「プライム、スタンダード、グロース」。証券取引市場の構造が変わる!
ファイナンシャルフィールド / 2022年3月14日 11時30分
![「プライム、スタンダード、グロース」。証券取引市場の構造が変わる!](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_132330_0-small.jpg)
「東証1部」「東証2部」「マザーズ」など、長年聞き慣れている証券取引市場の区分が2022年4月より変更となります。 これらの名称は、あまりにもわれわれの認識のなかに定着している呼び名であるため、変更後に新たな市場区分が定着するまでには、少し時間を要するかもしれません。 ここでは、証券取引市場の現状の市場区分と変更後の市場区分の特徴や、変更後における影響などについて確認してみたいと思います。
現状の市場区分
現状、日本には東京証券取引所(東証)をはじめ、札幌(札証)、名古屋(名証)、福岡(福証)の4つの証券取引所があります。また、過去には2013年に東京証券取引所と大阪証券取引所が経営統合され、日本取引所グループ(JPX)として、大阪取引所はデリバティブに特化した取引所となりました。
東京証券取引所には、市場第1部、市場第2部、マザーズ、JASDAQスタンダード、JASDAQグロースの5つの市場区分が設けられています。
しかし、おのおのの市場区分のコンセプトが曖昧であるなどの課題があり、金融庁の金融審議会において再編の議論が続けられていました。特に、市場第2部、マザーズ、JASDAQについては、その位置付けが重複していることが問題とされていました。
東京証券取引所の株式時価総額の構成は図表1のとおりとなっており、市場第1部が全体の約97%を占めています。
図表1
東京証券取引所の株式時価総額(2022年1月31日時点 単位:百万円)
※日本取引所グループホームページより筆者作成
2022年4月以降の市場区分
2022年4月からの見直しによって、東京証券取引所の市場区分は「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つとなります。それぞれの新市場のコンセプトは、日本取引所グループにより図表2のように示されています。
図表2
※日本取引所グループ 「市場区分見直しの概要」より筆者作成
また、それぞれの市場への上場基準として、流動性、ガバナンス、財政状態・経営成績、事業計画の基準が設けられています。
東京証券取引所では上場企業に対して、2021年12月30日を期限にどの市場に上場するか選択を求めており、2022年1月11日にその結果を公表しています。結果によると、プライム市場を選択した企業が1841社、スタンダード市場が1477社、グロース市場が459社となっています。
2022年4月以降の影響
新市場区分の開始以降に、一般投資家にも影響が及ぶ可能性のあるものとして、相場指標への影響があげられます。
最近では、iDeCoなどの普及に伴い、特にインデックス投資が主流となっており、ベンチマークや運用対象として相場指標が重要視されています。
例えば、代表的な指標のひとつに東証株価指数(TOPIX)がありますが、この指標は東証第1部に上場されている全銘柄の時価総額を指数化したものです。
今回の再編によって新たな3つの市場区分となるため、TOPIXを構成する東証第1部の区分がなくなり、TOPIXの構成銘柄を見直ししていく必要があります。
具体的には、新市場区分への移行日である2022年4月4日の構成銘柄は、前営業日時点と同じ構成銘柄とするとされています。その後、株式時価総額基準などを満たさない銘柄等については、段階的にその構成比率を低減し、2025年1月末には除外されることになります。
なお、前述した今後の市場の選択について、選択先の上場基準を満たさない企業がいまだ多くあります。
例えば、プライム市場を選択した1841社のうち、上場基準に適合していない企業は617社となっています。この場合には、新市場区分への上場維持基準の適合に向けた計画書の提出が必要となり、その後も適合するまで進捗状況の開示が求められます。
まとめ
身のまわりのさまざまなモノの名称などが、「ヨコモジ」に変化していくのは世の常でしょう。
「東証1部、2部」など、長い間慣れ親しんできた呼び名が変わることには一抹の寂しさも感じますが、今後も常に知識をブラッシュアップしなければいけないと思った次第です。
出典
日本取引所グループ
日本取引所グループ 市場区分見直しの概要
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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