【20年ぶり水準】円安は得か損か? 円安が与える生活への影響を解説
ファイナンシャルフィールド / 2022年5月25日 22時20分
2022年4月28日の東京為替市場では、1ドル130円台後半となりました。20年ぶりの水準に進んだ円安は、普段の生活にどういった影響を与えるのでしょうか? 本記事では、円安が進んだ場合に私たちの暮らしにどのような影響があるか、生活と関係が深い企業への影響にも着目しながら紹介します。
円安がもたらすメリットとデメリットを解説
円安とはどういう状況を意味するのか、簡単におさらいしましょう。
日本銀行は、円安を「円の他通貨に対する相対的価値が相対的に少ない状態」と定義しています。例えば、1ドルが100円から120円に推移すれば「円安が進んでいる」といえます。
それでは、円安によるメリットとデメリットをまずは企業の視点から考えてみましょう。円安が進む場合の主なメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット:輸出による利益が大きくなる
デメリット:輸入にかかるコストがかさむ
円安は企業にとって、輸出による利益を得やすいというメリットがあります。一方で、物やサービスを海外から輸入するコストも増えます。
最近は「良い円安」「悪い円安」という言葉を耳にする機会が増えていますが、一般的に考えれば、円安には良い面と悪い面の両方があるというわけです。
中小企業への事業コスト圧迫が深刻
それでは、実際に円安が進む今の状況について、企業はどのように受け止めているのでしょうか。
日本商工会議所の調査によると、円安が業績に与える影響について、53.3%の中小企業が「デメリットの方が大きい」と回答しました。一方で、「メリットの方が大きい」と回答した企業は1.2%にとどまっています。
円安にはメリットとデメリットの両方があるはずなのに、「デメリットの方が大きい」と回答する企業の方が多いのはなぜでしょうか。
これは、企業による価格転嫁が思うように進んでいない状況があるためと考えられます。本来であればコストが増えた分を価格転嫁、つまり商品やサービスの値上げによって吸収すれば、企業の財務状況への影響を抑えられるはずです。
ところが、購買意欲の低下を恐れて多くの企業が値上げに踏み切れず、ほかの経費を削減するなどの「企業努力」によって価格を維持したり、値上げ幅を本来必要な水準よりも小さく抑えたりしています。その結果、仕入れコストの増大が企業を圧迫しているのです。
円安が家計の支出を圧迫させている
それでは、このまま円安が進んだとしても、中小企業の「努力」が続けば、家計は影響を受けずに済むのでしょうか?
足元の消費者物価指数の推移をみると、すでに円安が家計をも圧迫し始めている現状が伺えます。消費者物価指数の上昇は生活の支出が増えていることを意味し、物価上昇が家計を圧迫している可能性が高い状態といえます。
【図表1】
出典:総務省統計局 消費者物価指数 全国2022年(令和4年)3月分
図表1の通り、消費者物価指数は3月以降に上昇幅が広がり、家計への圧迫が強まっているといえます。円安によるコスト増加を吸収する「企業努力」が限界に近づき、身近な商品やサービスへの価格転嫁が進みつつあることが一因と考えられます。仮にこのまま円安が続けば、企業による価格転嫁がいっそう進み、普段の買い物で円安の影響を実感する機会が増えていく可能性も予想されます。
円安で家計を圧迫しないように早急な生活費の見直しを
ここまで、円安が生活に与える影響について紹介しました。
円安が値段に与える影響には、現時点で商品やサービスごとにバラつきがあり、普段の生活で円安の影響をあまり感じないという人もいるかもしれません。ただ、このまま円安が続けばコスト増加分の価格転嫁が進み、暮らしに深刻な影響を与えるケースも考えられます。
今の収入や貯蓄には、物価上昇に耐えられるだけの余裕があるでしょうか。現在の生活状況を見つめ直し、見直しができる部分については、できるだけ早期に対策を取ることが望ましいでしょう。
出典
日本銀行 公表資料・広報活動より 円高、円安とは何ですか?
総務省統計局 消費者物価指数 全国2022年(令和4年)3月分
日本商工会議所 商工会議所LOBO(早期景気観測)2022年4月調査結果
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー
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