相続後の不動産登記変更が義務化? その内容とは?
ファイナンシャルフィールド / 2022年5月17日 9時10分
本来、相続によって不動産を取得した場合、その不動産の名義変更手続きを行う必要がありますが、義務化されていないことから、名義変更手続きが行われず、親、もしくは祖父母の名義のままになっているケースもみられます。 それが原因で所有者が不明となっている土地も多く、看過できない問題となってきたため、関連する法律が改正されるとともに、令和6年より、相続後の不動産登記変更が義務化されることが決定しました。 今回は義務化の内容について、注意点も併せて解説します。
義務化となった背景
相続後の不動産登記が必要になった背景には、相続による登記がなされないことによる所有者不明土地が急増していることにあります。
所有者不明土地とは、不動産登記簿を閲覧してもその所有者が判明しない土地や、所有者が判明したとしてもその所在が不明な土地をいいます。
現時点では相続登記は義務化されておらず、仮に申請しなかったとしても罰則規定はありません。
逆に、相続登記手続きには準備しなければならない書類が多くあるほか、費用も発生するため、「必要でないならやらなくてもよい」という考える人が多い点も、所有者不明土地を増加させた原因の1つかもしれません。
とはいえ、相続登記をしないまま、その後も引き続き相続が行われることによって、登記簿上の名義人と本来の所有者が異なるケースが増加し、正式な所有者を見つけるためには多くの費用や時間が必要となるほか、管理がされていないことによって、周辺環境に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。
このような問題は、今後高齢化が進むにつれ、相続が発生するたびにますます深刻化していくことが予測されるため、所有者不明の土地をこれ以上増やさないための対応策として、今回の義務化に至ったというわけです。
義務化される相続後の不動産登記変更の内容
令和6年4月1日より義務化される相続登記については、登記を行いやすくする目的で手続きの簡略化が行われるほか、新しい申告方法が設けられる予定です。
■手続きの簡略化
現在では、複数人で不動産を相続する場合、共有名義人すべての協力がないと相続登記を行うことができません。
しかし今回の改正により、令和6年4月1日からは相続人のうち1人が単独で行うことが可能になります。さらに、必要とされる書類も少なくなる予定です。
■新たな申告方法
改正後は登記官に対して、「相続が開始されたこと」とあわせて「自分が相続人である」旨を申し出ることで、申請を行ったとみなされます。
そして登記官は、所定の審査を経た上で申し出た人(相続人)に相続されたことが分かるよう、相続人の名前や住所を登記簿に記載します。
こうすることで、登記簿をみれば誰に相続されたか、その人の住所まで把握することが可能となります。
■相続登記の期限の新設
これまでは、相続登記についての期限は定められていませんでしたが、令和6年4月1日からは相続が開始し、相続人が不動産の取得を知った日から3年以内に、相続登記を行う必要があります。
もし、期限内に正当な理由なく相続登記を行わなかった場合は、10万円以下の過料の対象となりますので注意が必要です。
ちなみに、ここでいう「正当な理由」とは、以下に挙げられるような理由でなければなりません。
●申請義務のある相続人が病気で動けない
●数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
●遺言の有効性や遺産の範囲等が争われ遺産分割協議などが完了していない
など
住所が変更した際にも登記が必要
相続登記を行った後に、相続人の住所が変更した場合も、今後は変更登記が必要です。
期限は住所が変更した日から2年以内となっており、これも正当な理由なく怠った場合は5万円以下の過料の対象となります。
令和6年4月1日より前に相続が発生していた場合は?
改正された内容が施行されるのは令和6年4月1日ですが、それ以前に相続が発生していた場合でも、相続登記が義務づけられます。
ただし、経過措置により、本来であれば相続が発生し、相続財産(不動産)の取得を知った日から3年以内に申告しなければなりませんが、施行日の令和6年4月1日から3年の間に申告すればよいことになっています。
まとめ
相続における不動産の登記変更については、これまで義務化されていなかったことから、さまざまな面で問題が浮き彫りになっています。空き家問題もそうですし、所有者不明土地問題もそれに当てはまります。
これらの問題に対して、国や自治体も対策をとっていますが、やはり相続によって所有者が変わった際にすみやかに変更登記を行うことが、問題解決への一番の近道です。
今後の相続における登記義務化に備え、早めに知識を得ておくとともに、いざ相続が始まった際にスムーズに手続きが行えるよう、準備しておくことが大切だといえるでしょう。
出典
(※)法務省民事局 令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(令和3年12月)
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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