「在職定時改定」が2022年4月から年金制度に導入。対象となるのはどんな人?
ファイナンシャルフィールド / 2022年4月11日 23時0分
2020年5月29日に成立した「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」通称、年金制度改正法が2022年4月から施行されました。 この改正で新たに導入された制度のひとつが「在職定時改定」です。ニュースなどで名前は知っていても、詳しい内容は知らないという人は多いかもしれません。 この記事では在職定時改正の内容はもちろん、どんな人にどんなメリットがあるのかを解説していきます。年金の受給時期が近い、またはどんな制度なのか知りたい人はぜひご確認ください。
年金の新制度「在職定時改定」とは
在職定時改定の制度は、年金受給者が65歳以上から70歳までに支払った厚生年金保険料を、年1回年金支給額に反映させる制度です。65歳以上であっても、会社勤めで給与所得があると、70歳までは厚生年金保険料が給与から差し引かれます。
一方で、65歳以上であれば年金も受給しているので、給与から差し引かれた厚生年金保険料も年金支給額に反映されます。2022年4月までは、支払った保険料が年金支給額に反映されるのは退職後からでした。そのため、今回の改定は在職の年金受給者にとって大きなメリットになります。
年金の新制度「在職定時改定」とは
2022年4月から導入された在職定時改定は「在職」している年金受給者の支給額を「定時」に「改定」する制度です。それまでは、70歳に到達したときや退職後に支給額が改定されていたため、退職改定と呼ばれていました。
つまり、退職後でなければ年金支給額には反映しませんでしたが、在職定時改定では毎年見直しが行われ、10月の年金支給から支給額が増額します。それでは、具体的にどれくらいの違いがあるのかを確認してみましょう。
在職定時改定導入前と導入後の違い
在職定時改定では、毎年1回、年金支給額の改定をして10月支給から年金支給額が増額されます。これにより、65歳から勤務した場合、退職または70歳までに最大4回の増額が見込まれます。
退職改定では退職または70歳到達以降に年金支給額の増額が開始されるため、在職時にはその恩恵がありません。
しかし在職定時改定では、厚生労働省によると、標準報酬月額20万円のケースで毎月1100円程度、年間約1万3000円が増えるとの試算が発表されています。これで単純計算すると、合計4回の改定があるため、以下の金額が増額されます。
1. 2年目:1万3000円
2. 3年目:2万6000円
3. 4年目:3万9000円
4. 5年目:5万2000円
累計:13万円
上記の金額は退職改定ではもらえなかった金額だと考えると、在職定時改定制度の大きなメリットになるでしょう。
在職定時改定でメリットがある人はどんな人?
在職定時改定の対象となる人は、65歳以上70歳未満で会社勤めをして厚生年金の保険料を支払っている人です。そのため、厚生年金の加入条件を満たさない働き方をしている場合は対象外です。
つまり、厚生年金加入の対象となる働き方をしている65歳以上の人は、年金の増額が毎年反映されるメリットがあります。
年金額と給与の合計に制限はある?
年金受給者で老齢厚生年金以外に一定額以上の給与所得があると、年金支給額の一部、または全額が支給停止になる可能性があります。支給停止となる基準額は月額47万円で、下記の合計額が基準です。
・基本月額:年金額(年額)を12で割った金額
・総報酬月額相当額:標準報酬月額+ 標準賞与額を12で割った金額
この制度を「在職老齢年金制度」と呼んでいます。こちらも2022年4月から改定され、60歳から64歳までの基準額が月28万円から47万円まで引き上げられました。なお、65歳以上は2022年4月以前も47万円で変更はありません。
まとめ
2022年4月から導入される在職定時改定は、勤労意欲をもって働いている65歳以上の厚生年金受給者にとっては朗報といえます。在職定時改定によって勤労意欲はますます高くなり、働く高齢者の増加につながることが期待されます。
このように在職定時改定は、これから年金を受給する人が65歳以上になっても、安心して就労できる制度といえます。
出典
厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
日本年金機構 65歳以上のフルタイムで働く従業員は、厚生年金保険にも加入する義務がありますか。
日本年金機構 年金局年金課 年金制度改正等について
日本年金機構 在職老齢年金支給停止の仕組み
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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