高台居住者のリスクと火災保険水災補償加入の再検討
ファイナンシャルフィールド / 2021年11月8日 12時0分
![高台居住者のリスクと火災保険水災補償加入の再検討](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_120296_0-small.jpg)
毎年のように全国各地で観測史上最大の降水量を記録しています。大規模な土石流によって多くの人命や財産が失われるニュースを何度も目にします。 高台に住んでいるからと水災の被害を受けることは無いといえるのかどうか、火災保険の水災補償の必要性や災害リスクとマイホーム購入について再検討しましょう。
持ち家世帯の水災補償加入率は約66%
以前の記事で、避難所に避難した近所の方に火災保険や水災補償に加入していない人がいるかもしれない。そういった人に自分が保険で補償されることが知られると、その後の近所付き合いや生活に支障をきたす可能性があるので注意するように申し上げました。
内閣府の試算によると、2015年度の持ち家世帯の水災補償加入率は約66%とされています(※1)。
つまり3世帯に1世帯は水災補償に加入していません。もちろん、もともと低い土地と高台の土地では水災補償加入率は違うかもしれませんが、同じ避難所に避難している人の中には被災しても保険金が何も支払われない方がいるかもしれないことを表しています。
多くのFPが繰り返しさまざまなメディアで訴えていますが、「土砂崩れは水災補償に加入していないと火災保険では補償されません。」
「高台に住んでいるから床上浸水することは無い」と水災補償に未加入でいると、大雨によって近隣の崖などが崩れて起こる土砂崩れ等による水災被害に遭って後悔するかもしれません。
たとえ近隣に崖が無くとも、はるか遠くの山から流れてきた盛土などの大量の土砂が、道路を数百メートルも流れてきて自宅を襲うということも近年のニュースでよく報道されています。本当に高台に住む方の自宅に水災補償が必要ないか再検討すべき時期といえます。
ハザードマップで確認
東日本大震災で津波や低地での水害の危険性について、ハザードマップで確認することが大事だということは広くいわれてきました。もう少し広い災害に目を向けて、高台の土砂崩れの危険についてもハザードマップで確認することができます。
自分が住んでいるエリアはもちろんですが、道路沿いに少し高い地域にも着目しましょう。道路を数百メートルから数キロメートルにわたって土石流が流れてくることは過去幾度となく発生しています。
それぞれの自治体や国土交通省から公開されているハザードマップをまとめたハザードマップポータルサイトなどもありますので、現在住んでいる地域はもちろん、今後住む予定のある地域やマイホーム購入を考えている土地について、ぜひ土砂崩れの危険性について調べてください。
危険な盛土情報の更新を確認
2020年3月の国土交通省の発表では47都道府県の1003 市区町村において、5万1306ヶ所(面積約10万ha)の大規模盛土造成地が存在することが明らかになりました(※2)。すべてに危険性があるわけではありませんが、2021年7月に熱海で起きた山間部の盛土からの土石流被害を受けて、全国の盛土の危険性の詳細調査が行われています。
調査結果によってすべての盛土で危険性が無くなる改良がなされれば良いですが、さまざまな事情ですぐに改良されないようなケースもでてくるでしょう。自宅近辺や自宅より高い場所に危険な盛土があるという情報があれば、自己防衛をしなければならないでしょう。いつ土砂災害を引き起こす局地的な豪雨があるか分かりません。
家族の身体的な状況等により転居も
水害や土砂崩れの被害は火災保険の水災補償があれば保険の支払い要件の範囲内で金銭的な損害は補償されます。
最新のハザードマップによって危険度が増したと判明しても、火災保険で備えて住み続けるのが現実的な対応でしょう。しかし、火災保険に加入しているからといって直接命が守られるわけではありません。
家族の高齢化等によって、避難が難しい・避難所生活をするのがちゅうちょされるような場合には、今後災害が頻発して毎年のように避難所に避難するような自宅では生活しにくくなります。子どもや孫が遠方にいて心配ばかりかけるようなことになるかもしれません。
住み慣れた地域を離れたくない、せっかく買って住宅ローンを返済し終えたマイホームに住みたい。そんな気持ちはよく分かりますが、災害リスクが高い自宅に高齢家族が住み続けるべきかは検討が必要です。
先祖代々の土地やもともと実家があった場所の自宅なら、災害リスクと共に暮らすのは仕方ないかもしれません。しかし、新たに購入するマイホームには、どんな災害リスクがあるのか、それは今後どうなっていくのかを調べてから購入し、必要な火災保険を備えましょう。
出典
(※1)内閣府 「参考資料 保険・共済による災害への備えの促進に関する検討会 報告」
(※2)国土交通省「宅地防災」~「大規模盛土造成地マップの公表状況等について(令和2年9月30日時点)」
執筆者:西村和敏
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士
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