子のいない夫婦は配偶者にすべての財産を残せる? 知っておきたい法定相続人の確認方法。
ファイナンシャルフィールド / 2021年12月25日 11時40分
相続が開始したら、相続財産の分配のため相続人の範囲を確定しなければなりません。民法では、法定相続人の範囲と配分方法が定められています。子どものいない夫婦などについて、配偶者等の取り分がどうなるのか解説します。
法定相続人の範囲
法定相続人になれるのは、配偶者と血族です。 配偶者として認められるには、法律婚であることが必要で、事実婚では法定相続人として認められません。血族には、直接上下につながっている直系血族と直系から枝分かれした傍系血族があり、前者は親や子ども(養子を含む)、そして祖父母と孫などを指します。後者は、兄弟姉妹と叔父叔母に加え、いとこ(いとこ)やおい・めいが該当します。
・相続欠格と相続人廃除
もっとも、法定相続人の範囲内であっても、相続欠格や相続人廃除に該当すると、相続できません。
相続欠格とは、故意に被相続人や先順位・同順位の相続人を死亡させたり、詐欺・強迫などの犯罪行為によって被相続人が作成した遺言書の偽造や破棄をすることを指します。違法行為により自分だけ有利な立場で相続しようとすると、相続欠格扱いになるという訳です。
相続人廃除とは、被相続人に対する虐待や侮辱をした者を被相続人の意思により相続人の範囲から廃除することです。
・法定相続人の優先順位と配分の割合
法定相続人には優先順位があり、第1順位が配偶者と子ども(子どもが生存していない場合は孫)、第2順位が親と祖父母、第3順位が兄弟姉妹(兄弟姉妹が生存していない場合はおい・めい)という風に決められており、配偶者以外で自分より高い優先順位の法定相続人がいれば相続できません。
例えば、配偶者以外に第1順位の子どもがいたら、第2順位の親や第3順位の兄弟が生存していても、第1順位の配偶者と子どもしか相続できないのです。被相続人に第1順位の子どもがいない場合、第2順位の祖父母が生存していたら、第3順位の姉妹がいても配偶者と祖父母だけが相続できます。
このように順位を決められる相続人がいる場合は、被相続人との関係によってその相続分の割合が異なるので注意しましょう。第1順位の配偶者と子どもが相続する場合、配偶者が2分の1、子どもが2分の1を相続します。
子どもが複数いれば、2分の1を子どもの数で平等に割るのです。子どもが3人いたら、配偶者が2分の1、子ども1人当たり6分の1ずつになります。第1順位の配偶者と第2順位の祖父母が相続する場合は、配偶者が3分の2、祖父母が3分の1 というように配分されます。
第1順位の配偶者と第3順位の兄弟が生存していたら、配偶者が4分の3、兄弟が4分の1の相続財産を受け取れます。子どもが被相続人より先に死亡していた場合、代襲相続と言って孫やひ孫といった卑属に相続権が生じます。兄弟姉妹の場合は、おい・めいだけが生存していればおい・めいが相続します。
ただし、おい・めいが死亡していても、またおい・まためいが代襲相続することはありません。相続欠格や相続人廃除の場合も、その子どもや孫といった卑属が代襲相続できます。
子どものいない夫婦は配偶者に全財産を相続させることができるか?
子どもがいない夫婦の場合、夫婦の片方が亡くなると、法定相続人の第1順位となる配偶者だけでなく他の血族が相続できます。他に第1順位となる子どもがいなくても、被相続人の親・祖父母や兄弟姉妹が配偶者より少ない割合で相続できるのです。また、子どもがいなくても孫がいれば、代襲相続が生じるため、配偶者が孫と配分することになります。
このように、配偶者が全相続財産を法定相続できるのは、子どもだけでなく他の法定相続人が全ていない場合に限られるのです。全財産を配偶者に相続させるという遺言をしたとしても、他の血族から遺留分減殺請求されれば、法定相続分の何割かは譲らなければならないでしょう。
法定相続人の確定が重要
相続では、相続人の範囲を確定することが非常に重要です。単純に配偶者と血族が該当するというだけでは、理解が足りません。相続には優先順位があり、法定相続人の範囲に含まれていても相続できるとは限らないのです。
このほかにも、代襲相続や相続欠格・廃除さまざまな条件があるので、相続が開始する前に十分調査しておくことが大切だと言えるでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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