公立学校への進学率から子どもの受験を考える
ファイナンシャルフィールド / 2022年5月6日 11時40分
![公立学校への進学率から子どもの受験を考える](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_139272_0-small.jpg)
新年度が始まり、子どもの学年が1つ上がったり新しい学校へ進学したりして、成長を実感している親も多いでしょう。 進学するにつれて考えなければならないのは子どもの進路で、どこかのタイミングで多くの子どもは受験します。どのタイミングで受験するのが理想でしょうか? 統計から、子どもの進路選択について考えてみました。
小学生の98%は公立小へ通っている
今の小学生がどのような進路選択をしたのか、公立・国立・私立の小学校へ通う小学生の割合を確認してみました。
図表1は、令和3年度の小学生(6学年合計)で公立小学校へ通う児童数の割合が低い都道府県・高い都道府県を2つずつと全国平均を載せています。
【図表1】
![図表1](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2022/05/8d067b7318a148677700d9344e1e50d9.jpg)
資料:文部科学省『令和3年度学校基本調査』をもとに筆者が計算
全国の小学生の人数は622万人なので、1学年あたり100万人強です。そのうち、公立小学校(国立と私立以外)へ通う人数は610万人で、割合は98.1%とかなり高い率です。
都道府県別にみて公立小学校へ通う割合が最も低いのは奈良県で、全国平均より2.9%低い95.2%となっています。2番目が僅差で東京都(95.3%)です。
一方で、公立小学校へ通う割合が最も高いのは島根県で、小学生全員が公立通いといえる100%です。2番目に高いのは福井県(99.9%)でこちらもほぼ全員公立通いです。
奈良県や東京都では私立小学校を選択する子どもが比較的多いですが、それでもわずか5%程度なので、非常に少数派といえます。島根県は私立小学校が1校もないということでしょうから、選択肢がそもそもないといえます。
私立の小学校へ通うとなると、教育費負担は非常に大きくなります。文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」から学習費総額の差を計算すると、(私立159万8691円-公立32万1281円)×6年で、公立小学校の場合より766万円円も多く掛かります。
一般的な家庭では、経済的負担の大きさから受験するかどうか迷わないほう(公立一択)が無難です。
中学生の9割超は公立中へ通っている
次に、今の中学生がどのような進路選択をしたのか、公立・国立・私立の中学校へ通う中学生の割合を確認してみました。
図表2は、令和3年度の中学生(3学年合計)で公立中学校へ通う生徒数の割合が低い都道府県・高い都道府県を2つずつと全国平均を載せています。
【図表2】
![図表2](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2022/05/4d358a9f7a34e7e311650d84e10447e7.jpg)
資料:文部科学省『令和3年度学校基本調査』をもとに筆者が計算
全国の中学生の人数は323万人で、そのうち91.6%の296万人が公立中学校へ通っています。
都道府県別にみて、公立中学校へ通う割合が最も低いのは東京都で、全国平均より17.7%も低い73.9%となっています。小学6年生の1クラスが40人だとしたら、そのうち10人が公立中学校以外へ進学している計算になります。特に女子の割合が72.0%で低く、男女で3.8%も差があります。2番目に低いのは高知県(79.7%)です。
一方で、公立中学校へ通う割合が最も高いのは小学校と同じ島根県で、98.6%となっています。2番目に高いのは山形県の98.5%で、これらの県はほぼ全員が公立へ進学している状況です。
公立への進学割合が低い県は、ほかに京都府(86.0%)、奈良県(86.1%)、広島県(88.2%)などがあります。近隣に私立・国立中学校がないと受験できないので、私立・国立中学校の数が割合に比例していると考えられます。
私立の中学校へ通う場合も、教育費の負担はかなり大きくなります。文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」から学習費総額の差を計算すると、(私立140万6433円-公立48万8397円)×3年で、公立中学校の場合より275万円円も多く掛かります。
小学校の766万円の差と比べたら負担は軽くなります。選択肢のある地域では、経済的事情が許されるなら、公立以外の進路も真剣に考えてみたいところです。
高校生の3人に2人は国公立へ通っている
最後に、今の高校生がどのような進路選択をしたのか、公立・国立・私立の高校へ通う高校生の割合を確認してみました。
図表3は、令和3年度の高校生(3学年合計)で、公立の高校へ通う生徒数の割合が低い都道府県・高い都道府県を2つずつと全国平均を載せています。小学校と中学校では受験が必要な国立を私立と共に公立以外にしていましたが、高校は教育費負担面から判断して国立を公立と共にしています。
【図表3】
![図表3](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2022/05/648fcd70b2707c60220a4a8534ff880c.jpg)
資料:文部科学省『令和3年度学校基本調査』をもとに筆者が計算
全国の高校生の人数は301万人で、そのうち3人に2人(66.4%)の200万人が国公立の高校へ通っています。
都道府県別にみて、国公立高校へ通う割合が最も低いのは東京都で、全国平均より23.1%も低い43.1%となっています。2人に1人以上が私立(国公立以外)へ進学しており、50%に満たないのは東京都だけです。2番目に低いのは京都府(52.3%)です。
一方で、国公立高校へ通う割合が最も高いのは徳島県で95.7%となっています。2番目に高いのは沖縄県の93.2%で、共に東京都とは50%以上の差があります。国公立への進学割合が低い県はほかに、大阪府(55.9%)、福岡県(57.5%)等です。
東京都や京都府は、私立高校への進学が選択肢として当たり前のようにある状態ですが、徳島県や沖縄県では私立への進学は一般的ではないと考えられます。中学校で2番目に公立への進学割合が低かった高知県は69.1%で、中高の差が比較的小さいことから、県内に私立の中高一貫校が多いと考えられます。
私立の高校へ通う場合も、教育費の負担は公立に比べて大きくなります。文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」から学習費総額の差を計算すると、(私立96万9911円-公立45万7380円)×3年で、公立高校の場合より154万円も多く掛かります。
私立高校の授業料の実質無償化により、小学校や中学校と比べて差はかなり小さいですが、負担は軽いに越したことはないです。選択肢のある地域では、経済面から考えたらできる限り国公立への進学を実現させたいところです。
子どもの成長経路は多様
日本は中学3年生まで義務教育ですが、受験をして合格すれば、小学校からでも中学校からでも私立学校へ進学できます。教育費負担は大きくなりますが、それ以上に魅力があると感じ、本人と親が希望するなら、私立を選択することが最適です。
私立を選択できる地域でない場合は、次の機会(大学進学等)に備えて準備していくとよいでしょう。小学生や中学生が遠距離通学するのは危険ですし、送迎するとなると親の負担も大きいです。中学では寮を備えた学校もあるので、条件がそろえば候補に入れるとよいでしょう。
子どもの学校選択に正解があったとしても、答えは1つではありません。受験がある以上、希望しても入学できるとは限りません。時には失敗といえる経験をするかもしれませんが、すべての経験を生かして成長していってほしいものです。親としては、経済的理由で子どもの進路が閉ざされることのないよう、準備しておきましょう。
出典
e-Stat 学校基本調査(文部科学省 令和3年度)
文部科学省 平成30年度子供の学習費調査
執筆者:松浦建二
CFP(R)認定者
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