「ゆとりある老後」と「ふつうの老後」。準備しておく資金にどのくらいの差がある?
ファイナンシャルフィールド / 2022年3月17日 11時40分
老後をどのように暮らしたいかは、人それぞれで異なります。普通の老後を送りたいと思う人もいれば、ゆとりのある老後を送りたいと思う人もいるでしょう。 普通の老後を送る場合と、ゆとりのある老後を送る場合で、準備しておく資金にはどのくらいの差が生じるのでしょうか?
老後の見込み収入額
老後資金を考える際に必要なのは、まずどのくらいの収入があるのかを把握することです。
そして、生活を送るうえで不足額が発生する場合は、その金額を準備しておかなければなりません。
■老後の平均収入額
総務省の家計調査報告(2020年)(※1)によると、65歳以上の無職夫婦世帯の公的年金収入平均額は約22万円でした。
ただし、これは老齢基礎年金そして老齢厚生年金の合計額であり、人によってはもっと少ない額になる可能性もあります。
ちなみに、65歳以上の厚生年金受給額の平均は、男性で月額約17万円、女性だとそれよりも少ない月額約11万円(※2)(1万円以下四捨五入)となっています。
夫婦共働きであれば、この額に老齢基礎年金(月額約6万5000円(2021年度))が加算されますので、公的年金収入額は夫婦合わせて約41万円です。
また、片働き世帯で妻が専業主婦だった場合、夫婦合わせて月額約30万円の公的年金収入があることになります。
しかし、企業での雇用経験がない自営業者夫婦の場合は老齢基礎年金しか受給できませんので、夫婦合わせた公的年金収入額は月額約13万円となります。
このように、現役時代の働き方によって、将来受け取れる年金額にかなりの差があることを知っておきましょう。
普通の老後を送るための生活費は?
では、老後に必要となる生活資金はどれくらいなのでしょうか?
生命保険文化センターの調査(※3)によると、夫婦合わせた最低日常生活費は、約22万円となっています。
ただし、分布図をみると、20万~25万円が必要と答えた割合が最も多いことから、普通の老後を送るためには毎月約25万円必要だと考えてもいいでしょう。
そうなると、公的年金収入の平均額である約22万円に3万円不足することが分かります。
もし、65歳でリタイアしたとすると、その時点での平均余命は男性で約16年、女性は約22年(※4)です。毎月3万円の不足額を25年分準備すると、900万円です。
普通の老後を送るためには、65歳時点で約1000万円の資金があればよいといえるでしょう。
ただし、これはあくまでも公的年金収入が平均値であった場合です。もしも夫婦ともに自営業者だった場合、公的年金収入は2人合わせて13万円となり、普通の生活を送るための生活費とされる25万円と比較すると12万円不足することになります。
そして、同様に65歳でリタイアし、その後25年間の不足分を補うためには、65歳時点で約3600万円の資金が必要となります。
ゆとりのある老後を送るための生活費は?
生命保険文化センターの同調査では、最低日常生活費とあわせ、ゆとりのある老後を送るための上乗せ額も発表されており、その額は約14万円です。
つまり、最低日常生活費の22万円に14万円を合わせた36万円が、ゆとりのある老後を送るために必要な生活費といえます。
これだと、平均的な公的年金収入である22万円と比較すると14万円不足することになり、老後の25年間の不足分を考えると約4200万円が必要だということになります。
■普通の老後を送るための生活費との差
平均的な公的年金収入者であれば、ゆとりのある老後を送るための生活費と普通の老後を送るための生活費との差は、約3200万円です。
ただし公的年金収入が平均よりも上回っている場合は、この額よりも少なくなりますし、平均よりも下回っている場合はさらなる準備が必要になります。
また、夫婦2人世帯なのか単身者世帯なのかでも異なります。あくまでも、夫婦で平均的な公的年金収入である22万円が確保できており、そのうえでゆとりのある老後を送りたいのであれば、普通の生活を送る生活費に加えて約3200万円の準備が必要になるということです。
まとめ
老後資金として準備する額は、その人の現役時代の属性や、定年後の働き方、さらにはどのような生活を送っていきたいかによって異なります。
2000万円、3000万円、4000万円といった金額にとらわれることなく、まずは自分がどのくらいの公的年金を受給できるのか、それ以外の私的年金の準備はできているかを基に、退職金制度があるならば退職金をどのくらい受け取れるのかを踏まえたうえで、最終的に自助努力で用意しなければならない額を把握することが大切です。
また、退職金を一時金で受け取る際には、受け取った後も運用を組み入れながら切り崩すことで、資産が減るスピードを遅くできます。
そのような考え方も取り入れながら、最終的にどのくらいの額が準備できるかを見極めたうえで、老後の過ごし方を考えてみましょう。
出典
(※1)総務省 家計調査報告(2020年)
(※2)厚生労働省 令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
(※3)公益財団法人生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい費用と考える?
(※4)厚生労働省 令和2年簡易生命表の概況 1 主な年齢の平均余命
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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