都市部の土地を買うチャンス到来? 生産緑地の2022年問題の現実
ファイナンシャルフィールド / 2022年3月31日 14時10分
生産緑地の2022年問題についてご存じでしょうか? これから都市部で土地を買ってマイホームを建てようとしている人や、都市部に所有している土地を売ろうとしている人には関係のあるトピックです。 これを機会に生産緑地に関わる都市部の地価への影響を理解し、正しく行動していきましょう。
生産緑地の2022年問題とは
生産緑地の2022年問題は、31年前に改正された生産緑地法が関係しています。国土交通省が公表する「宅地化農地の現状」によると、三大都市圏(東京・大阪・名古屋)の市街化区域内にある農地を都市計画において、保全する農地(生産緑地)と宅地化農地に区分しました。
●1991年4⽉の⽣産緑地法の改正
●1991年度末での⻑期営農継続農地制度の廃⽌
●1992年度からの固定資産税等の課税の適正化等の措置
市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域と、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域を合わせたものです。
1991年に生産緑地法の改正によって、保全すべき農地は生産緑地として30年間農地として営んでいくことが義務付けられました。これを30年間の営農義務といいます。生産緑地の8割は1992年に決定されているため、2022年になると一斉に営農義務から解放され、市に対して買い取りの申し出が可能になります。
仮に買取の申し出が大量に発生すれば、地価の下落を引き起こすのではないかと危惧されているのが、生産緑地の2022年問題です。
地価への影響
一見、都市部の地価が下落するように思える問題ですが、実際には影響はさほどないと思われます。理由は2つあります。
宅地化農地の存在
先ほど、1991〜1992年にかけて、都市計画において保全する農地(生産緑地)と宅地化農地に区分したとお話しました。宅地化農地は生産緑地と異なり、現状農地だったとしても宅地と扱われて固定資産税が高くなります。
税金の負担を大きくすることで、宅地への転用を狙った措置だと思われます。では、実際にどれほど宅地化農地は減少したのでしょうか。
三大都市圏の特定市における宅地化農地の面積は、国土交通省が公表する「宅地化農地の現状」によると、1993年に3万628ヘクタールであったものが、2016年には1万1956ヘクタールと半分以下になっています。
このように、確かに大きく減ってはいるものの、生産緑地は2016年時点で1万3088ヘクタール、令和2年都市計画現況調査によれば、2020年時点で1万2332ヘクタールあります。宅地化農地は宅地扱いのため、生産緑地と異なり市場での売却処分が可能です。はるかに処分しやすいにも関わらず、これだけの面積が残ったままになっています。
税金面で圧倒的に不利だった宅地化農地ですら40%が残ったままになっている現状を考えれば、生産緑地の営農義務がなくなったからといって、すぐさま市に買い取りの申し出が殺到するとは考えにくいでしょう。
生産緑地は継続可能な上に処分が困難
30年の営農義務がなくなったからといって、直ちに生産緑地扱いがなくなるわけではありません。地主の意向で継続させられます。
また、1990年代と比べて都市部への一極集中が弱まった上に、2020年より発生した新型コロナの影響で、都市部への人口流入は大幅に鈍っています。現状で無理に生産緑地を処分したとしても、満足な値段で買い取ってもらえない可能性が高いでしょう。
自由に売却できるならまだしも、生産緑地は市に買い取ってもらうか、買い取りを拒否されれば他の農家に売るしかありません。いずれもかなわなかったときに初めて宅地への転用が可能になります。
需要と供給で考えた場合、そもそも有用な土地なら市か他の農家が買い取るはずです。いずれもかなわなかった土地にアパートなどを建築しても、需要は乏しい可能性が高いです。
生産緑地の2022年問題で地価の下落は考えにくい
前述の理由から、生産緑地の2022年問題で地価が下落するとは考えにくいでしょう。すでに土地を持っていて売却を考える人は、生産緑地の問題で売り急ぐ必要はありません。
ただし、すでにアメリカが金利の引き上げを開始している状況のため、今後日本でも金利の引き上げがあるとすれば、金利引き上げ前に売るほうがよいでしょう。
これから土地を買おうとする人は、生産緑地の2022年問題があるから土地が安く買えるとは思わないほうがいいです。どうしても安く買いたいなら、少しでも郊外の土地で妥協するほうが現実的でしょう。
出典
ニッセイ基礎研所報 Vol.62 2022年問題の不動産市場への影響
国土交通省 都市交通調査・都市計画調査 令和2年都市計画現況調査
国土交通省 土地・不動産・建設業 宅地化農地の現状
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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