2023年10月1日に開始される消費税の「インボイス制度」とは?
ファイナンシャルフィールド / 2022年4月19日 13時10分
2019年10月に消費税率が10%に引き上げられました。それと同時に、消費税軽減税率制度が実施され、飲食料品や新聞など一部については8%の軽減税率が適用されています。 つまり、現在は消費税が複数税率となっており、事業者などが消費税を計算する際に、作業の煩雑化や誤りが生じる要因ともなっています。 ここでは2023年10月に開始される、消費税の仕入税額控除にかかる「インボイス制度」について、その概要を確認してみたいと思います。
消費税の計算方法
消費税額の基本的な計算方法は、課税売上に係る消費税額から課税仕入に係る消費税額を差し引いて計算します。
この際、課税売上や課税仕入に係る消費税額は、複数の税率ごとに区分して計算する必要があります。また、課税仕入に係る消費税額を差し引くことを「仕入税額控除」といいます。
仕入税額控除の方式は、2023年9月までは「区分記載請求書等保存方式」ですが、2023年10月以降は「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)となります。
適格請求書(インボイス)とは?
2023年10月以降、売買取引で買手が仕入税額控除を適用する場合には、売手側から交付を受けた「適格請求書」(以下、インボイス)の保存が必要となります。
このインボイスとは、事前に税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」だけが発行できるもので、請求書や納品書、領収書などに「登録番号」を記載する必要があります。
つまり、インボイスはこれまでの請求書や領収書などに、必要記載事項(登録番号、適用税率、消費税額)を追加したものとなります。
ただし、登録番号などの記載事項を買手側で追記する行為は認められません。また、不特定多数の者に対して販売などを行う小売業、飲食業、タクシー業などについては、適格簡易請求書の交付が認められています。
そして、適格請求書発行事業者には、買手の求めに応じてインボイスを交付する義務と、その写しを保存する義務が生じます。
適格請求書発行事業者には、免税事業者は登録することができません。そのため、免税事業者がインボイスを交付する場合には、課税事業者となり、税務署に登録する必要があります。
インボイス制度に関する主な留意事項
インボイス制度の開始に当たっての主な留意点は、以下のとおりです。
(1)取引の相手側の求めに応じてインボイスを交付する必要があること
適格請求書発行事業者には、買手の求めに応じてインボイスを交付する義務が生じます。買手はインボイスに記載された消費税額のみ、仕入税額控除の対象とすることができます。
つまり、仮に個人事業者などで免税事業者でも、相手方からインボイスの交付を求められることが想定される場合には、自らが適格請求書発行事業者(課税事業者)となることも検討する必要があるということです。
(2)簡易課税制度を選択している場合は、仕入税額控除は影響しないこと
簡易課税制度を選択している事業者(基準期間の課税売上高が5000万円以下)の場合、消費税額の計算は、課税売上高に対して事業に応じたみなし仕入れ率を用いて計算するため、仕入税額控除は消費税額の計算には影響しません。
(3)一定の取引はインボイスの交付義務が免除されること
以下のような取引については、インボイスの交付義務が免除されます。
・3万円未満の公共交通機関の交通費、旅費
・卸売市場での生鮮食品などの譲渡
・農協などに委託する農林水産物の譲渡
・3万円未満の自動販売機による販売
・郵便切手を対価とする郵便サービス
これらについては帳簿に記載し、保存することで仕入税額控除の対象となります。
(4)免税事業者等からの課税仕入れには経過措置があること
前述のとおり、免税事業者等の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れは、原則として仕入税額控除の対象となりません。
ただし、インボイス制度開始から6年間は経過措置が設けられており、一定の要件を満たす場合には、2023年10月から2026年9月までの3年間における免税事業者等からの課税仕入れの80%を控除可能、また2026年10月から2029年9月までの3年間は、50%を控除可能となっています。
まとめ
インボイス制度の開始時期が近くなるにつれて、今よりもマスコミなどでの報道が活発化してくることと思います。制度開始後は、たとえご自身が免税事業者であったとしても、相手方からインボイスの交付を求められる場合もあり得ることは必ず覚えておきましょう。
適格請求書発行事業者の登録申請は、2020年10月1日から開始されており、制度開始となる2023年10月1日から登録を受けるためには、2023年3月31日までに申請手続きを行う必要があります。
国税庁によるオンライン説明会や税務署などの個別相談などを利用して、正確な情報の収集に心掛けていきましょう。
出典
国税庁 インボイス制度の概要
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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