「相続開始3年前」の贈与の取り扱いは要注意!? 「5つのポイント」をFPが解説!【後編】
ファイナンシャルフィールド / 2022年6月18日 12時0分
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前回「前編」では、相続開始前3年以内の贈与財産における相続税の課税価格への加算について、その基本的な考え方を解説しました。 「後編」では、それ以外のポイントについて解説したいと思います。
加算対象者の範囲
前回説明したとおり、相続税の課税価格への加算の対象となるのは、相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受け、かつ、その被相続人から相続または遺贈により財産を取得した人に限られます。
相続や遺贈で財産を取得しない人に対して贈与された財産は、贈与税が課税されるだけで、相続税が課税されることはありません。ただし注意すべきは、「みなし相続財産」を取得した人も、相続や遺贈によって財産を取得した人に含まれるということです。
みなし相続財産は生命保険金をはじめとして、主に次のような種類があります。
(1)生命保険金
(2)死亡退職金
(3)生命保険契約に関する権利
(4)定期金給付契約に関する権利
(5)保証期間付定期金給付契約に関する権利
(6)契約に基づかない定期金に関する権利
それでは、具体的にどのような人が加算対象になるのか見ていきましょう。
1. 相続開始前3年以内の贈与財産が相続税の加算対象となる人
(1)相続や遺贈により財産を取得した人
(2)遺言により財産を取得した孫、子の配偶者、内縁の妻など(法定相続人であるか否かは問わない)
(3)みなし相続財産である生命保険金などの受取人になった人(法定相続人であるか否かは問わない)
2. 相続開始前3年以内の贈与財産が相続税の加算対象とならない人
(1)法定相続人とならない孫や子の配偶者、内縁の妻などで、遺贈や代襲相続、みなし相続財産の受取人にならない人
上記に該当する人は、相続などによって財産を取得しないため、加算の適用対象外となります。また、孫や子の配偶者、内縁の妻などに「かけこみ贈与」をする場合は、遺贈や代襲相続、みなし相続など、いかなる形であっても相続に関与させなければ、加算の対象者にはなりません。
(2)法定相続人であっても相続放棄をした人や、遺産分割で財産を取得しない人
ただし、相続放棄をしても、みなし相続財産の受取人になった場合は加算対象になってしまいます。
加算対象の財産の評価額
生前贈与をする財産は現金だけではなく、不動産や有価証券、貴金属、宝石といったケースもあります。
その場合、時間とともに価値が変わるものもありますが、どのような財産であっても相続開始前3年以内の贈与により相続税の加算の対象となった財産は、贈与された時点の価格で加算されます。
相続時点では価値が大幅に下がっていた場合でも、贈与された当時の価格で評価されますので、不動産や有価証券、貴金属、宝石など価値が変わるもので贈与を受けた場合は注意が必要です。
加算の対象とならない財産の範囲
次のような非課税枠を使用した贈与を受けた場合は、相続開始前3年以内に該当する贈与であっても、相続税に加算されません。
1. 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
2. 直系尊属からの住宅取得等資金の贈与
3. 直系尊属からの教育資金または結婚・子育て資金の一括贈与
それぞれの詳細については、記事文末の出典URLをご参照ください。
具体的課税の方法
「前編」で説明したように、暦年贈与では、年間の贈与税基礎控除額110万円を超える場合に贈与税が課税されます。
相続税の加算対象の人が既に贈与税を支払っている場合には、いったん相続税を計算し、そこから支払った贈与税を控除します。贈与税が計算された相続税より高い場合には、相続税は発生しませんが、支払った贈与税は還付されません。
まとめ
ここまで説明してきたように、相続開始前3年以内の贈与財産についての相続税の課税価格への加算は、かけこみ贈与を防止するために設けられたものです。
相続や遺贈などにより財産を取得した人は加算対象者になりますので、孫、子の配偶者、内縁の妻などを加算対象者にしたくないのであれば、相続などに一切関与させないようにする必要があります。
いずれにしても、制度を十分に理解した上で、相続対策について考える必要があるということです。
出典
国税庁No.4161贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
国税庁No.4452夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
国税庁No.4508直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
国税庁No.4510直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
国税庁No.4511直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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