母子家庭の学生が高等教育の修学支援新制度を利用する際に知っておきたいこと
ファイナンシャルフィールド / 2021年12月8日 11時40分
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高等教育の修学支援新制度によって、母子家庭の学生等、経済的に厳しいご家庭の子どもが大学等へ進学しやすくなりました。ただ、新制度ではすべての学費を賄うことは難しいため、一定額は借り入れが必要です。 その場合、無利子の第一種奨学金や母子福寡婦福祉資金の就学支度金・修学資金を利用したいところですが、利用が制限される場合があります。どのような制限があるのかポイントを解説します。
高等教育の修学支援新制度
2020年4月から文部科学省の「高等教育の修学支援新制度」がスタートしました。経済的な理由で大学等進学を諦めないように、という趣旨から、大学等の授業料・入学金の免除または減額と、日本学生支援機構の返済義務のない給付型奨学金がセットになったものです。住民税非課税世帯(第Ⅰ区分)および準ずる世帯(第Ⅱ・Ⅲ区分)の学生が対象です。
進学前に申し込む場合の本人、母(ひとり親)、中学生世帯の年収の目安は、第Ⅰ区分221万円未満、第Ⅱ区分298万円未満、第Ⅲ区分373万円未満となっています。
厚生労働省の平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告(※1)によると、母子世帯の母自身の平成 27 年の平均年間収入は 243 万円ですので、給付奨学金の対象となる学生は多いのではないでしょうか。
大学等で給付奨学生として採用された場合、支給額は私立大学(昼間部)に自宅から通学する場合、第Ⅰ区分(満額支給)は月額3万8300円、第Ⅱ区分(3分の2支給)は2万5600円、第Ⅲ区分(3分の1支給)1万2800円となります。入学金は最大26万円免除、授業料の減免は最大70万円です(第Ⅰ区分)。
なお、給付奨学金に採用されるためには、収入基準のほか、資産基準、学力基準も満たす必要があります。資産基準は、生計維持者が2人の場合2000万円未満、1人の場合1250万円未満であることが必要です。
死別による母子家庭の場合、生命保険金を受け取ることで資産基準を満たさなくなるケースもあると思いますが、その場合は預貯金を貯蓄型の生命保険に組み替えるとよいでしょう。
学力基準については(1)高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること、または(2)将来、社会で自立し、および活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること、となっています。高等教育の修学支援新制度は、学力よりも学ぶ意欲を重視する制度となっています。
ただし、奨学金の対象でない大学等に進学した場合は、給付奨学金や授業料減免等を受けることができませんので注意が必要です。
第一種奨学金との調整
給付奨学金と貸与奨学金の併用は可能です。ただし、給付奨学金の支援区分等に応じて、無利子の第一種奨学金の貸与月額が調整されますので注意が必要です(※2)。
授業料等減免または給付奨学金の支給を受けた場合における無利子奨学金の額(調整後)は、
無利子奨学金の貸与上限額(調整前)-(授業料の減免上限額+給付型奨学金の支給額)
で求めます。
例えば、私立大学に自宅から通う場合の無利子奨学金の貸与上限額は月額5万4000円です。第Ⅰ区分(住民税非課税世帯)の授業料減免額は月額5万8400円、給付額は月額3万8300円です。
減免額と給付額の合計額は9万6700円となり、無利子奨学金の貸与上限額5万4000円を超えるので、第一種奨学金は利用できません。
なお、有利子の第二種奨学金にはこのような制限がありませんので、満額貸与を受けることができます。
母子父子寡婦福祉資金との調整
ひとり親家庭を対象とした母子父子寡婦福祉資金には、教育資金として無利子の就学支度資金と修学資金があります。これら資金については、高等教育の修学支援新制度による給付型奨学金や授業料・入学金の減免を受ける場合は、貸付限度額(実際の貸付額ではない)から新制度による給付額・減免額を控除した額が貸付限度額です。
通常、合格時に入学金や授業料等を支払います。この場合、就学支度資金・修学資金は必要な額を借りることができます。
しかし、借入後に新制度による支援が決定し、入学金減免分等の還付や給付額を受けた場合は、6ヶ月以内に償還する必要がありますので注意してください(※3)。
詳しくは各自治体の相談窓口、または福祉事務所にお問い合わせください。
出典
(※1)厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」
(※2)文部科学省「高等教育の修学支援新制度に係る質問と回答(Q&A)」
(※3)厚生労働省「母子及び父子並びに寡婦福祉法施行令の一部を改正する政令の施行における母子父子寡婦福祉資金の運用上の留意事項について」
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
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