社会福祉協議会の不動産担保型資金(リバースモーゲージ)の3大リスク
ファイナンシャルフィールド / 2022年1月4日 11時40分
社会福祉協議会の不動産担保型資金(リバースモーゲージ)の3大リスクは、「長生き」「金利変動」「担保価値の下落」だと考えられます。 本稿では社会福祉協議会の不動産担保型資金(リバースモーゲージ)の3大リスクについて、一般的な住宅ローンとの比較について考えてみたいと思います。
長生きリスク
住宅ローンは返済を続けるうちに、借り入れした元本と利息の残高が減っていきます。
しかし、社会福祉協議会の不動産担保型資金(リバースモーゲージ)では、借り入れた元本と利息は亡くなった後に一括返済することになっていますので、時間とともに残高が減っていくということはありません。むしろ、借り入れた元本と利息を死後に一括返済する、ということは亡くなるまでの間、借り入れる元本と、それに伴う利息が延々増え続けることにもなります。
ただし、社会福祉協議会の不動産担保型資金(リバースモーゲージ)の借り入れには限度額があり、その限度額とは担保となる土地評価額の70%です。借り入れの限度額に達したとしても、担保となる住まいに住み続けることができます。しかし、以後は借り入れをすることができず、利息のみが発生し続けることになります。
これが社会福祉協議会の不動産担保型資金(リバースモーゲージ)の「長生き」リスクです。
金利変動リスク
住宅ローンの場合、住宅ローンを選ぶ時に固定金利か変動金利を選ぶことができます。中でも、フラット35に代表されるように、35年もの長きにわたって固定金利が続く住宅ローンもあります。
また、住宅ローンの場合、将来を見据え、長期金利と固定金利とどちらが有利なのか判断に迷う場合、長期金利と固定金利の両方を利用するという方法も考えられます。
しかし、社会福祉協議会の不動産担保型資金(リバースモーゲージ)の場合、利子は年利3%または毎年4月1日時点の長期プライムレートのいずれか低い利率となっており選択の余地がありません。2020年8月12日以後、長期プライムレートは1.00%です。
社会福祉協議会の不動産担保型資金(リバースモーゲージ)の利率は3%が上限ですが、この上限に達するまで利率が上がる余地があります。もちろん、下がる可能性もあります。
利率が下がる分には構わないと思いますが、利率が上がれば当然支払う利息の額が増えることにもなります。
「銀行の預金金利が上がらないのに」と思われるかもしれませんが、2016年7月8日の長期プライムレートは0.9%でしたので、その時に比べれば、今は長期プライムレートが上がったといえます。
これが金利変動リスクです。
担保価値の下落リスク
担保価値の下落とは、担保となる不動産の評価が下がるリスクです。住宅ローンでも、もちろん購入した不動産には抵当権が設定され、借り入れた金融機関の担保となります。しかし、返済を開始して以降、ローン契約がそのままであれば完済まで担保となっている「不動産の再評価を行う」ということはないでしょう。
しかし、社会福祉協議会の不動産担保型資金(リバースモーゲージ)では、3年ごとに不動産の再評価を行います。借り入れを続けることができる否かを判断します。この再評価の費用は利用者が負担しなくてはなりません。
つまり、利用者が費用を負担して、不動産の再評価を受けたところ「担保となる不動産の評価が下がったことにより、借り入れの限度額に達してしまった」という可能性もないとは言い切れません。
金利が下がると払う金利の額が減るのがメリットですが、担保となる不動産の評価が下がってしまうと、借り入れの限度額も減ってしまうデメリットが生じてしまいます。
これが担保価値の下落リスクです。
まとめに代えて
社会福祉協議会の不動産担保型資金(リバースモーゲージ)の3大リスクについて、住宅ローンと比べながら考えてみました。金利変動リスクと担保価値の下落リスクは、いずれも長生きすると、それら2つのリスクに遭遇する可能性が高いといえます。
また前述のとおり、リバースモーゲージは亡くなった時に借り入れを精算しますので、それまでの間は金利を払い続けることになります。つまり、長生きをすると金利の累積が増えていくことになるのです。
ですので、長生きが想定される場合、借り入れの月額を少なくしたほうが良いかもしれません。あるいは、ある程度お年を召されてからのご利用を検討したほうが良いかもしれません。
慣れた住まい、終の棲家に住み続けながら現金を調達するのに有効なのが社会福祉協議会の不動産担保型資金(リバースモーゲージ)です。しかし、リスクも十分、踏まえながら利用を検討しましょう。
(出典)
神奈川社会福祉協議会「不動産担保型資金(リバースモーゲージ)」
東京社会福祉協議会「不動産担保型生活資金 貸付のごあんない」
日本銀行『長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降』
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役
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