相続税は現金納付が基本。「納税資金」の対策をしていますか?
ファイナンシャルフィールド / 2021年10月26日 11時30分
相続税対策を講じたことはあっても、実際に納税するときの資金源について考えたことがない人も多いでしょう。相続税は現金一括納付が基本です。そのため「ふたを開いてみたら相続財産は不動産ばかりで、納税に充てる現金が不足している」というケースは少なくありません。このような事態を防ぐには、十分な納税資金対策が必要です。 ここでは、相続税を納付する現金がない場合の措置や、納税資金を用意するための対策方法についてまとめました。相続税の納税資金対策をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
相続税を納められる現金がないとどうなる?
相続税は、被相続人の相続の開始があったことを知った日の翌日から、10ヶ月以内に申告・納税する必要があります。納税の方法は、原則として現金一括納付です。納税期限までに現金で納付することが難しい場合は、「延納」および「物納」という方法での納税を申請することになります。
■延納
現金納付が困難な金額を上限として、担保の提供を条件に年賦で納める方法。相続税額が10万円を超えている場合に利用できます。延納期間中は利子が発生します。
■物納
現金納付が困難な金額を上限として、一定の相続財産で納付する方法。物納には次の財産が充てられ、優先順位が定められています。
●第1順位:不動産、船舶、国債、地方債、上場株式など
●第2順位:非上場株式など
●第3順位:動産
相続財産に現金やすぐ換金できる資産がない場合、相続財産は多額にもかかわらず納税資金を用意できず、支払いが困難になる可能性が高くなります。延納は利息がかかりますので、できる限り現金で納付できるよう生前から意識して納税資金対策をしておくことが大切です。
主な納税資金対策の方法
生前に可能な限り納税資金を用意する方法として、次のような対策が考えられます。
●資産組み換え
●生前贈与
●生命保険などの活用
ご自身の財産のうち、現金やその他の資産がどのような割合で存在するのか、相続税額の見込みはどのぐらいかをきちんと把握したうえで、実行できる対策を検討しましょう。
以下で、それぞれの対策方法について解説します。
資産組み換え
保有している資産が土地や建物など即時の換金が難しいものに偏っている場合は、一部を事前に売却して、現金化しておく方法があります。現金は貯蓄するだけでなく、換金性が高い株式などの金融資産に組み換えて、運用しながら十分な資金を確保してもよいでしょう。
生前贈与
相続人に納税の資金源にしやすい財産を生前贈与しておくと、納税対策になります。例えば、次のようなものを贈与するのが有効です。
●現金
●換金しやすい株式などの金融資産
●収益不動産(賃料を貯蓄して納税に充てる)
また、贈与税の基礎控除額である年間110万円を超えない範囲であれば、生前贈与は相続税の節税対策にもなります。毎年110万円までの贈与には贈与税がかからず、贈与した分だけ相続財産が減るためです。
生命保険などの活用
生命保険の死亡保険金は、請求手続きをすると通常5~10営業日程度で支払われるため、相続が発生した際にすぐに現金化できます。また受取人を指定できるため、意図した相手に遺産分割に左右されない資金を残すことが可能です。
また、生命保険の死亡保険金には、相続税の非課税枠が設けられているため、現金で残すのと比べて相続人の税負担の軽減にもなります。
生命保険の死亡保険金の非課税枠は、次のように計算します。
生命保険の非課税枠=500万円×法定相続人の数
残される人のためにも納税資金対策を忘れずに
大きな金額の相続が発生すると、相続人の相続税の負担も大きなものになります。相続税は現金で期限内に納付するルールのため「多額の相続をしたはずが、まとまった金銭が用意できないために納税が難しい」という事態に陥る可能性があるのです
納税資金の問題で相続人を悩ませないためには、相続する側が、意識して納税資金の備えをしておくことが大切です。早い段階から、少しずつ対策をはじめるとよいでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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