「親の老後資金が不安!」40~50代の子どもが知っておくべき「公的制度と備え」について
ファイナンシャルフィールド / 2022年5月25日 11時0分
親が老境に差しかかると、介護などのサポートのほかにも金銭面で不安を覚えることも珍しくありません。親の老後資金が足りない場合には、子どもが支援する可能性が高くなるため、事前に備えておく必要があります。また、老後資金が足りなければ、公的制度を利用することも検討しましょう。 本記事では、利用可能な公的制度と、資金不足にならないための備えについて解説します。
65歳以上の貯蓄金額の平均
厚生労働省の国民生活基礎調査(令和元年)によると、1000万円以上の貯蓄がある高齢者世帯は、全体の33.8%でした。一方、貯蓄がない、もしくは100万円未満であると答えた人の割合は、全体の20.9%に上ります。高齢者世帯の5分の1は、老後の資金が不足しているといえるでしょう。
老後の生活資金が厳しい場合の公的制度
老後の生活資金が不足する場合は、公的制度を利用することも検討しましょう。高齢者が受けられる公的制度は、主に生活保護制度と高額医療・高額介護合算制度の2つあります。
生活保護制度
生活保護制度は、生活するお金に困っている人に対して支援を行うことで、「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」(厚生労働省)ための国の制度です。生活保護を受けるためには、貯蓄がある人や不動産や土地を持っている人は、まず売却して生活費を賄わなければいけません。ほかにも、扶養義務者になる子どもからの援助が受けられる場合は、受給の対象外になります。
生活保護制度の扶助内容は、困っている内容に応じて、生活費が不足する場合の生活扶助や、賃料の支払いの困った場合の住宅扶助などがあります。制度を利用するためには一定の基準を満たす必要があります。利用を検討している方は、住んでいる地域の福祉事務所で一度、相談してみましょう。
ただし、生活保護を受けていると入居できる老人ホームが限られてくるほか、年金を受給している場合は生活保護が減額されるなどの制約があるため注意しましょう。
高額医療・高額介護合算制度
医療費や介護費が負担になっている場合は、高額医療・高額介護合算制度が利用できるかもしれません。これまでは医療費の自己負担上限枠と介護費の自己負担上限枠がそれぞれ別に設定されていたのに対し、合算することで利用者の負担を軽くできるのが特徴です。
医療保険者と介護保険者の双方が、自己負担額の比率に応じて費用を負担します。介護保険者は市町村にあたるため、自治体の保険年金課保険係に相談してみましょう。
親が老後の資金不足にならないための対策
老後資金が尽きないよう、事前に備えて欲しいと考える人も多いでしょう。親の老後資金が不安な場合、老後を迎える前に行える対策例を紹介します。
任意後見制度を利用
今は親が元気だが将来に不安があるという方は、「任意後見制度」の利用を検討しましょう。任意後見制度とは、現在は判断能力に問題ないものの、将来的に認知症や障害など自己判断能力が低下したときに備えて、代わりに契約行為などを行う人を選任しておく制度です。親が健康なうちに任意後見人指名することで、親が認知症になったときに銀行管理や不動産売却、遺産分割などを行えるようになります。
親が任意後見人を選任することで、事前に親の財産を把握でき、老後、判断能力の低下した親が財産を使い込まないよう管理できます。また、資金が足りないときは資産の売却を行うことができます。
介護施設への入所手続きや病院の入院手続き、介護保険の契約などは、本人または任意後見人である必要があります。事前に任意後見人を選任しておくと安心です。
資産運用をすすめる
年老いた親が生活資金不足に陥る前に、少しでも早く資金の用意を進めておきましょう。貯蓄だけでなく、iDeCo(イデコ)や投資信託など、資産運用の話をするのも有効です。始める年齢が遅ければ遅いほど、リスクの小さい商品を選ぶことになるため、なるべく早く資産運用を始めましょう。
老後資金について話し合って備えよう
40代、50代の方にとっては、親が老後に直面する問題が深刻化してきます。中でも生活資金は、子どもである自身の生活にも関わってくるため、事前の対策や公的制度を把握しておくことが重要です。一度親と話し合い、対策を練っておきましょう。
出典
厚生労働省 国民生活基礎調査(令和元年)の結果から グラフでみる世帯の状況
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 高額医療・高額介護合算療養費制度について
厚生労働省 任意後見制度とは(手続の流れ、費用)
執筆者:丸山希
2級ファイナンシャルプランニング技能士
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