老後に生活保護を受ける人の割合はどれくらい?
ファイナンシャルフィールド / 2021年11月10日 12時10分
老後の生活費について、気にかけている人も多くいることでしょう。個々の事情により、老後の備えが十分なく生活保護を受ける高齢者はどの程度いるのでしょうか? 今回は厚生労働省の調査結果、生活保護制度の概要や老後に生活保護を受ける理由について紹介します。老後破産を避け、老後のお金をどう準備するか考えるきっかけとして当記事を役立ててください。
高齢者世帯は受給世帯全体の約55%を占める
厚生労働省が直近の2021年度7月に実施した「令和3年度被保護者調査」によると、生活保護を受給した世帯は164万186世帯と、前月と比べると717世帯増加しました。
内訳で最も多いのが高齢者世帯の90万9658世帯です。高齢者世帯は受給世帯全体の55.7%、そのうち単身世帯は51.3%を占めることが分かりました。母子世帯の4.4%や、障害者・傷病者世帯の24.7%よりもかなり高い割合を占めています。
生活保護費を受ける2人以上の高齢者世帯が、受給世帯全体の4.4%である現状を見ると単身世帯の51.3%は非常に高い数字だと言えるでしょう。
単身で暮らす高齢者世帯は、2人で暮らす場合と比べて生活が苦しい場合が多いことが分かります。老後を豊かに暮らすためには、生活を支え合える存在が必要な時代なのかもしれません。
生活保護制度の概要
現在、日本では低所得者対策として「公営住宅制度」「生活福祉資金貸付制度」などさまざまな公的扶助があります。では「生活保護制度」とは一体どのような制度なのでしょうか?
根拠となる生活保護法は,憲法第25条に定める生存権を実現するために制定されています。生活保護制度の目的は「最低生活の保障」と「自立の助長を図る」の2つで、制度の実施機関は福祉事務所です。
老後で言えば、持てる全ての資産や能力を活用し、年金や手当などの社会保障給付をあわせても最低限必要な生活費を得られず困窮している人が対象となります。年齢、世帯の人数などさまざまな個別の事情から「最低生活費」が定められており、年金や手当などを合わせた金額がこの最低生活費以下であれば、その差額を生活保護として受給することができます。
生活保護には、次の8種類の扶助があります。
●生活扶助
●住宅扶助
●教育扶助
●介護扶助
●医療扶助
●出産扶助
●生業扶助
●葬祭扶助
なお生活保護を受けながら、有料老人ホームを利用できる場合もあります。
老後に生活保護を受ける理由とは
ゆとりある老後を送れず、生活保護を受ける理由にはどのようなものがあるのでしょうか? 老後の単身世帯では、2人世帯や他の家族と同居する世帯と比べて世帯収入が減少することが考えられます。
年金制度への加入状況によっては、受け取れる年金額が非常に低い、あるいは受給なしという場合もあるでしょう。ここでは、それぞれの状況について見ていきます。
低年金で生活が苦しいから
受け取れる公的年金額が低く、生活が苦しい点が考えられます。ここでは「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」で報告されている、老齢年金の平均月額は次のとおりです。
国民年金受給者:5万6000円(令和元年度)
厚生年金保険受給者:14万4000円(令和元年度)
国民年金受給者は働かないと生活を維持するのは難しく、働けない場合は困窮する可能性があります。
年金制度に未加入で無年金だから
「令和元年公的年金加入状況等調査」によると、65歳以上の高齢者のうち公的年金の非加入者が2.2%と報告されています。
また年金を受給するためには10年間の「老齢基礎年金の受給資格期間」を満たすことが必要です。
資格を満たさず無年金という状況にある人が生活保護を受ける場合があります。
年金暮らしでも生活保護を受けられる
生活保護を受給する世帯全体に占める高齢世帯は55.7%、そのうち単身世帯は51.3%という高い割合です。老後の単身世帯では、生活が厳しい傾向にあることがわかります。
低年金や無年金の世帯で、働くに働けない状況にある場合は福祉事務所に相談してみましょう。所有する資産や能力、年金・手当などをあわせても、定められた「最低生活費」を下回る場合は、生活保護制度によりその差額を受け取れます。
出典
令和3年度被保護者調査
令和元年公的年金加入状況等調査結果概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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