いざという時の預金口座凍結対策・予約代理人制度
ファイナンシャルフィールド / 2022年1月14日 10時20分
![いざという時の預金口座凍結対策・予約代理人制度](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_126316_0-small.jpg)
老いた親の預金口座が凍結されて困ったという話がときどきあります。突然の不幸が訪れることもあれば、認知症状態が進行したため、長い取引のある銀行から成年後見制度の利用を求められるケースもあります。 こういったケースに対応すべく、2021年に全国銀行協会が指針を公表し、メガバンクなどでも対応するケースが見られています。今回は、預金口座凍結の対策について学んでみましょう。
預金口座が凍結される場合
預金口座の凍結はそれぞれの金融機関の判断で行われますが、主に次の2つの場合です。
1)口座所有者が死亡したとき
2)口座所有者が正常な認知・判断能力がなくなったと金融機関が判断したとき
1)の本人死亡の場合は、家族が届け出なければ金融機関が情報を入手するまでの間、口座は使用可能ですが、家族は死亡の届け出をしなければなりません。
2)の認知能力の後退の場合は、判断は金融機関の窓口によりますので、初期段階では取引継続される場合もあるかもしれません。
預金口座が凍結された場合の当座の対処法
本人死亡によって預金口座が凍結される場合は、相続手続きを経ることが原則ですが、相続手続きよりも先に、葬儀費用や当面の生活費に充当する資金が必要になることも多いため、2019年から一定の条件の下で「預貯金の払戻制度」(※1)が開始されています。凍結口座からの預貯金払戻制度として以下の2つの方法があります
・家庭裁判所の判断によらない預金払戻制度(一金融機関に付き上限150万円まで)
各相続人が一定額を相続預金から払い戻すことができます。必要書類は、故人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本などです。
・家庭裁判所の判断による預貯金の仮払い(限度額はなし)
家庭裁判所への申し立てが認められた場合に、相続預金の払い戻しを受けることができますが、弁護士等への依頼が必要となると想定されます。
認知症による預金凍結を防ぐための方法
口座名義人の認知症による口座凍結を防止するためには、以下の方法が考えられます。
・代理人登録と代理人カードの発行による預金引き出し
本人が健常なときに代理人登録を行い、代理カードの発行を受けて預金引き出しをすることは一般的に行われています。しかしながら、本人の認知能力が大きく後退した場合は、引き続き代理人カードを使用することは、カード発行時とは状況や前提が変わっているので問題があると言えます。
・成年後見制度の利用
本人の認知能力が大きく後退した場合は、本来は、成年後見制度を利用するのが良いのですが、さまざまな課題もあって、この制度の利用は低率に留まっています。
・予約型代理人制度
このような状況下で、全国銀行業協会は、2021年に「金融取引の代理等に関する考え方…」という文書を発表し、予約型代理人制度を実施する際の考え方をまとめました(※2)。この指針に基づいて、一部のメガバンクからは具体的な予約型代理人制度が公表されました。その概要とプロセスは以下の通りです(※3)。
(1)事前に代理人の予約を行う。
(2)引き続き本人が取引を継続する。
(3)本人による取引継続が困難になる(認知症発症、判断能力低下など)。
(4)代理人が診断書を提出することにより、予約した代理人による取引継続ができる。
なお、指定できる代理人は、原則配偶者または2親等内の親族で、代理人ができる取引は円預金の入出金・解約と運用性商品の売却・解約等です。
代理人カードと予約型代理人登録の違い
一般的には認知症状態でもそのまま代理人カードが使われていることもあるようですが、予約型代理人カードの制度は、認知症状態の際には診断書提出により代理権が認められているため、適正な取引と判断されます。
今後は、先行銀行の状況を見ながら他の金融機関の追随が見込まれるのではないでしょうか。
まとめ
急な事故や認知症の進行に伴う預金口座の凍結に対処する方法として、他にも生命保険の利用や信託制度の利用によっても対応が可能です。
ただ、預金口座が凍結されてしまってからあわてることのないように、普段から万が一のことを考えておくのも大切なことではないでしょうか。
出典
(※1)全銀協 遺産分割前の相続預金の払戻し制度
(※2)全銀協 金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会 福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)PDF
(※3)三菱UFJフィナンシャル・グループ 「予約型代理人」サービスの導入について
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP
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