相続対策としての家族信託。税金が発生するのはどんな場合?
ファイナンシャルフィールド / 2021年11月22日 9時30分
相続対策として、家族信託が注目されています。しかし、使い方によっては贈与税の対象となる可能性もあります。今回は家族信託の概要と、利用の際の注意点を解説します。
そもそも信託とは?
信託とは、文字とおり「信じて託す」ことで、一般的には「自分の財産を他人を信頼して託し、自分の決めた目的に沿って運用や管理を委託すること」をいいます。日本における信託制度は、「信託法」という法律に基づき、その基本的な枠組みが作られています。
例えば、「財産を増やしたい」もしくは「安全に管理してほしい」といった希望を持つ人が、自分よりも高度な専門性を持っている人に財産の運用や管理を頼むことや、「自分が亡くなった後は、残された遺族に代わって財産の管理を委ねる」といったものがあります。
家族信託とは?
家族信託とは、信託銀行などといった事業者が受託者となる商事信託(営業信託)とは異なり、親子などの間で設定される信託契約のことで、民事信託と呼ばれることもあります。家族信託は、親の財産管理や事業承継等を目的として設定されるケースがほとんどです。
家族信託を利用するメリット・デメリット
家族信託を利用する際には、そのメリットそしてデメリットについて理解したうえで利用する必要があります。
■家族信託のメリット
家族信託を利用するメリットには、以下のようなものがあります。
1.家族の生活を守る:自分が高齢になるにつれ、財産の管理に不安を覚える方もいらっしゃるでしょう。その際に家族信託を利用することで、信頼できる家族に財産の管理を任せることができます。
2.適切な財産管理を行える:家族信託における財産管理は、本人そして家族の希望を酌んだ契約となることから、希望に基づいた財産管理を実現することが可能です。
他人に財産管理を任せる方法として成年後見人制度が挙げられますが、この場合の財産管理については「本人のためになるかどうか」が優先されることから、必ずしも本人や家族の希望が反映されるわけではありません。家族信託を利用することでそのような不満を排除できる点はメリットといえるでしょう。
3.相続対策として利用することができる:家族信託を利用することで、孫など先々の代までの相続対策が可能となります。一般的な相続対策としては遺言が挙げられますが、それによって守られるのは法定相続人だけです。しかし、法定相続人が亡き後についての財産管理についても考えておきたい場合には家族信託を利用することでそれを実現できます。
■家族信託のデメリット
ただし、家族信託の利用には以下のデメリットも存在します。
1.専門家のサポートが必要となる:家族信託といえども、契約であることからその道に詳しい専門的な知識が必要です。家族内にそのような知識を持つ人がいない場合は、プロに依頼する費用が必要となる可能性があります。
2.認知症などの場合は利用できない:家族信託は契約であることから、本人や家族の意思能力があることが前提です。したがって、認知症を発症した後などでは家族信託を利用することはできなくなることに注意が必要です。
家族信託で税金が発生するケース
信託においては「受益者」「受託者」「委託者」の3つの役割があります。受益者とは、その財産によって利益を得る人のことで、受託者とは委託者から財産管理を託される人、そして委託者とはその財産の所有者とのことです。通常、親と子の家族信託では親が「受益者」および「委託者」の役割を持ち、子どもが「受託者」となります。
■所得税が発生するケース
例えば、親の財産を子どもが信託を受けて運用し、それで得た利益を子どもが受け取る場合は、その利益は所得とみなされ、所得税が発生します。
■贈与税が発生するケース
上のケースで、親の財産の所有権が子どもに移った場合は、贈与税が発生します。
■相続税が発生するケース
相続の場合も同様に、親の財産を相続することによる相続税が発生します。
ただし、これらの税金が発生するケースはあくまでも「委託者」と「受益者」が異なる場合であることに注意が必要です。さらに、その財産が不動産であった場合は、所有権が移った際の登録免許税やその後の固定資産税などの負担が発生することも覚えておきましょう。
まとめ
家族信託を利用する際には、信託財産から生じる収益については、ほかの赤字の財産と損益通算ができないなどのデメリットもあります。また、場合によっては成年後見制度を利用したほうが最終的なメリットとなる可能性もあります。
利用の際にはメリットやデメリット、さらに仕組みの内容をしっかりと理解し、契約内容についても漏れのないように記載し、締結する必要があります。
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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