年金だけで月25万円を達成するのは難しいと言われるのはなぜ?
ファイナンシャルフィールド / 2022年3月31日 12時10分
総務省の家計調査によると、65歳以上の夫婦2人世帯(無職)の1ヶ月の平均支出額は約25万円です。老後の生活費を年金だけでカバーできれば老後は安心ですが、月25万円の年金をもらえる人はほとんどいないのが現状です。 今回の記事では、年金だけで月25万を達成するのは難しい理由を解説します。受給額の計算方法を理解し、老後生活に備えた資金計画に役立てて下さい。
老齢厚生年金の平均受給額は約月14万6000円
年金だけで月25万が難しい理由を説明する前に、実際の年金受給状況を確認しましょう。
厚生労働省の「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和2年度末の年金受給者の平均受給額(月額)は次の通りです。
●老齢基礎年金:5万6358円
●老齢厚生年金:14万6145円
厚生年金に加入したことのない自営業者が受給できるのは、老齢基礎年金だけです。また、老齢厚生年金の受給額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額です。厚生年金加入者は、2種類の年金を受け取れるため、年金額が多くなります。
つまり、年金月額が25万円を狙えるのは、老齢厚生年金受給者のうち、平均を大幅に上回る年金を受け取れる人だけです。次に、2種類の年金の受給額を詳しくみていきましょう。
老齢基礎年金の満額は約月6万5000円
令和3年4月以降の老齢基礎年金の満額は78万900円で、毎年改定されます。
満額を受給できるのは、20歳から60歳になるまでの40年間、国民年金または厚生年金の保険料を完納した人です。付加年金や振替加算で多少の加算がなされるケースもありますが、基本的に老齢基礎年金の月額は最大約6万5000円と覚えておきましょう。
約月18万5000円の老齢厚生年金を受給するには
月25万円の年金を受給するには、老齢基礎年金の満額に加えて、約月18万5000円の老齢厚生年金をもらう必要があります。老齢厚生年金の計算方法と、約月18万5000円の老齢厚生年金がもらえるケースを解説します。
・老齢厚生年金額の計算方法
平成15年4月以降に厚生年金に加入した人の老齢厚生年金額(加算を除く)は次の通りです。
●年金額=平均標準報酬額×5.769/1000×加入月数
●平均標準報酬額=(各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額)/加入月数
標準報酬月額は厚生年金保険料や将来の年金額計算の基礎となる金額です。標準賞与額はいわゆるボーナスの支給額に近い金額です。平成15年3月以前の厚生年金加入者や標準報酬月額、標準賞与額の詳細は下記リンクを参照下さい。
参考:日本年金機構「は行 報酬比例部分」
参考:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
実際に年金額を計算するのは難しいですが、厚生年金加入中のおおよその平均年収がわかれば年金額を概算できます。入社から退職までの平均年収が600万円、勤続40年の場合、平均標準報酬額は約50万円(=600万円/12ヶ月)と考えて試算します。
●年金額=平均標準報酬額(50万円)×5.769/1000×加入月数(480ヶ月)=約138万円
老齢厚生年金の月額は約11万5000円です。老齢基礎年金を満額(約6万5000円)受け取ると仮定すると、年金額は約18万円です。
・老齢厚生年金額が月18万5000円になるケース
老齢厚生年金を月18万5000円受け取って年金総額が25万円になるのは、どのようなケースでしょうか。なお、標準報酬月額は65万円、標準賞与額は1回につき150万円が上限です。
厚生年金加入月数を480ヶ月と仮定すると、平均標準報酬額は約80万円必要です。賞与がなければ月収100万円の人でも、平均標準報酬額は最大65万円であるため、老齢厚生年金は18万5000円に届きません。
標準報酬月額60万円(※)で賞与が年2回・各120万円ならば、平均標準報酬額は80万円で老齢厚生年金額は約18万5000円になります。
※実際の標準報酬月額の区分は「59万円」「62万円」などで「60万円」はありません。
年収で1000万円近くになりますが、入社から退職までの期間を平均してこれだけの収入を稼げる人は多くはないでしょう。20歳から70歳まで50年間勤めて加入月数を増やした場合でも、平均標準報酬額は約64万円必要です。
公的年金だけで老後生活費を賄うのは難しいため自助努力が必要
年金だけで月25万円を達成できるのは、厚生年金の加入者のなかでも長期間、高収入を得ていた人だけです。年金額の内訳は、老齢基礎年金が約6万5000円、老齢厚生年金が18万5000円などとなります。
令和2年度時点では、老齢年金の平均受給額は、老齢基礎年金のみの人が約5万6000円、老齢厚生年金を受給している人が約14万6000円というのが現実です。年金だけでは足りない老後の生活費は、できるだけ早い時期から計画的に準備することをおすすめします。
出典
総務省「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年) 家計の概要」
日本年金機構「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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