これも2022年問題の1つ!? 再燃するかもしれない未払賃金の問題とは?
ファイナンシャルフィールド / 2022年3月29日 13時30分
2022年問題といわれるものは、年金法の改正や育児介護休業法など、たくさんあります。 すでに法律自体は成立しているものの、施行日が先だったことからすっかり忘れているうちに、気が付けば目の前に迫っているということもよくあるものです。今回は、そんな改正の1つをご紹介します。
コロナ禍だからこそ、思ってもみなかった未払賃金があるかも
今回お話しするのは、「未払賃金」についてです、本来労働者に支払われるべき金額が支払われていない問題です。2020年4月1日、民法の改正に合わせて行われた労働基準法の改正内容をご存じでしょうか?
本来、給料には締め日があり、決まった日に受け取れます。ただ、このコロナ禍の中、休業したり売り上げが減ったりという状態が続くと、会社にとっても大変なときで、正しい給料を請求できないというケースが発生する可能性があります。
コロナ禍が始まった当初は、雇用保険から雇用調整助成金が支給され、さまざまな業種の企業が恩恵を受けて労働者に休業手当が支払われていましたが、経過措置がどんどん延長され、給付できるケースが限定されてきています。
そうなると、休業手当や残業代も支払われなくなることもあるでしょう。それが今回の改正に関係します。もともと、労働基準法に規定されている未払賃金の請求は、2年さかのぼることができます。これが5年に延長されます。ただ、「当分の間、3年」と規定されているのです。
つまり、改正自体は2020年ですが、この3年にかかる未払賃金を請求するためには2022年中という条件があるわけです。2020年4月1日以降に支払われる給料に適用されますので、2023年3月31日までに請求しなければ、請求権が消滅するというわけです。
未払賃金に含まれるものとは?
未払賃金といっても、意外と定義は広いといえます。いくつか例を挙げてみましょう。基本給はもちろん、家族手当や通勤手当、時間外手当など通常の給料が該当し、手取りでなく、所得税、住民税、社会保険料等法定控除額を控除する以前の金額です。そのほか、退職手当も含まれます。
退職手当とは、労働協約、就業規則(退職金規程)などに基づき支給されることになる退職金のことです。給料が月額の固定であったとしても、時間給であったとしても、日割りで計算した金額が未払賃金となります。
ただ、就業規則等で具体的に定められている方法により計算しますが、定められていないケースでは、出勤した日数に応じて計算します。実際には、
「日割計算した賃金額」=「月給および月決めの各種手当(役職手当・家族手当・通勤手当等)」×「実労働日数」÷「所定労働日数(月によって所定労働日数が異なる場合は、年間所定労働日数を12月で除した平均所定労働日数)」
となります。月給で決まっていても、それより少ない金額になることもあるかもしれません。具体的に未払賃金の対象になるのは図表1のケースです。
図表1
(出典:労働者健康安全機構(JOHAS)「未払賃金の立替払制度のご案内」※)
未払賃金には救済制度がある
賃金の支払いの確保に関する法律をご紹介しておきます。勤務先が破綻していたり、退職労働者の申請に基づき労働基準監督署の認定があったりした場合には、会社が支給しなくても立替払いされるという制度があります。
この立替払制度は、原則として未払賃金の総額の80%ですが、事業主に代わって「独立行政法人労働者健康安全機構」に請求することで、労働者本人に支給されます。
ただし、基準退職日の年齢に応じて上限があります。30歳未満は110万円の80%ですから88万円。30歳以上45歳未満は220万円の80%で176万円。45歳以上は370万円の80%で296万円。
注意点としては、支払われていない賃金すべてが立替払いの対象にならないという点と、勤務先が「破綻している」ことが条件であること。単に「支払われていない」だけでは条件を満たさない点です。
コロナ禍で多くの相談を受ける中で、さまざまな誤解も多いことが分かりました。残業代が払われない契約だった、パートだから有給休暇はない、もしくは休業手当はなくて当たり前など。
労働基準法上では、残業手当を支給するためには、時間外手当は1分単位で支給するのが原則です。パートだからアルバイトだからと有給が取得できない、残業手当が支払われない契約ということはありません。
今、未払賃金の請求ができるのは「当分の間3年」ですが、当分の間はいつまでなのか、いつ5年に切り替わるのかは分かりません。
しかし請求するためには、出勤簿や給与明細など何らかの証拠が必要になるでしょう。普段から、レシートはもらわない、給料明細は見ないで銀行の振込金額だけを見ている方などは要注意です。
出典
(※)独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS) 未払賃金の立替払制度のご案内
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
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