手取り額が目減り⁉ 退職所得の計算方法が変更に。勤続5年以下はどうなる?
ファイナンシャルフィールド / 2022年4月12日 9時30分
これまで、退職所得の計算は、退職手当を「一般退職手当等」「特定役員退職手当等」に分けて行ってきました。 2022年分からは「一般退職手当等」「特定役員退職手当等」に加え、「短期退職手当等」の3区分に分けて計算します。 ここでは、主に短期退職手当等の計算方法についてポイントを解説します。
一般退職手当等のみの場合
一般退職手当等とは、特定役員退職手当等、および短期退職手当等以外の退職手当等をいいます。退職所得は「 (一般退職手当等の収入金額-退職所得控除額)×1/2」で計算します。
退職所得控除額は、次のとおりです。
● 勤続年数が20年までの場合
40万円×勤続年数(80万円より少ないときは80万円)
● 勤続年数が20年を超える場合
70万円×勤続年数-600万円
障害者となったことにより退職した場合は、上記で計算した金額に100 万円を加算します。
一般退職手当等の計算上のメリットとして、
(1) 大きな退職控除額
(2) 2分の1課税
(3) 分離課税
があります。
特定役員退職手当等のみの場合
特定役員退職手当等とは、役員等勤続年数が5年以下である人が、その役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払いを受けるものをいいます。
退職所得は「特定役員退職手当等の収入金額 - 退職所得控除額」で計算します。退職所得金額計算のメリットである「2分の1課税」がありません。退職所得控除額の計算方法は一般退職手当等と同じです。
ただし、同一の年中に一般退職手当等と特定役員退職手当等の支払いを受ける場合で、それぞれの勤続期間のうちに重複する期間がある場合には、退職所得控除額を特定役員退職所得控除額と一般退職所得控除額とに区分して、退職所得の金額を求める必要があります。
計算例は、国税庁のホームページに載っていますのでご確認ください。
短期退職手当等のみの場合
短期退職手当等とは、短期勤続年数に対応する退職手当等として支払いを受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないものをいいます。
短期勤続年数とは、役員等以外の者として勤務した期間により計算した勤続年数が、5年以下であるものをいいます。
なお、この勤続年数については、役員等として勤務した期間がある場合には、その期間を含めて計算します。
短期退職手当等に係る退職所得の金額は、300万円を超える部分と300万円以下に分けて計算します。
(1) 「収入金額-退職所得控除額」>300万円の場合
退職所得の金額 = 150万円(注1) + {収入金額 - (300万円 + 退職所得控除額)}(注2)
(注1)300万円以下部分の退職所得金額
(注2)300万円を超える部分の退職所得金額
(2) 「収入金額-退職所得控除額」≦300万円の場合
退職所得の金額 = (収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2
このように、退職金から退職所得控除額を差し引いた残額が300万円以下であれば、通常の退職金と同様に計算します。
計算方法が変わるのは、退職金から退職所得控除額を差し引いた残額が300万円を超える場合です。この場合、退職所得金額計算のメリットである「2分の1課税」が適用されなくなります。
使用人として4年1ヶ月勤務し、退職したケース。
退職金は800万円 上記(1)のケースに該当
退職所得金額=150万円+{800万円-(300万円+200万円※)}=450万円
※退職所得控除額:40万円×5年(年数の計算において1年未満の端数は切り上げて計算します)=200万円
同じ年に一般退職手当等のほか、短期退職手当等や特定役員退職手当等がある場合の計算は、国税庁のホームページでご確認ください。
今回の改正で、短期退職手当等に該当し、退職所得控除後金額が300万円を超える部分は増税になります。
従業員の場合、勤続年数が5年でも退職金が300万円を超えるケースは多くないと思いますので、改正で影響を受ける人は限定的でしょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.2740 勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)(令和4年1月1日以後)
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
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