地震や台風で被災した時に、通帳やカードがなくても預貯金をおろせますか?
ファイナンシャルフィールド / 2022年3月29日 13時10分
日本列島では、最近も各地で頻繁に地震が発生しています。もし自然災害で被災したら、必要なお金を金融機関からおろせるのでしょうか? 万一の際に慌てないよう、理解しておきましょう。
通帳やキャッシュカードを失くしたら
身近に災害が発生した場合、自宅が損壊するような大災害の場合は避難するのがやっとで、何も持ち出せないことも考えられます。
そこで、災害救助法が適用された場合には、被災者支援のため、国が金融機関に対して「金融上の措置」を要請します(※1)。
主な内容は以下のとおりです。
(1)預金証書、通帳を紛失した場合でも預金者であることを確認して払い戻しに応じること。
(2)印鑑のない場合には、拇印にて応じること。
(3)事情によっては、定期預金の払い戻しに応じること。また、これを担保とする貸し付けにも応じること。
(4)汚れた紙幣の引き換えに応じること。
このほか、証券会社や保険会社への要請事項も設けられています。
東日本大震災への適用をはじめ、近年は大雨、土石流、台風、竜巻、大規模火災、噴火、大雪などさまざまな災害で適用されています。2019年、2020年と10件ほどでしたが、2021年は20件の災害に適用されました(※2)。
本人確認資料と払い戻し限度額
本人確認に使える資料には、運転免許証、健康保険証、パスポート、自治体の発行する罹災(りさい)証明書などが挙げられます。
これらも、避難時に持ち出せなかったり、すぐ入手できなかったりした場合は、氏名と住所の申告で金融機関は払い戻し可能とされています(※3)。
被災時、本人証明できるものを探しに倒壊しそうな自宅に戻ったりせず、手ぶらでも受け付けてもらえることをぜひ覚えておいてください。
払戻金額は、各金融機関で限度額を設ける可能性があるため、数日~1週間程度の必需品や避難用の交通費と考えておきましょう。なお、ゆうちょ銀行の場合は1人あたり20万円までです(※4)。
また、東日本大震災の際は、取引銀行以外の金融機関でも払い戻し可能とし(1日10万円限度)、行方不明の預金者の代わりに家族が一定金額(10万~30万円)を払い戻しできる措置も講じています(※5)。
ただ、その措置の公表まで3週間程度かかっていますので、一定金額を常備した方が被災当初は心強いでしょう。
ところで、何が必要なのか?
さて、では一体何を買うことになるのでしょうか? 必要に迫られる可能性のあるものの一例としては、飲料水、電池(単一、単二)、ガスコンロ、スマホの充電器、防寒具、おむつ、携帯トイレなどがあります。
自宅か避難先かで環境は異なりますが、短期間でもニーズが高いことが予想されるのは、これら飲食・健康・排せつ関係になります。
経済産業省の調査によると、全停電戸数に対する復旧率が80%を超えるのは、東日本大震災が地震発生から2日半、平成28年の熊本地震が丸1日、阪神・淡路大震災で半日後と結構早く、いずれも1週間ほどでほぼ停電解消しています(※6)。
ATMの復旧に少々時間がかかっても、その前に銀行の窓口が開くでしょうから、それほど多額を枕元に置く必要はないということです。同調査などから予想できる金額は、世帯で5万~10万円程度と筆者は考えます。
まとめ
停電時は電子マネーやクレジットカードが使えないので、普段現金を持ち歩かない方ほど、非常時用の現金を確保してください。スーパーやコンビニが開いていてもレジが動かずお釣りを出せないことがあるため、小銭も必要です。
なお、売り切れたり長時間並んだりする可能性があるため、日頃の備蓄がとても大事になりますね。
上記のように停電は早期に解消するケースが多いので、復旧以降はオンライン決済との併用で支出の不安は軽減されます。その際、電子マネーはプリペイド型よりもポストペイ型(後払い)やデビット型のほうが、チャージ切れがないので安心です。
数日を乗り切る現金と、それ以降の電子マネーやクレジットカード、いざという時の金融機関の非常措置の利用。これらの組み合わせで災害時のお金の問題に備えたいものです。
出典
(※1)金融庁 災害等における被災者等支援について― 金融上の措置要請 ―
(※2)日本銀行 日本銀行について/災害時における金融上の特別措置
(※3)日本司法支援センター法テラス 震災で、キャッシュカードや預金通帳、印鑑も紛失してしまいました。預金を引き出すことはできないのでしょうか。
(※4)ゆうちょ銀行 Q 地震、台風、大雪等災害の被害により、通帳、印章、キャッシュカードを持っていません。払戻しをすることは可能ですか。
(※5)一般社団法人全国銀行協会 東日本大震災における銀行界の対応と今後の課題(平成25年3月)
(※6)経済産業省 平成二十八年熊本地震における設備被害と停電復旧対応について
執筆者:伊藤秀雄
CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー
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