「確定拠出年金」はデメリットしかない? 「企業型DC」の上手な活用方法
ファイナンシャルフィールド / 2022年5月25日 12時0分
確定拠出年金は老後の暮らしを支える年金制度の一つですが、将来の受取額が決まっている確定給付年金に比べて「リスクが高く、デメリットばかり」というイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか? この記事では、確定拠出年金のメリットとデメリット、そして企業型DCの上手な活用方法について解説します。
確定拠出年金とは?
まずは年金制度の基本を確認しましょう。日本の年金制度は3階建ての構図になっています。1階部分は日本に住む20歳~60歳の国民皆が加入する国民年金(基礎年金)、2階部分は会社などに勤務する人が加入する厚生年金、3階部分は企業年金などの私的年金となっています。
企業年金は、将来受け取る給付額が決まっている確定給付型の年金(確定給付企業年金と厚生年金基金)と、毎月の拠出額が決まっており運用結果によって将来受け取る給付額が変動する確定拠出年金があります。
さらに、この確定拠出年金には、企業型確定拠出年金(企業型DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)の2種類があります。
デメリット
確定拠出年金はデメリットが大きいというイメージを持つ人も多いようです。実際にどのようなデメリットがあるか整理してみましょう。
・60歳まで基本的に現金化できない
・元本が保証されていない商品を選択した場合、運用リスク(元本割れのリスク)がある
・企業型DCは、提示された運用商品に自分が運用したい商品が含まれていない場合もある
・選択制確定拠出年金の場合、確定拠出年金を選ぶと、厚生年金や健康保険、雇用保険の給付額が減る
将来受け取る金額が決まっている確定給付年金と比較すると、商品によっては元本割れリスクがあるというデメリットが注目されがちです。また、足元で普及が進んでいるNISA制度と比較したとき、60歳まで現金化できないという制約も目を引きます。
確定拠出年金のメリット
それでは、確定拠出年金は本当にデメリットしかないのでしょうか? 次に、確定拠出年金のメリットを紹介します。
・拠出時、運用時、給付時すべてで税制の優遇が受けられる
・転職・退職の際、それまで積み立てた年金資産を持ち運べる(ポータビリティ)
・公的年金(国民年金・厚生年金)の受給開始年齢が原則65歳からなのに対し、確定拠出年金は60歳から受け取ることが可能(通算加入者等期間が10年以上必要)
・選択制確定拠出年金(従業員が給与の一部をそのまま給与として受け取るか確定拠出年金として拠出し運用するかを選択できる制度)の場合、社会保険料の自己負担額を軽減できる
このように確定拠出年金は、NISA制度に比べて税制優遇を受けられるタイミングが多いことなどがメリットとして挙げられます。さらに、次に紹介するような企業型DCの上手な活用方法によって、「元本割れのリスク」というデメリットをメリットに変えることもできます。
企業型DCの実態
確定拠出年金の1つである企業型DCは、事業主が掛金を拠出し、事業主と契約した運営管理機関が選定した運用商品の中から自分で商品を選び運用します。
企業年金連合会の2020年度決算における「確定拠出年金実態調査結果」によると、運用商品の本数の平均は20.3本で、そのうち元本確保型商品は平均4.5本選定されています。
残りの商品は元本の保証がない投資信託等です。一般的にこれらは元本割れのリスクを取る分、元本確保型商品よりも高い利回りが期待できます。
企業型DCの上手な活用方法
老後の豊かな生活を実現するため、具体的に企業型DCをどのように活用したらよいのでしょうか。
拠出時および運用時
まず、いつから運用を始めるべきかについて考えましょう。資産運用は「長期」「積立」が基本です。毎月コツコツと積み立て続けることで長期的に見ればリスクが減り、利益を実現できる可能性が高まります。
長期投資のメリットは、運用を始めるのが早ければ早いほどいっそう大きくなります。現役時代のできるだけ早い段階で運用を始めるのがよいでしょう。一方で、元本確保型商品は、値動きが比較的安定的である反面、長期積立投資の効果が薄れてしまう傾向にあります。
定年までまだ時間がある50~55歳くらいまでの間は、運用リスクがある一方で高い利回りが期待できる投資信託等で運用し、定年が近づきリスクを減らしたい時期が来たら、元本確保型の商品へ入れ替えるというのもひとつの手です。
受取時
確定拠出年金を年金で受け取る場合、公的年金等控除の対象となります。所得の算出には国民年金や厚生年金などの受取額も合算して計算するため、それらの受給額が多いと税負担が増します。
こうした収入が多く見込まれる場合は、65歳より前に確定拠出年金の受け取りを開始することで、税金や社会保険料の負担を軽くすることができます。
確定拠出年金を一時金で受け取る場合、企業から受け取る退職一時金と同じ退職所得として計算され、退職所得控除の対象になります。同じ年に、退職一時金と確定拠出年金の一時金をまとめて受け取るよりも、年度をずらして受け取る方が総合的な税負担は軽くなる可能性があります。
まとめ
このように確定拠出年金はデメリットばかりの制度ではなく、元本割れリスクのある商品という選択肢を長期投資を通じて上手に活用したり、受け取り方を工夫したりすることで、老後の生活が豊かになる可能性を高めることができる制度です。
老後に備えるには、利用できる制度を最大限に活用することが大切です。勤めている会社の企業年金制度を改めて確認し、老後資金について考えてみてください。
出典
人事院 民間企業の勤務条件制度等調査(令和2年調査結果)
企業年金連合会 2020(令和2)年度決算 確定拠出年金実態調査結果
執筆者:勝川みゆき
ファイナンシャルプランナー2級・AFP
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