暦年贈与ができなくなった後に残る相続税の節税対策とは?
ファイナンシャルフィールド / 2021年10月24日 0時0分
毎年110万円まで非課税で財産を贈与できる仕組みを利用し、相続財産を減らすことで間接的に相続税の節税につながることから、相続税の節税対策の王道ともいえる暦年贈与。 ただし、暦年贈与で非課税となるのは年間110万円までと上限があり、その枠を使い切った場合、ほかにどのような節税対策が選択肢となるのでしょうか。 暦年贈与以外でできる相続税の節税について見ていきます。
生命保険や損害保険の非課税枠の利用
被相続人(亡くなった方)の死亡に起因して支払われる生命保険金や損害保険金は、保険料を被相続人が負担していれば、その保険金の受取人が相続人となっている場合、全ての相続人が受け取った金額が下記の計算式の範囲内であれば相続税が全額非課税となります。
死亡保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数
相続税がかからないお墓などを購入しておく
お墓や仏壇など日常礼拝に使用されるものは、相続税がかからない財産とされています。そのため相続財産のうち、現金をはじめとする課税対象の部分を、お墓や仏壇など非課税となる財産に変えておくことで相続税を節税することができます。
しかし、骨とう的な価値があったり、投資対象となり得るようなものであった場合は課税対象となります。例えば、純金製で非常に高額となるような仏壇は日常礼拝に使っていたとしても非課税とはされないという具合です。
また、これらの非課税となる財産は、被相続人の生前に購入され、かつ支払いが済んでいるものに限ります。予約しておいただけの場合や、ローンで購入して支払いが残っていると非課税にはならないため、この点にも注意してください。
教育資金の一括贈与
30歳未満の方が、父母や祖父母など直系尊属から教育資金に利用する目的で受け取った金銭などの贈与分に関しては、最大で1500万円まで贈与税が非課税となるため間接的に相続税を節税することができます。
ここでいう教育資金とは、幼稚園や各種学校の学費だけではなく、塾など学校外での学習、スポーツや芸術方面の習い事も含めた広い範囲での教育に使われるお金のことをいいます。30歳未満の子や孫がいる場合は、教育資金として早めに贈与しておくのも相続税の節税対策となります。
結婚・子育て資金の一括贈与
20歳以上50歳未満の方が、結婚や子育て資金に充てる目的で父母や祖父母など直系尊属から受け取った贈与については、1000万円まで贈与税が非課税となるため、教育資金の一括贈与と同様に相続税の間接的な節税につなげることができます。
既に子や孫が独立して教育資金は必要ではないという場合、こちらの制度が選択肢となります。
ただし、教育資金の一括贈与でも同様ですが、非課税制度を利用している間に贈与者が亡くなり、贈与での取得分に残高がある場合は、一定の条件で相続税の対象となる点に注意が必要です。
夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
婚姻期間が20年以上ある夫婦の間で居住用の不動産や、それを取得するための金銭などの贈与があったときは、贈与税の基礎控除110万円に加えて最大2000万円まで控除できる「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」もあります。
この特例を利用するには、あくまでも居住用の不動産であり、贈与があった翌年の3月15日までに実際に居住しているほか、その後も住み続ける予定であることなどが必要です。
暦年贈与以外にも相続税の節税対策はある
相続税を節税するための方法は、暦年贈与や今回紹介した制度以外にも多くあります。仮に暦年贈与ができなくなったとしても、諸制度をうまく活用することで節税を行えます。
相続税の節税に当たっては多様な制度をチェックするほか、場合によっては税理士など税金の専門家へ相談することも効果的です。
出典
国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
国税庁 No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
執筆者:柘植輝
行政書士
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