年金がもらえない?! それって本当? 年金の運用について調べてみました。
ファイナンシャルフィールド / 2021年11月6日 0時0分
ファイナンシャルプランナーとして相談を受けている中で、「年金は当てにならない」「将来もらえる年金は減ってしまう」と言われる方がいます。 そこで今回は、年金の運用管理を行っている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の収支や運用実績を調べてみました。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)とは
年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)とは、「厚生年金保険事業及び国民年金事業の安定に資することを目的としている組織です。」とホームページに記載されているように、厚生年金と国民年金の運用を含めた管理を行っている組織です。
GPIFが定めている投資原則は以下のとおりです。
GPIFの投資原則 | |
1 | 年金事業の運営の安定に資するよう、専ら被保険者の利益のため、長期的な観点から、年金財政上必要な利回りを最低限のリスクで確保することを目標とする。 |
2 | 資産、地域、時間等を分散して投資することを基本とし、短期的には市場価格の変動等はあるものの、長い投資期間を活かして、より安定的に、より効率的に収益を獲得し、併せて、年金給付に必要な流動性を確保する。 |
3 | 基本ポートフォリオを策定し、資産全体、各資産クラス、各運用受託機関等のそれぞれの段階でリスク管理を行うとともに、パッシブ運用とアクティブ運用を併用し、ベンチマーク収益率(市場平均収益率)を確保しつつ、収益を生み出す投資機会の発掘に努める。 |
4 | 投資先及び市場全体の持続的成長が、運用資産の長期的な投資収益の拡大に必要であるとの考え方を踏まえ、被保険者の利益のために長期的な収益を確保する観点から、財務的な要素に加えて、非財務的要素であるESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した投資を推進する。 |
5 | 長期的な投資収益の拡大を図る観点から、投資先及び市場全体の長期志向と持続的成長を促す、スチュワードシップ責任を果たすような様々な活動(ESGを考慮した取り組みを含む。)を進める。 |
※年金積立金管理運用独立行政法人 「投資原則・行動規範」より筆者作成
※「5」のスチュワードシップ責任とは、機関投資家が投資先企業と建設的な「目的を持った対話」などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的なリターンの拡大を図る責任
この原則は、投資の基本的な考え方だと筆者は思います。
2020年3月までのGPIFの運用資産の基本ポートフォリオ(資産構成)は、国内株式25%、国内債券35%、外国株式25%、外国債券15%と国内債券の比率が多くなっていましたが、2020年4月からはいずれの資産も25%と策定し、運用されています。
厚生年金・国民年金の収支決算
それでは、厚生年金や国民年金の財政状況を確認してみたいと思います。
公的年金は100年安心な制度として5年に一度の財政検証が行われ、現在はマクロ経済スライドを採用し、物価や賃金の変動率だけではなく、現役の被保険者の減少や平均余命の延びを加味した年金額の調整がされるようになっています。
厚生労働省が発表している2020年度の厚生年金・国民年金の収支決算の概要では、厚生年金の歳入が48兆6356億円、歳出が48兆1367億円と4989億円の黒字となっています。
また、国民年金の歳入は3兆7640億円、歳出が3兆6629億円と1011億円の黒字です。
年金保険料の収入から老齢年金だけではなく、遺族年金、障害年金などが支払われている状況となり、GPIFの保険料収入や運用収益から年金給付ができていることになります。
GPIFの運用状況
GPIFの運用状況はホームページで確認することができます。
2020年度の運用状況は、2020年3月に起こったコロナショック後の急激な株価上昇などにより大きな収益を上げています。2020年度の年間の収益額が37兆7986億円となり、年率で25.15%増えています。
2001年度からの運用実績は、累積で95兆3363億円のプラスとなり、年率では3.61%です。GPIFの年金積立金の長期的な運用目標は「名目賃金上昇率+1.7%」となっています。
2020年度の名目賃金上昇率はマイナス0.51%ですので、2020年度は運用目標1.19%に対し、収益率25.15%と大きく収益を上げていることが分かります。
なお、「名目賃金上昇率+1.7%」という運用目標は2006年度から設定されていますが、運用目標を下回ったことはありません。
まとめ
公的年金に対して不信感を持たれる方もいます。会社員の方など厚生年金に加入されている方は、年金保険料の納付は会社が行っていますが、個人事業主などの場合は自分で支払う必要があり、中には保険料を納付していないという方も見られます。
年金の運用管理について風評を信じるよりも、実際の情報を確認できる時代となっていますので、ご自身でチェックしてみるのも良いのではないでしょうか。
出典
年金積立金管理運用独立行政法人 投資原則・行動規範
厚生労働省 厚生年金・国民年金の令和2年度収支決算の概要
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー
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