ファンドラップ。すべて任せるのは便利だがコストに注意を!
ファイナンシャルフィールド / 2022年2月16日 10時30分
主力の証券会社が提供するメニューに、比較的高額の資金を一括運用する「ファンドラップ」という仕組みがあります。顧客からまとまった資金を一括して預かり、株式、債券、REITなどに投資するもので、2010年以降、資産残高が増加傾向にあります。 お任せのため日々の株価動向を気にしなくてすむ半面、コストがかかることが気になります。 (※2022年1月時点の情報です)
まとまった資金を一括運用する仕組み
ファンドラップに預ける資金は、ほとんど300万円以上の金額です。退職金や積み立てた老後資金をこれに充てている人もいらっしゃいます。退職金が手に入ったが、銀行に預けても利息は期待できないし、さりとて株式投資や外貨運用なども自信がない方の受け皿として、このファンドラップを検討する方もいらっしゃるでしょう。
大手証券会社や大手銀行が窓口となるため、一任契約でも信頼はできます。まとまった資金を、国内株式、海外株式、国内債券、海外債券の各分野に、一定期間分散投資をすることで成果を出す仕組みです。
投資する方の希望がリスク志向の方針ならば、海外株式や国内株式中心の運用となり、安全志向であれば、債券中心の運用になります。多くの場合、証券会社ごとに、およそ5~8程度の資産配分パターンを決めています。契約の段階で、契約者の意向やリスクへの考えを証券会社で聞き取り、運用を開始します。
運用の実際は、例えば「トヨタ自動車」株や「米国国債」などを、個別具体的に購入するのではありません。証券会社や投信運用会社が作成し販売する、株式や債券などを基本とした投資信託で運用します。
そのため、運用実績についても、各証券会社により運用実績に差がつくことも考えられますが、実績自体の公表がないため、各ファンドラップの比較は簡単にはできません。
主な証券会社のサービス内容
証券会社ごとに、ファンドラップの名称、運用方法、最低預託金額も異なります。
野村證券は、最低預託金が500万円からのバリュー・プログラムと、1000万円からのプレミア・プログラムがあり、どちらも資金配分のパターンが7類型あります。為替ヘッジの有無を選択でき、資産配分の見直しも3ヶ月ごとにできます。手数料は約0.6~1.8%で、このほかに運用金額に対し、固定または成果に応じた信託報酬がかかります。資産配分の見直し時に一定金額を取り崩し換金ができます。
大和証券は、最低預託金が、300万円からの標準のファンドラップと、3000万円からのプレミアム・ファンドラップがあります。資金配分のパターンは、標準が5類型、プレミアムが7類型と異なっています。資産配分の見直しはどちらも年に1回だけで、その時点で定期取り崩しも可能です。手数料は、標準が約1.6%ですが、プレミアムは約1.0~1.8%です。信託報酬も運用実績に応じてかかります。付帯サービスとして、定期積立や相続時受取人指定などを行うことができます。
みずほ証券は、最低預託金500万円からのファーストステップと、1000万円からのファンドラップがあります。資金配分のパターンは5類型で、資金配分の見直しは3ヶ月ごとに可能です。手数料は、500万円コースが約1.7%、1000万円コースが約0.9%です。手数料とは別に信託報酬もかかります。
そのほかの証券会社も、ほぼ3社と類似した仕組みのファンドラップを提供しています。預ける際の最低金額や手数料などを確認・検討の上、委託する会社を選択してください。
メリットは手間がかからないこと
ここ数年ファンドラップの預かり残高も増加傾向で、残高合計も約10兆円超になっていると推定されます。各証券会社も契約獲得に力を入れており、今後も増加する見込みです。
ファンドラップを利用する際のメリットは、比較的多額の自由になる資金があり、事細かな取引は面倒だと考える方には、手間いらずの利用しやすい仕組みであることです。長期委託が基本のため、日々の株価などを見ながら、一喜一憂することはしないですむからです。例えば、運用方法を海外株式中心に変更したい場合は、定期見直し時期に変更可能です。
退職金を2000万円受け取った方が、当面使う予定がない1000万円を、これに投資することは有力な選択肢です。銀行に預けても利息が付かない、しかし特定の銘柄を売買する自信がない、と思えば利用価値があるかもしれません。
運用実績についても、定期的に通知してくれます。もちろん元本保証ではありませんが、リスクを抑えた資金配分をして、長期保有を検討することも可能です。
デメリットはコストがかかること
ファンドラップは「専門家が運用」「プロに任せる」といっても、投資家個人の意向に沿って運用担当者が付き、特定株式や特定債券の購入を実行するわけではありません。ここが億単位の資金運用を基本とする「プライベートバンキング」との違いです。
ファンドラップのデメリットは、やや割高の手数料です。少なくとも契約時に1%前後の手数料に加えて、運用資産額に応じて毎年0.5%程度の信託報酬を払うことになります。例えば1000万円のファンドラップを1%の手数料で契約すると、まず10万円分がすぐに差し引かれる計算です。
手数料などの体系もかなり複雑です。各証券会社が、通常の株式売買時の手数料値下げに動いている中で、やや逆行しているかと思われます。
そのためリスクを取ることを嫌い、債券中心に運用していたのでは、手数料が重荷となり、資産が目減りする可能性もあります。信託報酬も、各証券会社に多少の差があります。具体的に何が信託報酬の対象になるかも確認することをお勧めします。
個人が個別に投資信託を購入する場合、ネット証券などを利用すれば、手数料はほとんどかかりません。ファンドラップでは手数料が発生するため、利益の幅は少なくなります。契約前にサービス内容とかかるコストをよく把握して、利用を検討したいものです。
出典
野村證券ホームページ
大和証券ホームページ
みずほ証券ホームページ
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
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