「節税だけ」は不十分?相続税対策は「納税資金の確保」も考慮しておく
ファイナンシャルフィールド / 2021年10月24日 4時30分
相続税対策というと、多くの方は相続税の額自体を引き下げる節税方面でイメージされるかと思います。しかし、節税と同じくらい重要な相続税対策に「納税資金の確保」があります。 なぜ相続税対策において納税資金の確保をも考慮する必要があるのでしょうか。また、どのように納税資金を確保するのがよいのでしょうか。相続税対策としての納税資金確保について解説していきます。
納税資金の確保が重要な理由
相続税対策において納税資金の確保が重要となる理由は相続税の納税は現金で、かつ、相続の開始があったことを知った日(被相続人が死亡した日)の翌日から10ヶ月以内と、相続してから短期間で納税まですることが原則とされているからです。
相続税は3000万円+法定相続人の数×600万円を超えた部分について10%から55%の税率で発生するため、相続税の金額によっては相続人が短期間で納税のための現金を用意することが難しい場合もあります。
特に相続財産において現金が少なく、かつ、高額であり、さらに現金化が必ずしも容易ではない不動産などがあるじとなっている場合であればなおさらです。
出典:国税庁 No.4155 相続税の税率
相続税の納付は延納や物納という制度を用いることで納税期限を延ばしたり、現金に変えて相続財産で納税することもできるのですが、どちらも複雑な手続きが必要となる上、延納すると利子が付いたり、物納は相続税評価額で評価されたり、何らかの担保となっている不動産は物納の対象とならないなどデメリットも多くあります。
下手に延納や物納という制度を当てにしていると、相続財産が実質的に目減りしてしまったり、相続人の負担を増やすことになります。
このように相続財産を守り、さらに相続人の負担を守るためにも相続税は節税と同じくらい納税資金対策も重要になるのです。
納税資金はいかに確保する?
では、納税資金はどのように確保しておくとよいのでしょうか。よく利用される納税資金の確保策としては次のようなものがあります。
生命保険
受取人を相続人として生命保険を契約しておけば、相続の開始と同時期に直接現金が相続人に支払われ、さらに保険金は遺産分割の対象とならず受取人の財産となるため、納税資金を早期に相続人の手元に用意できます。
さらに、生命保険は法定相続人の数×500万円まで非課税となる特例もあるため、節税も同時にできる優れた効果も併せ持っています。
生前贈与
生前から相続税相当分の現金を贈与しておくのも相続税の納税資金の確保として有効です。また、年間110万円以内の非課税の範囲内で贈与をしていけば、相続税の節税も並行して行うことができます。
ただし、生前贈与が早すぎると相続人の性格によっては相続前に贈与された資金を使い果たしてしまう可能性がある点には注意が必要です。
相続財産の現金比率を高める
相続財産のうち、現金の比率を高めることも納税資金確保として有効です。生命保険や生前贈与ではやり方次第で相続人間で不公平が生じて相続争いが生じる恐れもあります。
また、現金であれば単純にお金を分け合うだけなので誰がどの財産を相続するということを原因とした相続争いを防ぐことができ、相続争いの防止にも役立ちます。
節税だけでは相続税対策は十分ではない
相続税対策は節税だけでは十分とはいえず、その先にある納税資金についても対策して初めて十分な相続税対策となります。
今相続税対策を考えている、あるいは既に実施しているというような場合、一度その内容について見直し、相続税の納税資金についてまで対策できているかを確認し、必要に応じて相続税の納税資金確保も含めた相続税対策となるよう内容の見直しを進めてみてください。
出典
国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
国税庁 No.4155 相続税の税率
国税庁 No.4211 相続税の延納
執筆者:柘植輝
行政書士
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