働きながら親を介護…知っておきたい両立を支援する制度とは?
ファイナンシャルフィールド / 2022年1月4日 13時10分
超高齢化社会を迎えている日本にとって、介護は切実な問題です。昔とライフスタイルが変わり、核家族化してきたこともあって、介護を受ける側が家に居ながらの介護は難しくなってきています。また、最近では女性の社会進出が進んできたこともあり、男性そして女性ともに働きながら親の介護を続けていくことが求められるケースも増えています。 しかし、働きながら介護を続けていくのはなかなか容易ではありません。このような問題に対して、現在、国による支援制度が設けられています。
介護休業
働きながら要介護状態の家族を介護するための支援制度として、「介護休業制度」が設けられています。ここでいう要介護状態とは、「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、 2 週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある」ことをいいます。介護保険制度の要介護認定の条件とは異なりますので注意してください。
■制度を利用できる対象者
介護対象となる家族を介護する労働者(日々雇用を除く)が利用できます。期間を定めて雇用されているパートやアルバイトの方は、申し出る時期によって条件が異なります。
●入社1年以上であること
●取得予定日から起算して、93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。
●取得予定日から起算して、93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。
■介護の対象となる家族
●配偶者(事実婚を含む)
●父母
●子
●配偶者の父母
●祖父母
●兄弟姉妹
●孫
■利用できる期間
対象家族1人につき3回まで(通算93日まで)
介護休業給付金
前述の介護休業を利用した場合、公共職業安定所に申請することで介護休業給付を受けることができます。給付を受けるための要件は以下のとおりです。
■給付要件
まず、家族を介護するための休業をした方であることが要件です。そのうえで以下の要件を満たしている必要があります。
●介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が1年以上あること。
●介護休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12ヶ月ない場合であっても、当該期間中に本人の疾病等がある場合は、受給要件が緩和され、受給要件を満たす場合があります。
そしてそのうえで、
●介護休業期間中のそれぞれ1ヶ月ごとに、休業開始前の1ヶ月あたりの賃金の8割以上が支払われていないこと
●就業している日数がそれぞれの支給単位期間(1ヶ月ごとの期間)ごとに10日以下であること。
■給付金額および給付期間
休業開始時賃金日額×支給日数×67%
で計算された額が、93日を限度に3回までに限り支給されます。
(参考:厚生労働省「介護給付」(※1))
介護休暇
介護休業とは別に、必要な時だけ休暇を取れる制度が介護休暇です。利用できる要件は介護休業とほぼ同じです。
■取得できる日数および単位
対象家族が1人の場合:年5日まで(対象家族が2人の場合は年10日まで)で、1日もしくは時間単位で取得できます。
短時間勤務制度の利用
短時間勤務の内容は会社によって異なりますが、会社は介護を行う労働者のために、以下のいずれかの制度を設ける必要があります。
1.短時間勤務制度
2.フレックスタイム制度
3.時差出勤制度
4.介護費用の助成措置
■利用できる期間および回数
これらの制度は、対象家族1人につき、利用開始の日から連続する3年以上の期間で2回以上利用できます。
所定外労働時間の制限
残業免除ともいわれ、会社は従業員が介護のために申請した場合は、残業を免除する義務があります。
■利用できる期間
1回につき、1ヶ月以上1年以内の期間(回数の制限はありません)。
時間外労働時間の制限
従業員が介護のために申請した場合は、会社は、1ヶ月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせてはならないことになっています。
■利用できる期間
1回につき、1ヶ月以上1年以内の期間(回数の制限はありません)。
深夜業の制限
従業員が介護のために申請した場合は、会社は深夜に働かせてはならないことになっています。
■利用できる期間
1回につき、1ヶ月以上 6ヶ月以内の期間(回数の制限はありません)。
(ここまでの制度における参考資料:厚生労働省「介護休業制度」(※2))
まとめ
介護を理由とする離職を防ぐため、現在では仕事と介護を両立するためのさまざまな支援制度が設けられています。また、これらの制度の導入は事業主の義務とされており、事業主は介護のための制度を利用する従業員に対して不当な扱いをしてはならないとされています。
介護にあたっては、その状態によっては自治体への申請やケアマネジャーとの話し合いなどが必要となります。また、介護認定を受けてサービスが利用できるまでにはかなりの時間がかかります。その間は自分たちで介護を行うしかなく、仕事をしながらの負担はかなりのものになるでしょう。
介護に集中できるよう、さまざまな制度が用意されていますので、介護する家族の状態、そして自身の仕事の状況に合った制度を選んで利用しましょう。
(※1)厚生労働省「Q&A~介護休業給付~」
(※2)厚生労働省「介護休業制度」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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