家族内の相続でもやっぱり遺言書はあったほうがよい?
ファイナンシャルフィールド / 2021年11月22日 11時30分
相続において、遺言書の存在は重要です。事前に相続人と被相続人が話し合い、納得していたと思っていても、実際相続が始まると、相続人同士もめることもあるからです。 遺言書には法的効力があることから、相続でもめた際にも原則として遺言書の内容に従って分割することになりますので、できれば遺言書を作成しておくほうが後々のトラブルを回避することにつながります。
遺言書のメリット
遺言書には、一定の要件を抑えることで法的効力を持たせることができ、以下のメリットがあります。
■遺産分割でもめることを防ぐことができる
遺言書がない場合、相続が開始した後の遺産分割は民法に基づいた内容で分割されます。被相続人と相続人との関係に基づいた法定相続割合で分けるという考え方に基づくことになりますが、財産の種類によっては分けることが難しいものもあります。
さらに、遺産分割は、法定相続人の全員の合意があって初めて成立します。したがって、法定相続人の中に1人でも納得していない相続人がいると、いつまでたっても遺産分割が成立しないということになってしまいます。
■法定相続割合に縛られない遺産分けができる
遺言書があることにより、一定の要件をふまえたうえで、法定相続割合にとらわれない遺産分けを行うことが可能です。また、その遺産分けに納得できない場合は、侵害された遺留分についてその侵害額を請求することが可能となっています。
■遺言書によって遺贈を行うこともできる
遺贈とは、遺言により法定相続人以外の他人に対して財産を与える行為です。対象は個人である必要はなく、法人や団体に対する寄付という形で行うこともできます。
ただし、個人が遺贈によって財産を受け取った場合は、相続税の対象となり2割加算となることから、遺贈することで迷惑がかからないかどうかを考えておくことも大切です。
遺言書の種類
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」そして「秘密証書遺言」の3つの種類があります。それぞれの違いについては以下のとおりです。
■自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言する人が自分で遺言内容の全文を手書きし、かつ日付や氏名を書いて署名の下に押印することにより作成されます。用紙はA4サイズと決まっており、ボールペンなど容易に消えないもので記す必要があります。
また、裏面には記載しないなどといった細かい決まりが複数あります。基本的には自筆での作成となっていますが、平成31年の民法改正によりパソコンなどで作成した財産目録を添付したり、通帳のコピーなどを添付したりすることが認められています。
作成した自筆証書遺言は、作成者が自分で保管するほか、「遺言書保管制度」を利用することで法務局にて保管してもらうこともできます。
■公正証書遺言
公正証書遺言とは、遺言する人と公証人、さらに証人2人の前で遺言の内容を口頭で伝え、それを公証人が文章にまとめることで作成します。さらに、その内容については、遺言者と証人2名に確認してもらう必要があります。そして、作成した公正証書遺言については、公証役場にて原本が保管されます。
■秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言を行う人が、遺言の内容を記載した書面に署名押印のうえ、封書に入れて封印します。公証人および2名の証人に対してその封書を提出して、遺言書であることを伝えたうえで、公証人がその封書に遺言である旨を記載して、証人2人と一緒に署名押印することで作成されます。
秘密証書遺言は、公証役場で保管するのではなく、遺言書を作成した本人が自分で保管する必要があります。
遺言書保管制度を利用しよう
遺言書保管制度とは、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度です。この制度には以下のメリットがあります。
■法務局にて適正に保管される
まず、自筆証書遺言の内容について、民法が定めた方法に基づいて作成されているかをチェックしてもらうことができるとともに、原本と併せてデータとしても保管されます。これにより、内容を改ざんされることを防ぐとともに、紛失の恐れもありません。
■裁判所の検認が不要となる
通常の自筆証書遺言の場合、相続開始後に裁判所の検認が必要となりますが、遺言書保管制度を利用することで、検認の手間を省くことができます。
■相続開始後に全国の法務局にて閲覧することができる
画像データでも保管しているため、遺言書の原本が保管されている法務局だけでなく、全国どこの法務局においても、遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付が可能です。
■被相続人の死亡時に通知が届く
遺言書を作成した被相続人があらかじめ通知を行うことを希望していた場合、その通知対象者の方(1名のみ)に対して遺言書が保管されていることの通知が届く仕組みとなっています。
まとめ
遺言書は、遺産分割協議でもめないためにも必要なものです。
自分たちは相続する財産が少ないから気にしないという方もいらっしゃるかもしれませんが、相続税対策と相続対策は異なるものであることをしっかりと理解し、遺(のこ)された方がもめることのないように、自分が誰にどの財産を残したいかといった内容を、法律で定められた方法で作成し保管しておくことも検討してみてください。
出典
(※)法務省「自筆証書遺言書保管制度」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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