夫婦で育児を協力するために。改正育児・介護休業法のポイントを解説
ファイナンシャルフィールド / 2022年4月14日 10時10分
![夫婦で育児を協力するために。改正育児・介護休業法のポイントを解説](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_136683_0-small.jpg)
わが国における少子高齢化に伴う人口減少は、近い将来には労働力の確保や年金問題などに顕著な影響を及ぼすであろう喫緊の課題といえます。 そのような状況を踏まえ、出産や育児による労働者の離脱を防ぎ、男女ともに希望に応じて仕事と育児を両立できる社会の実現に向けて改正育児・介護休業法が公布され、2022年以降、段階的に施行となります。 ここでは厚生労働省の資料を中心に、その目的や概要を確認したいと思います。
仕事と育児の両立、その現状
厚生労働省の「育児・介護休業法の改正について ~男性の育児休業取得促進等~」によると、子ども(第1子)の出生年が2010年から2014年の場合では出産前に就業していた妻のうち、約46.9%が出産を機に退職しているとのデータが出ています。
退職理由としては、「仕事を続けたかったが仕事と育児の両立の難しさで辞めた」が最も多く、「家事、育児により時間を割くため」、「勤務地や転勤の問題」、「妊娠や出産、育児を機に不利益な取扱い(解雇、減給等)を受けた」などが上位となっています。
やはり、妻の立場からは仕事と育児の両立には、会社や夫、家族の十分な理解と支援がないと難しい状況があるようです。
その一方、男性(夫)の育児休業取得率は令和2年度で12.65%と上昇傾向にはありますが、いまだ低い状況にあるようです。ちなみに妻の育児休業取得率は、近年ではおおむね80%強で推移しています。
また、育児休業の取得期間についても、女性のうち約90%で6ヶ月以上となっているのに対して、男性は約70%が2週間未満と短期間での取得が多くなっています。さらに、男性で何らかの休暇、休業を取得した場合でも、育児休業制度を利用しなかった割合が37.5%あったとの結果でした。
男性が育児休業制度を利用しなかった理由では、「収入を減らしたくなかった」が最も多く、そのほかは「会社や上司、職場の育児休業取得への理解がなかった」、「会社で育児休業制度が整備されていなかった」などが上位を占めています。
改正育児・介護休業法の概要
このような状況を踏まえ、2021年6月9日に「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律」(改正育児・介護休業法)が公布されました。
2022年4月以降に順次施行される育児休業についての概要は、以下のとおりとなります。
【2022年4月1日施行】
(1)育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
事業主は、制度が円滑に利用される環境整備のための研修や相談窓口設置などの措置を講じるとともに、これまでは個別周知の努力義務のみであったものを、個別の制度周知と休業の意向確認が義務付けられます。
(2)有期雇用労働者の育児休業取得要件の緩和
これまでの有期雇用労働者における育児休業の取得要件である、「引き続き雇用された期間が1年以上」を撤廃することになります。
【2022年10月1日施行】
(1)「産後パパ育休(出生時育児休業)」の創設
育児休業とは別に、子どもの出生後8週間以内に4週間までの出生時育児休業の取得が可能となります。こちらは男性の育児休業取得促進のための制度であり、休業の申出期限は原則休業の2週間前として、分割して2回まで取得できるようになっています。
(2)育児休業の分割取得
上記の産後パパ育休とは別に、現行の制度を改正し、分割して2回まで育児休業を取得できます。また、子どもが1歳以降の延長についても配偶者と交代で育児休業を開始できるように、育児休業開始日を配偶者の休業の終了予定日の翌日以前とすることが可能となります。
【2023年4月1日施行】
育児休業取得率の公表の義務付け
常時雇用する労働者が1000人を超える事業主に対して、育児休業等の取得割合などの状況を年1回公表することが義務付けられます。
まとめ
男性の育児休業取得率は、2019年度の7.48%から2020年度の12.65%と、1年間でこれまでにない伸びを示しました。政府の目標は、2025年に30%としています。
男性が育児休業を取得しやすい環境を構築することによって制度利用を促進し、男女ともにワーク・ライフ・バランスのとれた働き方や職場環境の整備が進むことで、出産後の女性の雇用継続にもつながっていくことが狙いとなるでしょう。
これまでの固定観念を取り払い、年齢や性別にとらわれず育児に協力し合うためにも、このような制度は積極的に活用していきたいところです。また、仕事と育児を両立できる職場環境を積極的に取り入れる企業が、今後は社会から望まれる会社となって成長、発展していくのでしょう。
出典
厚生労働省 育児・介護休業法について
厚生労働省 育児・介護休業法の改正について ~男性の育児休業取得促進等~
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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