【年金相談】年金を60歳で繰上げ受給しようと考えていますが、どんなデメリットがありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2022年5月7日 23時10分
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老齢年金は原則として65歳から受給開始となっていますが、請求することで60歳から受給できます。 ただ、60歳で繰上げ受給を行うことでデメリットも発生します。年金を60歳で繰上げ受給する場合、どのようなデメリットが生じるのでしょうか。
受給額が減額される
繰上げ受給を行うことで、受給額が減額されます。減額率は、昭和37年4月1日以前生まれの場合、ひと月あたり0.5%ですので、60歳から受給を開始すると30%の減額となります。
昭和37年4月2日以降生まれの場合は、減額率が0.4%に緩和されますが、それでも60歳から受け取りを開始すると24%の減額です。そして、この減額された額で一生涯受給します。
また、繰上げ受給を請求することで、厚生年金基金から支給される年金も減額される場合がある点にも注意が必要です。
受給を開始すると任意加入ができない
国民年金には任意加入制度があります。
任意加入制度とは、60歳に到達した時点で老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合や、納付期間が40年(480ヶ月)に満たないため満額受給ができない場合に、年金の受給額を増やすために60歳以降も保険料を納付することができる仕組みとなっています。
任意加入制度の加入要件には「老齢基礎年金の繰上げ受給をしていないこと」が組み込まれているため、繰上げ受給を行った場合は加入できません。また、保険料の追納もできないことになっています。
一度繰上げ受給の請求を行うと取り消すことができない
繰上げ受給の請求を行うと、請求した日の翌月分より年金の支給が開始されます。そして、繰上げ支給の請求を行った後は取り消すことができません。
また、共済組合加入期間がある場合は、原則として共済組合から支給される老齢年金についても、同時に繰上げ請求を行うことになります。
年金の一部または全額が支給停止となる可能性がある
繰上げ受給の請求を行った場合で、65歳になるまでの間に雇用保険の基本手当や高年齢雇用継続給付が支給される場合は、老齢基礎年金は支給停止となりませんが、老齢厚生年金については一部、もしくは全部が支給停止となる可能性があります。
また、老齢厚生年金や退職共済年金を受給中に繰上げ請求をすると、これらの年金に定額部分の支給がある場合は、定額部分は支給停止されます。
ほかにもある、さまざまなデメリット
60歳で繰上げ受給の請求を行った場合、上記で挙げたようなデメリットがありますが、ほかにも以下のようなデメリットがあります。
■ほかの年金との併給ができなくなる
繰上げ受給の請求を行った老齢年金は、65歳になるまでの間、遺族厚生年金や遺族共済年金などのほかの年金と併せて受給できません。そのため、いずれかの年金を選択することになります。
■寡婦年金の受給権を失う
寡婦年金を受給していた人が、老齢年金の繰上げ受給の請求を行うと、繰上げ受給の請求を行った日以降の寡婦年金の支給はなくなります。
■障害年金を受けられなくなる
障害年金には「事後重症による請求」という仕組みがあります。
基本的に、障害年金を請求できるのは、初診日から1年6ヶ月が経過した時点を障害認定日とし、そのときの障害の状態に応じて障害年金受給を請求します。
そのため、初診日から1年6ヶ月が経過した時点で障害等級に該当していない場合は、障害年金を請求することはできません。
しかし、その後障害の状態が悪化し、障害等級に該当することになった場合は「事後重症による請求」を行うことができますが、繰上げ受給の請求を行っている場合は、この事後重症による請求を行うことができません。
■特例措置が受けられない
厚生年金には長期加入者に対する特例が設けられているほか、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受けている人が定額部分の支給開始年齢到達前に障害の状態になった場合には、定額部分も受け取れる「障害者特例措置」が設けられています。
しかし、老齢厚生年金を繰上げ受給している場合、それらの特例を受けることができません。
まとめ
年金の繰下げ受給開始年齢が75歳まで延長されるとともに、繰上げ受給についても減額率が緩和されたことから、60歳からの繰上げ受給の請求を考える人もいるかもしれません。
しかし、繰上げ受給には減額率の緩和以上に大きなデメリットも存在します。これらのデメリットと、繰上げ受給をすることで得られるメリットを比較して、自分の最適なタイミングで受給の請求を行うことが大切です。
前述のとおり、繰上げ受給の請求は、一度請求すると取り消すことができません。請求を考える際には、慎重に判断して行うようにしましょう。
出典
(※1)日本年金機構 年金の繰上げ受給
(※2)日本年金機構 任意加入制度
(※3)日本年金機構 障害年金ガイド 令和4年度版 P4
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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