2022年最新版 生涯賃金と学歴の相関関係を男女別に紹介

子どもの進路は、親が一緒に考え、決めるケースが多いでしょう。   子どもの学歴と生涯にわたって得る賃金には関連があるからこそ、子どもの将来にとって、親の金融リテラシーの高さは非常に大切です。   今回は、子どもの学歴によって得られる生涯賃金の違いを、それぞれ紹介します。学歴別でどれほどの賃金差があるかを確認して、子どもの進路を考えるきっかけにしてみてください。

男女別にみる生涯賃金

一般的には賃金水準が変わるため、就業期間が短くても、大卒以上の方が、生涯賃金は高くなります。
 
どれだけ差が開くのか、学歴別に生涯賃金を下記の条件で男女別にみていきましょう。

・学歴は「高校卒」「高専・短大卒」「大学卒」に分ける
・学校を卒業してから60歳まで、正社員でフルタイム労働した場合で計算する
・退職金は含めない
・同じ企業に勤め続けた場合として考える

生涯賃金は結婚や出産、病気や転職など、人それぞれの事情で変わります。そのため、必ずしも生涯賃金と同じ賃金が将来にわたって得られるわけではありませんが、参考にしてみてください。
 

男性の生涯賃金

男性の場合は、図表1の結果となりました。
 
【図表1】

学歴	高校卒	高専・短大卒	大学・大学院卒
生涯賃金（円）	2億5800万円	2億5210万円	2億9270万円

出典：独立行政法人 労働政策研究・研修機構 ユースフル労働統計2020 生涯賃金など生涯に関する指標
 
60歳まで、退職金を含めないことを条件に行った2018年の調査では、大学・大学院卒では2億9270万円が生涯賃金です。
 
以下「高校卒」「高専・短大卒」の順で生涯賃金は減少しています。高校卒と大学・大学院卒で3470万円の差が生じているので、進学先としては大学・大学院卒を念頭に考えることが望ましいでしょう。
 

女性の生涯賃金

一方で、女性の生涯賃金を学歴別で確認すると図表2の結果になりました。
 
【図表2】

学歴	高校卒	高専・短大卒	大学・大学院卒
生涯賃金（円）	1億8800万円	2億600万円	2億4400万円

出典：独立行政法人 労働政策研究・研修機構 ユースフル労働統計2020 生涯賃金など生涯に関する指標
 
大学・大学院卒では2億4400万円と、男性よりも少ない金額になっています。以下「高専・短大卒」「高校卒」の順で、生涯賃金が減少しました。こちらは、高校卒と大学・大学院卒で、5600万円と男性よりも賃金差が大きいです。女性の学歴は、生涯賃金に大きな影響を与えていることが分かります。
 

途中で転職してしまった場合はどうなる？

途中で転職すると、生涯賃金にどう影響するのか学歴別に紹介します。一般的に転職すると、キャリアを再構築するので収入が減る可能性があります。では、どれほど影響するのか確認してみましょう。
 
【図表3】

男性	高校卒	高専・短大卒	大学・大学院卒
転職しない場合の生涯賃金（円）	2億5800万円	2億5210万円	2億9270万円
転職した場合の生涯賃金（円）	2億1370万円	2億1770万円	2億7210万円

続いて、女性が転職をした場合と同じ企業で働き続けた場合とで比較します。
 
【図表4】

女性	高校卒	高専・短大卒	大学・大学院卒
転職しない場合の生涯賃金（円）	1億8800万円	2億600万円	2億4400万円
転職した場合の生涯賃金（円）	1億5200万円	1億7720万円	2億1570万円

男性と女性の両方とも、転職をすると、生涯賃金は同じ企業で働き続けるよりも下がる結果となりました。今は転職も昔に比べて許容されていますが、収入面では下がることは考慮しておく必要があるでしょう。
 

高卒でも大卒の生涯賃金を逆転するケースはあるのか？

高卒の場合は、大卒に生涯賃金で勝てるケースはないのでしょうか。実は1000人以上の企業であれば、高卒でも大卒に生涯賃金が多くなるケースがあります。
 
【図表5】

	男性			女性
企業規模	大学卒	高専・短大卒	高校卒	大学卒	高専・短大卒	高校卒
1000人以上	3億2150万円	2億8700万円	2億8420万円	2億6290万円	2億2480万円	2億950万円
100～999人	2億6150万円	2億3510万円	2億3850万円	2億2850万円	1億9470万円	1億7590万円
99人以下	2億2220万円	2億1360万円	2億730万円	1億9820万円	1億8500万円	1億5180万円

出典：独立行政法人 労働政策研究・研修機構 ユースフル労働統計2020 生涯賃金など生涯に関する指標
 
企業規模が1000人以上と大きいと、学歴が高卒でも、企業規模999人以下の大卒の生涯賃金を逆転するケースもあります。そのため、就職する場合も企業の選び方は大切です。
 

高い生涯賃金が魅力でも、多様な現代社会ではケース通りいくか不透明

大卒と高卒では、基本的な生涯賃金に差が生じることが分かりました。
 
現代の多様な社会では、ずっと同じ企業で働き続けるケースはあまりないかもしれません。しかし、生涯にわたって得られる賃金は大卒が多くなることも事実です。進学先や就職先を、親として事実に基づいて説明できるように、子どもと相談する機会を設けておきましょう。
 

出典

独立行政法人 労働政策研究・研修機構 ユースフル労働統計2020 生涯賃金など生涯に関する指標
 
執筆者：川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー