働きたい高齢者のための「高年齢者雇用安定法」。企業側の取り組みとは?
ファイナンシャルフィールド / 2021年12月7日 12時10分
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老後のライフプランを考えるうえで、何歳まで働くのか、また働ける場があるのかということは重要な要素です。 2021年4月より施行が開始されている、高年齢者雇用安定法では、現在企業に義務付けられている65歳までの雇用確保に加え、70歳までの就業確保が努力義務として加わることになりました。 今回は、この改正後の高年齢者雇用安定法の内容について解説します。
高年齢者雇用安定法とは?
少子高齢化が進んでいる実態と、日本国内における人口減少問題に対応するために、経済の流れを維持する目的で、働く意欲がある高齢者に対しその能力発揮のための場を設けるとともに、その職場環境の整備を図ることを目指して制定されているのが「高年齢者雇用安定法」です。
■これまでの高年齢者雇用安定法の内容
これまでの高年齢者雇用安定法では、65歳までの高齢者に対して、企業側が働くことができる環境を整備することを義務付けるものでした。したがって企業側は、定年後も働きたいと願う従業員に対し、以下の措置を取ることが義務付けられていました。
1.60歳未満定年の廃止
企業側が定年を定める場合、その年齢については60歳以上とすることが義務付けられています。
2.65歳までの雇用確保
定年の年齢を60歳以上65歳未満に定めている企業においては、以下のいずれかの措置を講じなければならないとしています。
(1) 定年を65歳まで引き上げる
(2) 定年の制度を廃止する
(3) 65歳まで引き続き働ける制度の導入
■これらの措置を取らなかった場合の企業側の責任
これらの措置を取らなかった場合、その企業はハローワークなどから改善指導などを受けることがありました。しかし、その指導にも従わなかった企業については、勧告書が出されるほか、それでも従わない場合は企業名を公表するなどの措置が取られることがありました。
改正によって高齢者雇用安定法はどのように変わった?
今回の改正により、70歳までの雇用の機会を与えることを企業に対して求めることになりました。しかし、これは前述したように65歳までの雇用確保義務とは異なり、あくまでも努力義務とされています。
■具体的な改正内容
今回の改正により、以下のことが企業に対する努力義務として加わることとなりました。
1.定年の年齢を70歳まで引き上げること
2.定年制を廃止すること
3.70歳まで継続して働ける機会を導入すること
4.業務委託契約によって働ける制度を導入すること
5.社会貢献活動に従事できる制度を導入すること
ただし、4と5の創業支援等措置については計画を作成し、労働組合の過半数の同意を得て導入することになっています。計画書の作成においては、以下の点に注意する必要があります。
<計画作成の際の留意点>
まず、「契約の内容が一方的な押し付けになってはならない」とされています。さらに、「就業の対価についても、不当に低い額を設定してはならない」となっています。その他の主な留意点については以下のとおりです。
●個々の高年齢者の希望を踏まえつつ、個々の業務の内容・難易度や業務量等を考慮し、できるだけ過大または過小にならないよう適切な業務量や頻度による契約を締結する必要がある・納品物について、不当な受け取り拒否などを行ってはならない
●安全衛生への配慮を怠らないこと
改正における注意点
今回の改正において、企業には以下の点に注意することを促しています。
■高齢者雇用においては、その人の能力および体力などを考慮すること
もし、高齢者雇用によってこれまでとは異なる内容の職務に就く場合は、必ず教育を施すことはもちろんのこと、安全や衛生における教育も忘れずに行う必要があります。また、就業においては、高齢者が働きやすいような環境作りや、その人に体調などに合わせた柔軟な対応を行うことが求められます。
ただし、その人の体の状態によって就業不可と判断した場合については、この限りではありません。
■企業側が主体となって行うこと
人材センターや民間の転職サイトなどへの登録を促すだけでは、企業側が取り組んだとはいえません。あくまでも企業側が主体となって、高齢者の就職を確保することが必要です。
まとめ
高年齢者雇用安定法は、今回の改正により、「70歳定年法」などと呼ばれることもありますが、定年を70歳に引き上げなければならないというものではありません。今までのスキルを生かして独立・開業し、社員として行っていた仕事の一部を、業務委託契約を結んで請け負うというようなケースも用意されています。
その際、雇用関係はなくなりますが、その分働き方の自由度は増え、他の企業から業務を請け負うこともできるようになります。
このような時代の波に乗るためにも、現役時代に自分のスキルを磨くといった努力も必要です。企業側の努力ももちろんですが、自身の努力も大切だということ忘れないようにしたいですね。
出典
(※)厚生労働省「高齢者雇用安定法改正の概要」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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