「確定申告はしなくて良い」と思っていても要チェック。見落としがちな節税対策とは?
ファイナンシャルフィールド / 2022年1月4日 23時0分
確定申告の時期が近づいてきましたが、自分は申告するものがないから関係ないと思っている人がいらっしゃるかもしれません。 しかし、よく確認してみると、申告の対象となっているものを見落としている可能性があります。今回は、確定申告において見落としがちな控除の内容について解説します。
医療費控除
医療費控除は確定申告の中でも多くの人が利用している制度です。年間10万円以上の医療費を支払った場合、原則としてその合計額から10万円を引いた額が所得控除の対象です。また、対象の医療費は納税者本人と生計を一にしている家族、および親族が支払ったものも合算できます。
■見落としがちな医療費控除の対象となるもの
医療費控除の対象となるものは、病院や歯医者などで受けた治療の対価として支払った費用で、原則として保険適用の対象となる治療を受けた場合の費用です。ただし、以下に挙げるものについては、医療費控除の対象です。
1.子どもの歯科矯正費用
単に歯並びをきれいにしたいなどといった矯正費用は対象とはなりませんが、かみ合わせが悪いことによって、子どもの成長過程に影響をおよぼすと判断された際の歯科矯正費用は、医療費控除の対象です。
2.レーシック手術費用
レーシック手術とは、角膜にレーザーを当てることによって、視力を回復させる手術です。
そして、このレーシック手術費用は、医療費控除の対象外だと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、目の機能を医学的な方法で回復させる治療であり、その費用は医師による治療の対価として認められることから、医療費控除の対象です。
同様に角膜矯正療法といわれる、特殊なコンタクトレンズを使用して視力を回復させる治療を受けた場合の費用も、医療費控除の対象です。
3.PCR検査費用
新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べるPCR検査の費用も、場合によっては医療費控除の対象となります。例えば、感染の疑いがあることから、医師の指示で検査を受けた場合は対象です。
また、感染していないことを明らかにする目的で受けたPCR検査費用は基本的には対象となりませんが、その検査の結果陽性だと判明し、治療対象となった場合はその検査費用も医療費控除の対象です。
(参考:国税庁「医療費控除の対象となる医療費」(※1))
上場株式などの譲渡損失の3年間繰越控除
上場株式の譲渡などにより損失が発生し、その年分の上場株式等に関わる配当所得等の金額と損益通算を行ってもなおマイナスとなっている場合は、確定申告を行うことでその翌年以降3年間にわたって繰越控除を受けることができます。
■繰越控除を行う際の注意点
繰越控除は、損益通算を行ってもなお赤字が発生している場合に利用できる制度で、損益通算ができるのはあくまでも「上場株式等の配当等に係る利子所得の金額及び配当所得の金額」です。
他の「一般株式(上場株式等を除く非上場株式や私募株式投資信託の受益権などの株式)などに係る譲渡所得等の金額」から控除はできません。配当所得については、申告分離課税を選択したものに限定されます。
また、繰越控除においては、まず他の上場株式などの譲渡所得金額から控除し、それでもなお控除しきれない金額がある場合に、上場株式などにおける配当所得などの金額から控除します。
繰越控除を受けた場合は、その後3年間株式などの譲渡がなかったとしても、確定申告を行う必要があります。
(参考:国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」(※2))
生命保険料控除
生命保険料控除も見逃しがちな控除項目の1つです。特に2012年1月1日以降に契約した保険契約と、2011年12月31日までの保険契約が混在している場合、「介護医療保険料控除」の見直しがあります。
改正前は「生命保険料控除」と「国民年金保険料控除」の2つだったのに対し、改正後は「介護医療保険料控除」が追加されています。そして、この「介護医療保険料控除」の対象となる保険契約が、医療保険やがん保険などです。
2012年1月1日以降に医療保険やがん保険など「介護医療保険料控除」の対象となる保険に加入している場合は、控除の見落としがないかどうかしっかり確認するようにしましょう。
(参考:国税庁「生命保険料控除」(※3))
扶養親族の見落としに注意
扶養控除については、給与所得者であれば年末調整で行うことができます。しかし、その控除に漏れがあった場合などは、確定申告を行うことで扶養控除額が増し、納税額を削減できます。
扶養控除の対象となる扶養親族とは、「納税者と生計を一にしていること」や、「その人の年間所得金額が48万円以下であること」が要件となっています。
しかし、この「生計を一にしていること」の要件について見逃しているケースがあります。生計を1つにしているとは、あくまでも同居していることが要件ではありません。
離れて暮らしていても、生活費などの仕送りをしていれば、扶養親族の対象となります。したがって、離れて暮らす親に対して毎月なんらかの生活費を送っている場合で、他の要件に当てはまる場合は、その親も扶養親族となり、扶養控除の対象です。
(参考:国税庁「扶養控除」(※4))
まとめ
前述した控除以外にも、地震保険料控除など見落としがちなものがあります。所得控除にはさまざまな種類があり、年末調整だけでは気づかないものもあるでしょう。
その際には確定申告を行うことで、最終的な所得税額が計算され、払いすぎている所得税との差額分については還付してもらえます。また、確定申告をしていなかったことによる還付申告は、およそ5年前までさかのぼって行うことができます。
今一度、見落としている控除はないかどうかチェックしてみましょう。
(※1)国税庁「医療費控除の対象となる医療費」
(※2)国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
(※3)国税庁「生命保険料控除」
(※4)国税庁「扶養控除」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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