退職金をお得に受け取りたい人に現役FPが教えるコツ
ファイナンシャルフィールド / 2022年5月23日 9時30分
老後生活を支える退職金には、受け取り方にいくつかのパターンがあることをご存じでしょうか? 退職金の受け取り方によって、退職金の総額や税制面も大きく変わります。 ここでは、退職金をそれぞれのパターンで受け取った場合のメリットやデメリットを紹介します。最適な退職金の受け取り方を知る参考にしてみてください。
退職金の受け取り方3パターン
退職金の受け取り方は、大きく分けると次の3つにパターンが分かれます。
(1)一括形式で受け取る
(2)年金形式で受け取る
(3)一括と年金で受け取る
通常は一括で受け取る方法が一般的です。しかし、企業によっては年金形式で支払う場合や、一括と年金を組み合わせているケースもあります。
(1)一括形式で受け取る
基本的に、退職金は一括形式で受け取りましょう。退職金を一括で受け取ると分離課税として考えるため、社会保険料や健康保険料に影響しません。
分離課税とは「他の所得と合算せずに分離して所得税を計算する場合方法」と国税庁が定義しています。
一括形式で受け取る場合のメリットとデメリットを紹介します。
・メリット:分離課税なので、社会保険料や国民健康保険料に影響しない
・デメリット:年金形式より額面上の受取額は少ない
受け取れる額面が少なくなるデメリットより、税負担や毎月の社会保険料を軽くできた方がメリットです。そのため、退職金は一括形式で受け取ることをおすすめします。
(2)年金形式で受け取る
退職金を年金形式でもらう方法はおすすすめできません。退職金を受け取っていない分が運用に回るため、一括で受け取るより額面では多いですが、雑収入としてほかの所得とも合算されるので、課税の負担が増すリスクがあります。
年金形式のメリットとデメリットを紹介します。
・メリット:額面上の受取金額が増える
・デメリット:社会保険料や国民健康保険料に影響する
社会保険料や健康保険料が値上がってしまい、不必要な出費が必要なケースも生じます。
退職金を年金で受け取るなら、どれだけ退職金を運用に回してくれるかがポイントです。退職金が大きく増えるほど運用されないのであれば、税負担が重くなる年金形式はおすすめできません。
(3)一時金と年金で受け取る
退職金を一時金と年金で組み合わせてもらうケースもあります。うまく組み合わせられれば税負担を減らせます。しかし、上手く組み合わせないと、受取額が増えないのに税の負担が増えてしまいます。
組み合わせる場合は、以下の税制面に気を付けて慎重に計算しましょう。
・退職金を年金形式で受け取る場合は雑所得なので、ほかの収入と合算される
・年間の収入が1000万円以下の場合、公的年金控除は65歳未満では60万円、65歳以上は110万円が非課税なので、年金形式で受け取るなら65歳以降を選択する
退職金をお得に受け取るパターンは結局どのケース?
退職金をお得に受け取る方法をそれぞれパターンでシミュレーションします。一時金と年金形式で同じ条件で比較すると、図表1のようになります。
【図表1】
退職金2000万 在職期間30年 |
一括形式 | 年金形式 |
---|---|---|
所得税の区分 | 退職所得 分離課税 | 雑所得 総合課税 |
受けられる控除 | 退職所得控除 | 公的年金控除 |
所得税 | ・2000万円-800万円+(30年-20年)×70万円=500万円 ・500万円×1/2=250万円 ・250万円×10%-9万7500円=15万2500円 |
・2000万円を10年間受け取る形式として考えた場合 ・200万円×75%-27万5000円=122万5000円 ・122万5000円×5%×10年=60万2500円 |
手取り額 | 2000万円-15万2500円=1984万7500円 | 2000万円-60万2500円=1939万7500円 |
社会保険料 | 影響なし | 影響あり |
国税庁 退職金と税 所得税の税率 公的年金等の課税関係より筆者が作成
年金形式の場合、ほかに収入があると、社会保険料が上がる可能性もあります。退職金は一括で受け取って、ほかの公的保険料などに影響させない方が望ましいといえます。
一時金と年金形式の場合は、図表2のシミュレーションを参考にしてください。
【図表2】
退職金2000万 在職期間30年 |
一時金1000万 60歳で受け取り |
年金1000万 65歳からの受け取り |
---|---|---|
所得税の区分 | 退職所得 分離課税 | 雑所得 総合課税 |
受けられる控除 | 退職所得控除 | 公的年金控除 |
所得税 | 0円 | 0円 |
手取り額 | 1000万円 | 100万円×10年 |
社会保険料 | 影響なし | 影響あり |
国税庁 退職金と税 所得税の税率 公的年金等の課税関係より筆者が作成
退職金の受け取り方は今後の見通しを踏まえて選ぼう
退職金のもらい方について、パターンごとに解説しました。
どのパターンもメリットとデメリットがあります。老後のライフプランに沿った受け取り方を選んで、後悔のない老後人生を過ごしましょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.2240 申告分離課税制度
国税庁 退職金と税
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1600 公的年金等の課税関係
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.2260 所得税の税率
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー
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