令和4年1月1日から開始された「雇用保険マルチジョブホルダー制度」とは?
ファイナンシャルフィールド / 2022年1月17日 23時30分
![令和4年1月1日から開始された「雇用保険マルチジョブホルダー制度」とは?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_126604_0-small.jpg)
令和4年1月1日から新たに「雇用保険マルチジョブホルダー制度」がスタートしました。 雇用保険といえば、労働者が失業した場合の基本手当や高年齢雇用継続基本給付金など必要な給付を受けたり、再就職のために教育訓練給付などで援助する制度ですが、近年では65歳以上になっても働く方も多いため、それらの方々を支援する新制度としてスタートしたのが雇用保険マルチジョブホルダー制度です。 ここでは、その概要について確認してみたいと思います。
雇用保険の適用条件
これまでの雇用保険制度では、複数の事業所で勤務していた場合であっても、主たる事業所における労働条件が週所定労働時間20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みなどを満たすことが適用条件とされていました。
高齢者となって勤務する場合には、1つの事業所にフルタイムで勤務するだけでなく、複数の事業所で短時間の勤務を行うケースもあるため、雇用保険の適用条件を満たさない場合も多くありました。
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者を対象に、そのうちの2つの事業所での勤務を合計して一定の条件を満たす場合、特例的に雇用保険の被保険者となることができる制度です。この適用を受けた被保険者を「マルチ高年齢被保険者」といいます。
マルチ高年齢被保険者の適用要件
マルチ高年齢被保険者となるためには、労働者が以下の要件を全て満たすことが必要となります。
(1)複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
(2)2つの事業所(1つの事業所での1週間の所定労働時間が5時間以上、20時間未満)の労働時間を合計して、1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(3)2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
通常の雇用保険の資格に関する手続きは事業主が行っていますが、雇用保険マルチジョブホルダー制度の場合は、本人がハローワークに申し出をすることになります。申し出を行った日からマルチ高年齢被保険者となるため、過去にさかのぼって被保険者となることはできません。
また、当然ながら、雇用保険の被保険者として資格を取得した日から雇用保険料の納付義務が発生します。
失業した場合の給付例
マルチ高年齢被保険者の方が失業した場合、一定の要件を満たすことで高年齢求職者給付金を一時金として受給することができます。
この場合、上記のマルチ高年齢被保険者の要件(2)の2つの事業所のうち、1つの事業所のみを離職したときでも給付の対象となります。ただし、離職する日以前の1年間で被保険者期間が通算6ヶ月以上あることが要件となります。
高年齢求職者給付金の給付額は、原則として、離職の日以前の6ヶ月に支払われた賃金の合計額を180で割って賃金日額を算出し、その50%~80%となる「基本手当日額」の30日分(被保険者期間が1年未満)、または50日分(被保険者期間が1年以上)です。
ただし、離職日以前6ヶ月の賃金の合計に当たって、2つの事業所のうち1つのみを離職した場合には、離職した方の事業所からの賃金だけが対象となります。
まとめ
令和4年4月1日からは年金制度改正法が施行されます。雇用保険マルチジョブホルダー制度を含め、高齢者が元気なうちは働ける環境(働かざるを得ない環境)の整備が進められています。われわれ一人ひとりも、それぞれの年齢や家庭環境などに応じて、自らの労働と生活のバランスを考えていく必要があるでしょう。
なお、マルチ高年齢被保険者の申し出を行ったことを理由に、事業主が解雇や雇い止め、不利益となる労働条件の変更などの取り扱いをすることは禁止されています。もし不安なことなどがあれば、お近くのハローワークに相談しましょう。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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