電気料金が値上げ?「再エネ促進賦課金」とは?
ファイナンシャルフィールド / 2021年10月29日 3時30分
今、世界全体で取り組む課題の1つとして、CO2などの温室効果ガスの削減が挙げられます。日本でも、2030年までに温室効果ガスを46%削減するとの目標が掲げられています。 エネルギー自給率が低く、その多くを輸入に頼っている日本においては、自給できる可能性があり、発電時にCO2を排出しない再生可能エネルギーの普及に期待がかけられています。 ここでは、再生可能エネルギーの普及のため、私たちに毎月課せられている「再生可能エネルギー発電促進賦課金」について確認してみたいと思います。
再生可能エネルギー促進のための固定価格買取制度
再生可能エネルギーとは、石油やガスなどの資源エネルギー(化石エネルギー)と違い、枯渇することなく半永久的に利用できる自然エネルギーのことを指します。いわゆる、発電時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーであるため、地球温暖化の抑制にもつながります。
日本では、これらの再生可能エネルギーの普及と安定的な供給を図るため、「固定価格買取制度(FIT制度)」という助成制度を導入しています。
この制度では、一般家庭や事業者が再生可能エネルギーにより発電した電力を、国が定めた一定金額で電力会社が買い取ることで価格が保証されるため、電気事業者にとっても市場価格に影響されることなく再生可能エネルギーの利用を促進することができます。
固定価格買取制度の対象となっている再生可能エネルギーの種類は、太陽光発電、水力発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電などです。
例えば、太陽光発電や風力発電、水力発電は、天候や降雨量などに影響されることが課題となります。また、地熱発電やバイオマス発電は、発電にかかるコストが比較的高いことや電気エネルギーの変換効率の低さなどが課題とされています。
これらの課題を前提として再生可能エネルギーの普及を図るために、2012年から固定価格買取制度がスタートしました。
ただし、住宅用太陽光発電の場合、買取対象となる余剰電力について固定価格での買取期間が10年間と定められており、2019年11月以降は買取期間を順次満了していくこととなっています。今後は事業者ごとの単価での買取に移行するか、自家消費することになります。
固定価格買取制度を維持する再エネ促進賦課金
「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(以下、再エネ促進賦課金)は、前述の固定価格買取制度による電力の買取にかかる費用を、電力を利用する全ての国民が電力利用量に応じて毎月負担するというものです。
そのため、再エネ促進賦課金は毎月の電気料金に自動的に加算されています。電気料金の基本的な内訳と、再エネ促進賦課金の計算方法は以下のとおりです。
電気料金=基本料金+電力量料金±燃料費調整額+再エネ促進賦課金
※燃料費調整額とは、火力燃料(原油、LNG、石炭)の価格変動を電気料金に迅速に反映させるため、その変動に応じて毎月自動的に電気料金を調整する制度のこと
再エネ促進賦課金=再エネ促進賦課金単価×電力使用量(kWh)
つまり、再エネ促進賦課金は、一般家庭においても電力使用量が増加すればするほど徴収される仕組みとなっているのです。
再エネ賦課金単価の増加推移
上記の計算式にある再エネ促進賦課金単価は、年々増加しています。また、環境省の発表によると、この増加傾向はしばらく続くとの見通しが示されています。
再エネ促進賦課金単価(従量制) | |
---|---|
適用期間 | 円/kWh |
2012年8月分~2013年4月分まで | 0.22 |
2013年5月分~2014年4月分まで | 0.35 |
2014年5月分~2015年4月分まで | 0.75 |
2015年5月分~2016年4月分まで | 1.58 |
2016年5月分~2017年4月分まで | 2.25 |
2017年5月分~2018年4月分まで | 2.64 |
2018年5月分~2019年4月分まで | 2.9 |
2019年5月分~2020年4月分まで | 2.95 |
2020年5月分~2021年4月分まで | 2.98 |
※東京電力 「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」を参考に筆者作成
まとめ
資源エネルギー庁の統計によると、2017年度時点での日本の発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合(再エネ比率)は、16%となっています。これは世界の主要国と比べて低い水準となっており、最高水準のカナダは実に65.7%となっています。
毎月の電気料金の明細を隅々まで確認している方は少ないと思いますが、単純な電力使用量の多寡だけではなく、再エネ促進賦課金などの料金が自動的に加算されていることについても覚えておきましょう。
出典
東京電力 再生可能エネルギー発電促進賦課金単価
環境省 平成26年度2050年再生可能エネルギー等分散型エネルギー普及可能性検証検討委託業務報告書
経済産業省 資源エネルギー庁 日本のエネルギー2018 「エネルギーの今を知る10の質問」
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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