所得制限で一番損をする年収はどれくらい?
ファイナンシャルフィールド / 2022年3月30日 21時40分
年収が高いと余裕のある生活を送っているイメージがありますが、一定の年収に達すると国の支援制度の対象外になる場合があります。 したがって、ライフスタイルにおけるさまざまな支出をほぼ自分たちでまかなわなけなればならない場面も多くあります。税金も一般家庭より多く支払う必要があるため、意外に家計への負担が大きくなりがちです。 そこで本記事では、特定の年収を超える世帯が対象外となる国の制度や、今からできる節税対策について解説します。
年収910万円以上は損しがちな理由
年収別の所得制限は段階を踏んで国の支援制度から外されるしくみです。
910万円以上で高等学校等就学支援金、1140万円以上で国民健康保険料の上限引き上げ、1200万円以上で児童手当の支給対象外となります。
ただし働き方によっては所得制限の内容が変わるケースもあります。以下で解説する制度内容を参考に、該当する年収かチェックしてみてください。
年収910万円以上:高等学校等就学支援金の対象外
高等学校等就学支援金とはいわゆる「私立高校実質無償化」といわれる制度です。実際は国公立・私立を問わず条件を満たす世帯に支給されます。
文部科学省の「高校生等への修学支援」によると、両親のうちどちらか一方が働き、高校生もしくは中学生の子供がいる世帯では年収910万円以上に達すると支援制度の対象外です。
両親共働きの場合は、世帯年収が1030万円を超えた段階で支給対象外となります。
年収1140万円以上:国民健康保険料の上限引き上げ
厚生労働省が公表した「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」によると、年収が1140万円を超える単身世帯は、令和4年度以降の国民健康保険料が3万円引き上げられます。
今回の制度改正では、二人以上世帯は保険料引き上げの対象から外れますが、今後の決定によっては対象になる可能性もあります。
制度内容としては基礎賦課分2万円、後期高齢者支援金賦課分1万円、合計3万円引き上げることで、中間所得層と高所得層の引き上げ幅の公平を図る目的です。
年収1200万円以上:児童手当の支給対象外
内閣府が公表する「令和3年児童手当見直しに関する全国説明会」の資料によると、令和4年10月から年収1200万円世帯を対象に、児童手当の特例給付が支給されなくなります。
これは扶養家族の人数にかかわらず、年収1200万を超えた場合の全ての世帯が該当します。
支給対象外となる背景には全国の保育施設不足が挙げられます。国は2024年までに約14万人分の保育施設を整備するため、その財源確保として今回の所得制限が設けられました。
ただし、年収が960万円〜1200万円以下の世帯は特例給付として児童1人あたり5000円が中学校修了まで支給されます。
控除対象ギリギリの時に活用したい制度
もう少し所得が低ければ支援制度の対象になる、保険料の引き上げ対象から外れる、という方は所得控除を受けることで制限が解除される可能性があります。
所得控除を受けられる制度はさまざまですが、今回は医療費控除と小規模企業共済等掛金控除の2つをご紹介します。所得制限でお悩みの方は参考にしてください。
医療費控除
医療費控除の対象はその年の1月1日から12月31日までの1年間で、一定額を超える医療費を支払った場合に控除を受けられる制度です。
なお生計を一にしている家族であれば、同居の有無は問われません。家族全員の医療費を1人がまかなっている場合も対象です。
所得金額から差し引く金額は次の式で求められます。
(医療費総額 ― 保険金などの補てん)- 10万円
医療費控除は医療費が10万円を超えると控除対象になります。家族のうち1人が10万円以下でも、全員分を足して10万円を超えれば適用可能です。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除は、納税者が共済制度の対象となる掛け金を支払った場合、全額を控除対象にできる制度です。
いわゆるiDeCoや企業型確定拠出年金が対象となります。iDeCo公式サイトの「iDeCo(イデコ)をはじめるまでの5つのステップ」によると、加入している年金制度と確定拠出年金制度によって限度額が変わってきます。
第1号被保険者 | 自営業者 | 月額6万8000円 (年額81万6000円) (国民年基金または国民年金付加保険料との合計額) |
第2号被保険者 | 会社員 (勤務先に企業年金なし) |
月額2万3000円 (年額27万6000円) |
会社員 (勤務先で企業型確定拠出年のみ加入) |
月額2万円 (年額24万円) |
|
会社員 (勤務先で確定給付企業年金と企業型確定拠出年金に加入) |
月額1万2000円 (年額14万4000円) |
|
公務員 | ||
第3号被保険者 | 専業主婦(夫) | 月額2万3000円 (年額27万6000円) |
iDeCoや企業型確定拠出年金を上手に利用することで、所得制限の対象から外れるかもしれません。
ただしiDeCoは加入までに数ヶ月かかります。年末調整や確定申告の直前に加入してもその年の控除対象にはならないので注意しましょう。
高所得者層こそ賢い節税対策が必要
高所得者ほど高い税金を納めているので、国の支援がない・保険料増加といった負担が増えると大変です。今の日本では所得が多いから生活が楽になる、とはいいきれないのが現状です。
特に家族が多い世帯では負担もさらに大きくなるでしょう。日々の生活水準を維持するためにも、賢く節税して家族に使えるお金を増やすのが大切です。
出典
文部科学省「高校生等への修学支援」
厚生労働省「第146回社会保障審議会医療保険部会(ペーパレス) 資料2 国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」
内閣府「令和3年児童手当見直しに関する全国説明会」
国税庁「令和3年分確定申告特集」
国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」
国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
iDeCo「iDeCo(イデコ)をはじめるまでの5つのステップ」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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