの指摘で贈与とは認められずに、納税をすることになる事態もあります。
 
例えば、毎年110万円を超えない金額を、契約書を一切作らずに贈与し続ける、または初年度だけ契約書を作成し、その後は作成しないで贈与を続けると、「暦年贈与」とは認められず「一括贈与」として認定されてしまいます。
 
贈与した総額に対して贈与税が課せられることがあります。そうならないためには、(1)毎年贈与契約書を作成する、(2)贈与額はなるべく同額にしない、(3)110万円以上贈与した年もつくり少額の贈与税を支払う、といった対応策をとる必要があります。
 
また、専業主婦の口座を利用し主に夫が株式投資を行う場合も、要注意です。妻名義の口座に夫が入金し、運用も夫任せでは、夫が亡くなり相続時に問題になります。
 
名義は妻でも妻の財産と認められず夫の財産と評価され、相続税の対象となります。妻本人が名義貸しと思われないよう、取引の実際を把握し運用していた実績をつくっておきましょう。
 

多額の贈与可能な非課税特例も見直し

現在、子どもや孫に非課税で大きな金額を贈与できる特例があります。それは「住宅資金贈与」「教育資金贈与」「結婚・子育て資金贈与」の3つの「非課税特例」です。親から、子どもや孫に対して、高額贈与が非課税でできます。
 
専用口座を開き資金移動の透明化が必要ですが、対象者1人に、住宅資金贈与は1500万円(省エネ住宅)、または1000万円(一般住宅)まで、教育資金贈与は1500万円まで、子育て資金贈与は1000万円まで、結婚資金贈与は300万円まで、非課税枠があります。
 
暦年贈与と比べ大きな金額を、子どもや孫へ移転できる仕組みです。
 
非課税特例の運用は、逐次変更されてきました。住宅資金贈与は、2021年末までの契約については、小規模の住宅への適用が広がるなど、手厚い変更がされました(入居は22年で可)。
 
2022年以降は微調整され継続の予定です。教育資金、結婚・子育て資金の贈与特例に関しては、2023年3月末までの継続が確定しています。しかし運用条件が厳しくなり、教育資金は30歳、結婚・子育て資金は50歳を超えた時点で、使い残しの金額に対しては、相続税が通常の2割増額になりました。
 
2023年以降も変更がある予定で、特に結婚・子育て資金の非課税特例は、利用も少ないため廃止の可能性もあります。
 
本来の相続税自体の減収にもつながるため、こうした非課税特例は、今後は見直しの対象になります。こうした特例は、富裕層だけができる家族内での資産移転だけだ、との指摘も根強くあります。
 
贈与を計画している方は、なるべく早く、条件を満たしているかを確認して実施されることをお勧めします。
 

相続税と贈与税の一体化が進む

現在、相続税と贈与税を一体化させる議論が政府・与党で進んでいます。
 
現在の税体系でも、暦年贈与を実施中に相続が発生すると、相続前3年間分の贈与額は、本来の相続額と合算して再計算し、相続税として課税します。相続が近いことを知ってから始めても、その効果は限られます。
 
また、暦年贈与という方法以外に、これまで贈与した金額を、相続時に相続金額と合算して税額を決める「相続時精算課税制度」があり、どちらかを選択できます。もし2つの合算額が相続税の控除額以内であれば。相続税の支払いはありません。
 
今後は暦年贈与に関して、これを見直し新たな仕組みが設けられる可能性があります。長い期間をかけて少しずつ非課税で贈与できた仕組みですが、大きく変更されることになります。
 
現在政府・与党で議論されている案は、(1)暦年贈与の仕組みは廃止し、相続時精算課税制度へ一本化する案と、(2)暦年贈与制度は残すが、相続税との合算期間を現在の相続前3年から大きく延ばす(少なくとも10年)案、いずれかになる可能性があります。
 
欧米諸国の主流である相続税を中心の税体系に変更される方向です。これにより贈与による所得の移転が制限され、相続税中心に課税体系に変更する狙いがあります。
 
暦年贈与は110万円までならば、誰に対してでも非課税で資産を移転できる仕組みです。長く定着し慣れ親しんできた仕組みのため、すべて廃止され相続税中心の税体系となると、抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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