相続人になれる人・なれない人。権利の有無とその順位は?
ファイナンシャルフィールド / 2022年4月19日 13時30分
誰かが亡くなると、親族が残された財産を相続します。もちろん、親族間で協議することは当然ですが、誰に権利があるのか、どちらの順位が上位にあるのか、などが法律で決められています。そこには争いを未然に防ぐ狙いがあります。
まず配偶者と第1順位の子に相続権
もし誰かが亡くなった場合、残された財産を相続する順番は決まっています。残された親族間で争いを未然に防ぐために、法律が相続の順番を定めているのです。財産を相続できる権利を持つ人を「法定相続人」と呼びます。この法定相続人は、残された人たちの家族構成によって変わってきます。
亡くなった方(被相続人)の家族の中に配偶者と子がいれば、まずこの人たちに相続の権利が発生します。配偶者は別格ですが、子が相続の第1順位になります。相続財産のうち、配偶者と子が同等に相続します。
もし配偶者が亡くなっている場合は、子が全額相続します。逆に子が亡くなっている場合は、子の子(被相続人から見て孫)が代わって相続(代襲相続)できます。子が複数いる場合、生存している子と、亡くなっている子の子(孫)が平等に相続します。
被相続人に子や孫がいないと、相続権が第2順位になる被相続人の親(父と母)に発生します。その際は、配偶者と親(父・母)が相続します。配偶者が亡くなっていると、親が全額相続します(下図表参照)。
ただし両親だと高齢で亡くなっていることも十分に考えられます。その際は、第3順位になる被相続人の兄弟姉妹に相続権が発生します。配偶者と兄弟姉妹で相続します。兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子(おい・めい)が代襲相続します。
配偶者が亡くなっている場合は、兄弟姉妹が全額相続します。配偶者がおり、子や孫だけでなく、両親、兄弟姉妹、おい・めいまでいない場合は、配偶者が全額相続します。
離婚相手、再婚相手、養子縁組はどうなる?
現代社会では、家族関係も多様化し、離婚する方や死別後に再婚する方、入籍をせずにパートナーとして生活する方もいらっしゃいます。また、養子縁組をしている方もいるでしょう。こうしたケースの際、相続権はどうなるのでしょうか。
まず被相続人(死亡した方)の配偶者だった方が、被相続人の死亡時点で離婚をしている場合には、相続権がありません。被相続人と元配偶者との間に子がいる場合は、この子には相続権があります。もしその子が亡くなっている場合でも、子の子(被相続人から見たら孫)には相続権があります。
被相続人が配偶者と離婚または死別した後に、再婚している場合はどうでしょうか。再婚相手の配偶者には、相続権があります。再婚相手との間に生まれた子にも相続権があります。
ただし再婚相手に婚姻時点ですでに子がいる場合、その子には相続権はありませんが、被相続人と養子縁組をしていれば、通常の子と同じ相続権が発生します。
被相続人が、生前に養子縁組をした子がいると、その子にも相続権があります。また婚外子については、被相続人が認知をしている子であれば相続権があります。ただし、入籍をせずに内縁関係にあったパートナーには相続権はありません。
法定相続=どう分けるかの基準
財産をどのような割合で分けるかも、法律で決められています。まず、亡くなった方(被相続人)に、配偶者だけ、子だけ、親だけ、兄弟姉妹だけの場合は、その方が財産を全額相続します。
次に配偶者と子(第1順位)がいる場合は、配偶者が全体の2分の1、子が2分の1となります。子が複数いる場合は、子の相続分2分の1の中から、人数に応じて等分して相続します。
もし被相続人に子や孫がいない場合は、配偶者と親(第2順位)が相続します。配偶者が全体の3分の2、親が3分の1の割合で相続します。親もいない場合は、配偶者と兄弟姉妹(第3順位)が相続します。配偶者が全体の4分の3、兄弟姉妹が4分の1の比率になります。子と比較すると、親、兄弟姉妹の相続割合は少なくなります。
被相続人の子(第1順位)には、常に相続権がありますが、親(第2順位)、兄弟姉妹(第3順位)については、上の順位の対象者がいない場合にだけ相続権が発生します。
被相続人に子がおらず、親族が多い時などに、特定のおいやめいと養子縁組をするのは、その子に対し多くの財産を譲る意思を明確にし、相続争いを避ける狙いを読み取ることができます。
遺言状には一定の効力がある
法定相続の手順は以上のとおりですが、被相続人が特定の方に恩義を感じて財産を多く譲りたいときに、有効な手段が「遺言状」です。正式な書式にのっとり本人の意思であることがはっきりしていれば、その意向は可能な限り反映されます。
例えば親族間の争いごとを嫌い、多くの財産を特定相続人への増額や、NPOなどに寄付をする場合が該当します。
ただ意思が反映されるといっても、相続権のある方の権利をすべて奪うことはできません。相続財産を全額寄付する、特定の個人に全額相続させる、といった遺言状はすべて効力を発揮できません。相続権のある方の、相続できる最低限の財産が認められているからです。これを「遺留分」といいます。
「遺留分」は法定相続分の2分の1とされています。ですから配偶者と子がいる場合にあてはめて見ると、全財産のうち、配偶者4分の1、子4分の1が、それぞれ遺留分になります。
遺言状で自由にできる割合は、全体の2分の1です。「全額をNPO法人に寄付をする」との内容の遺言状があったとしても、実際に可能な額は、相続財産の半額になります。ただし兄弟姉妹については、この「遺留分」はありません。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
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