株式市場は乱高下中でも「高配当株」は狙い目?
ファイナンシャルフィールド / 2022年2月16日 10時30分
日本の株式市場は、オミクロン株の拡大と米国金利の上昇機運が相まって、年明け以降乱高下が続き、不安定な状態が続いています。 その中にあって、株主への配当を厚くしている企業には、一定の買い注文も入り、株価の下支えにある程度貢献しています。すでに高配当を実施している、今後増配が期待できる、といった企業が注視されつつあります。 (※2022年2月2日時点の情報です)
日本株の配当水準は向上した?
ここ数年、日本企業も株主重視の政策を推進し、株主優待で個人投資家の関心を集めるだけでなく、これまで海外企業に比べて低い水準だった「配当」を重視する傾向が強くなってきました。
特に海外の投資家や投資ファンドなどから、日本企業は欧米企業と比べ、株主への還元を軽視しているとの指摘が長く続いてきたため、日本企業も配当政策を重視するようになりました。
もちろん配当額は少なくても、成長を続け株価上昇が期待される企業には、投資家の関心が集まっていましたが、最近では、配当重視の企業への期待も強くなる傾向が見受けられます。
高成長企業の株価がさらに上がっていけば問題はないのですが、現在のような株式市場の乱高下が続けば、高値で買ったために「株価は値下がり、配当はわずか」といった事態に見舞われかねません。そうであれば、比較的安い価格で買い「値下がりしても高配当が期待」できる企業のほうが望ましくなります。
「配当利回り」は投資判断の材料に
投資の目安として投資家が注目するのが「配当利回り」です。1年間の配当総額を、現在の株価で割った数値です。
東京証券取引所に上場している銘柄の配当利回りは、平均で2%程度ですから、4%の配当利回りならば高配当銘柄といえます。5%を超える配当利回りであれば、申し分はありません。3月末決算の企業が日本では最も多く存在しますので、株価動向をみながら銘柄を選択できます。
配当は企業活動により得た利益を、出資者である株主に対して配分することです。その配当の水準を示す「配当利回り」は、日々変動します。例えば、1株当たり年間50円配当をしている企業があり、ある時点の株価が2000円だとすると、
50÷2000=00.25
となり、その時点の配当利回りは、2.5%です。東証上場企業の平均より少し上の数値です。投資額に対して、どのくらい還元されるかをみるのに適しています。
ここで注意したいのは、もし2000円の株価が1000円にまで下落したとすると、配当利回りは、5.0%に上がり、非常に高い利回りになります。株価下落の要因が外部環境の変化によるもので、企業業績が好調であれば、株式購入のチャンスになるかもしれません。
ただし、企業業績の悪化が原因で株価が下がっていることも多く、配当利回りが高くなったといって、歓迎はできません。
逆に、かつては株価が安かったために、5%近い高配当でしたが、業績が好調で株価が急上昇したために、配当利回りが3%台に下がってしまった企業は、成長性が高いとみてとれます。
こうした企業は、配当利回りが悪くても期待がもてるかもしれません。業績が好調であれば、今後の増配も期待できるからです。
また現在の配当利回りは3%台前半の企業でも、長期にわたり毎年配当を増額し続けていれば、かなり好感をもてます。実際は、配当利回りだけでなく、増配実績や企業業績の推移にも注目しておく必要があります。
「配当性向」で企業の姿勢がわかる
もう1つ配当を考える際の指標が「配当性向」です。これは、企業側が自社の配当に対する積極姿勢をアピールするときによく使います。年間に企業が稼いだお金である「純利益」に対して、「配当総額」がどの程度を占めるかという数字です。
この数値が高いほど、出資者である株主を重視しているかを測ることができます。
例えば、この数値が40%を超えている企業や、毎年1~2%ずつでも配当性向を上げている企業が、投資家からみれば堅実で好感がもてる企業になります。
日本の企業の多くは、これまで不況時に備え、純利益の多くを内部留保に回してきました。そのため内部留保の額が、多くの企業で大きく積み上がっています。
最近、上場企業の姿勢が厳しく見られるため、投資家に還元する流れが生まれつつあります。「配当利回り」と「配当性向」を見ながら、投資したい銘柄を選択したいものです。
5%を超える配当利回りの企業
東証に上場している時価総額が多い企業の中でも、高い配当利回りを実施している企業は多数あります。
例えば、配当利回りが5%前後の企業として、日本たばこ産業(JT)、長谷工コーポレーション、武田薬品工業、ENEOS(エネオス)、コニカミノルタ、住友商事、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、日本郵政、野村證券、ソフトバンクなどがあり、なかには9%を超える企業(日本郵船、商船三井)もあります(※2022年1月末時点の情報です)。業種では、建設、鉄鋼、金融、卸売(商社)、通信、海運などに、高配当企業が多くみられます。
注意すべきは、高配当企業の中に、以前は5%台の配当利回りではなかったのに、株価の値下がりにより、結果として高配当になった企業も含まれていることです。
株価が下がる中での配当額の維持は、投資家重視の姿勢ともみえますが、一概に高い配当利回りだけで判断するのではなく、同時に、他の指標にも着目したいものです。
現在の日本は超低金利時代が続いており、定期預金に預けていても資産は増えません。好業績企業の株式を安く購入し保持することで、安定した配当収入も得られるかもしれません。
「貯蓄から投資へ」という流れに乗るよい機会と考えられます。特に現在の株価が安定し、株式の購入単位が10万円以下ですむ企業もあり、少ない投資額で株式購入が可能なケースもあります。
ただし、投資は自己責任です。安易に行うことはせず、慎重に検討しましょう。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
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