離婚を考えている夫婦の年金問題。専業主婦の妻の取り分はどうなるの?
ファイナンシャルフィールド / 2022年5月27日 10時0分
夫婦のカタチも時代とともに変わってきました。本来であれば、生涯のパートナーでありたい夫婦ですが、事情によっては、これまでの生活を解消して新しい人生を歩むことも選択肢です。 ただし、専業主婦だった妻が「離婚」を考える際に悩むのが、離婚後の経済的なダメージかもしれません。会社員として勤め上げた夫の悠悠自適な老後生活に対して、家庭を支えてきた妻はわずかな年金で生活困窮するのは納得できない……そんな専業主婦が請求することのできる「年金分割制度」について解説します。
夫の給与から差し引かれた年金保険料は、夫婦2人で納付したものである
さまざまな調査や公表されるデータでは、「モデル家族」というものを前提にしていることが多くあります。会社員の夫、専業主婦の妻、子ども2人、離婚しない、という設定の家族のことで、目安を知る上では有効かもしれませんが、少々違和感を覚える人も多いのではないでしょうか。社会的にも、働き方や家族構成にも多様性を尊重する動きが見られます。また、離婚もめずらしくありません。
ただし以前は、働きたくてもやむを得ず家庭を支えてきた妻が離婚後に生活苦となったり、離婚をしたくても経済的事情で離婚に踏み切れないというケースが多くありました。こうした背景もあり、会社員の夫も専業主婦の妻も、結婚している期間に支払った保険料は夫婦2人で納めたものとして、将来受け取る老齢厚生年金を分割できる「年金分割制度」が2007年から導入されています(※1)。
ここで注意すべきなのは、この制度は、夫が受け取る年金額の半分を妻が受け取ることができる、というものではないことです。ねんきん定期便などに記載される年金額から誤解して先走らないよう、くれぐれも慎重な決断をしたいものです。それでは、以下でくわしく見ていきましょう。
「3号分割」と「合意分割」の2種類の分割制度
年金分割制度には、「3号分割」と「合意分割」の2種類があります。
(1)「3号分割」とは
専業主婦である会社員の妻は、国民年金の被保険者のうち「第3号被保険者」に該当します。「3号分割制度」(※2)は、国民年金の第3号被保険者からの請求により、2008年(平成20年)4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者期間における夫の保険料納付記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ分割することができる制度です。
3号分割は、原則として、離婚した後に請求することができ、当事者間の合意の必要はありません。なお、婚姻期間中に妻自身が厚生年金への加入期間がある場合には、2人分を合算した上で2分の1に分割します。
(2)「合意分割」とは
一方、「合意分割制度」は、結婚している期間に支払った保険料は夫婦2人で納めたものとして、保険料納付記録から、話し合いによって分割割合を決めます(※3)。とは言え、自由に決められるわけではなく、法律で定める範囲内になるように決める必要があります。話し合いで合意できなかった場合には、家庭裁判所が調停や審判等により按分割合を定めます。
会社員の場合は、1階部分の国民年金の上乗せとして、2階部分の厚生年金があります。年金分割は、この厚生年金(標準報酬)を対象にした制度です。お勤め先の企業によっては、さらに3階部分の企業年金が見込める場合もありますが、こちらは分割の対象とはなりません。
年金分割までの流れ
年金分割に必要な「情報通知書」は、2人一緒でも1人でも請求することができます。50歳以上で老齢年金の受給資格期間を満たしている場合などには、年金分割時の年金見込み額を試算することが可能です。「年金分割のための情報通知書」をもとに話し合いで合意ができれば、その内容について明らかにすることのできる書類とともに年金分割の請求手続きを行います。
また、合意分割請求で、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれる場合には、同時に3号分割の請求があったと見なされます。一方、3号分割のみの請求の場合は、合意の必要はないため、単独で請求することができます。
いずれにしても、年金は離婚により自動的に分割されるものではなく、また、情報通知書の請求のみ行っても年金は分割されません。あらためて、年金分割の請求をする必要があります。情報通知書の請求は離婚の前でも後でもできますが、分割の請求は原則として、離婚の後に行うことになります。なお、離婚等をした日の翌日から2年を過ぎると請求することができなくなりますので注意が必要です。
まとめ
離婚に際して、「話したくない」「関わりたくない」「面倒くさい」と思うかもしれません。また、年金分割については、対象となる年金額があくまでも婚姻生活をしている期間であるため、「思ったほどの金額ではなかった」という声も耳にします。
それぞれの事情はあるかと思いますが、公的年金制度は、生涯にわたって受け取ることのできる収入です。必要であれば、弁護士など専門家の協力を得ることも選択肢ではないでしょうか。
出典
(※1)日本年金機構 離婚時の年金分割について
(※2)日本年金機構 「3号分割制度」
(※3)日本年金機構 「合意分割制度」
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士
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